昨日、今年2回目の就学相談会がありました。
その中で、参加者の話を聞きながら、
ふと「ワニなつ」5月号のKさんの手記を思い出しました。
タイトルは、『新一年生・大暴れ編』
その会報を配り、Yくんの入学式の様子を紹介しました。
≪体育館に保護者や来賓が座り、式の始まりを待っているところに、
「ママのところにいくー」と泣きながらYくんが戻ってくる。
そこでどんなになだめても、教室に戻ろうとはせず、
舞台にかけあがったり、ピアノを鳴らしたり、
好き放題に探検しまわる。≫
私たちは、自分が親でも「たまらないよなーー」と思います。
恥ずかしいよなーと思います。
みんなが緊張して、粛々として行われるはずの入学式で、
ひとり運動会をしているのがわが子だというのは、
本当に顔から火が出る思いでしょう。
≪さらに、入学式が終わって一息ついたところに、
2年生の新入生歓迎の劇「おむすびころりん」が始まる。
Yくんは何を思ったか、舞台にかけあがり、
おむすびを奪って舞台上を走り回る。
両親は文字通り、夫婦で「頭を抱える」。≫
劇が「おむすびころりん」だけに、
「穴があったら入りたい」という余裕はなかっただろう。
でも、こうして子どもに鍛えられていけば、
いつかは「もう! おむすびと一緒に
息子も穴にころりんしてしまえばいいのに…」と
思えるようになるかもしれない(・。・)
私は、その話をしながら、
そこで夫婦で頭を抱えながらも動かないでいることが、
どれほど大事なことかを改めて感じていました。
両親が動かないのは、無責任だからではありません。
両親は、今までに、家の中や病院やデパートで…、
療育センターで、幼稚園で、
何百回、何千回、動き回る息子の手をつかんだことでしょう。
慣れている親が子どもを取り押さえてしまうのは
簡単なことかもしれません。
「でも、ここは、親が子どもの手をつかんでじっとさせる場面ではない。
なぜなら、ここは小学校で、子どもたちはみんな、
親とは離れて、みんなと一緒に生活する場であり、
子どもたちは先生の言うことを聞いて、
集団生活や友達との関係を学んでいくのだから。」
もちろん、そのときの両親は、
そんなふうに落ち着いて達観している場合ではなかったでしょう。
でも入学前、たとえば、
「こんな落ち着きのない子どもが、
本当に普通学級でやっていけるんだろうか。
慣れるまでは親がつきそう方がいいんじゃないか。」
という心配を口にしても、
会の先輩たちに、
「親がついたら子どものためにならないよ」と言われ続けてきました。
「初めから母親がそばについていたら、
子どもは学校とは母親とセットで通う場所と、
間違ってしまうかもしれない。
いつも母親に注意されていたら、先生に注意されるチャンスさえなくなる。
そのうち、担任の視野から、この子が消え、
この子の視野からも先生が消えてしまう。
せっかく普通学級に入ったのに、
いつのまに普通学級の教室の中に、
「親子二人だけの教室」ができてしまううんじゃないの。」
言われてみれば、そうかもしれない。
初めての場所、初めての入学式で落ち着かないことも含めて、
今のこの子だと。
そこから、この子が自分でみて、
自分で経験して、自分で学校を学んでいくことが大事なのだと、
自分に言い聞かせるように、確かめてきたのでしょう。
そうは思っていても、大きなおむすびを抱えながら走りまわる息子を、
楽しむ余裕はないでしょう。
夫婦で頭を抱えて、「ここで親が出ていっちゃいけないんだ」
「ここは先生に任せなくちゃいけない」。
「これでいいんだ」
「ここで出ていったら、おにぎりを抱えて走る息子以上に、
≪出る幕≫を間違える親になってしまう」
そうして、じっと、嵐が通り過ぎるのを待っている両親に、
私は本当に頭が下がります。
自分たちのためでなく、子どものために、
じっと座り続ける両親に頭が下がります。
Y君は本当に幸せだと思います。
こんなにも両親に愛され、信頼されているのだから。
そしてまた、親が動かないことは、
学校の先生を信頼していることのもっとも誠実な表現だとも思います。
これが私たちの大切な息子です。
6年間、お世話になります。よろしくお願いしますと。
はじめは大変だと思うけれど、
先生たちはきっとこの子をここで受けとめてくれる、
そういう信頼がなければ、動かないでいることはできません。
そしてまた、一緒に入学する6才の子どもたちへの信頼と、
「こんな息子」も「歓迎」してくれる上級生への信頼を、
誠実に表現することにもなっています。
新入生にとっても、みんな初めての学校です。
そこで、おむすびをもって走り回るハプニングー!を見て、
子どもたちは、学校っていろんな子がいるんだなーと思うでしょう。
2年生や6年生たちは、ちびっ子だから仕方ないなーと、
上級生の余裕で笑って許してくれるでしょう。
そういう、子どもたちへの信頼がなければ、
保護者席でじっと座り続けていることはできません。
私はそう思います。
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やすハハ
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