久々にnaoちゃんママの原稿です( ^^)V
12月の定例会で「5人のアンパンマン」の話を聞いて以来、ぜひ書いてほしいとお願いしていました。
Naoちゃんママは、「こんなの書いても面白いかな~」と気が進まないようでしたが…。
読んだ方、Naoちゃんママにコメントをどうぞ(*゚□゚*)
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5人のアンパンマン
「障害児に算数を!」
「算数の計算は生活を豊かにする!」
新聞記事のそんな歌い文句に惹かれ、『障害児のための算数教室』に参加してきました。
さかのぼること数日前、やっちゃんの妹amiちゃんが、我が家に遊びに来て言いました。
「最近やっちゃん計算するの早いよ~! だって、お父さんが土日に教えてるから。1日2時間くらい勉強してるんだよ~!」
そして簡単な計算問題をnaoに出し答えを間違えると「naoちゃんヤバイよ~!!」
…私はテストの点数が0点でも何とも思わないし、勉強ができなくても全然平気です。普段の私ならamiちゃんの言葉を聞き流していました。
けれども、隣県に住む主人の母親から「特殊学級や養護学校に行けば、naoに合わせた勉強を教えてくれる。
養護学校に行かないのなら、その切り離した分は家で教えなければならない」と言われていた私は平常心を失っていました。
やっちゃんが家で勉強していることはやっちゃんママから聞いて知っていたし、これまで焦る気持ちは全くありませんでした。「naoちゃんヤバイよ~!」 今思えば、このひと言でスイッチが入ってしまったようです。
そして絶妙のタイミングで飛び込んできた新聞記事。導かれるまま、私は体験教室に足を運びました。
その教室は障害がある子の親のための勉強会で、障害児教育のスペシャリストを講師にむかえ、学んだことを家に帰って子どもに実践する…というものでした。
実際に、家庭で子ども相手に実践しているビデオが流れました。母親が男の子と向かい合って座り、2人の間に小さな布を敷きました。そこを『ラーメン屋』と見立てて勉強タイムスタートです。
男の子に出された課題は、お客さん1人に対し1杯ずつラーメンを出す…というものでした。
「いらっしゃいませ!」
お店のオープンと同時に入ってきたお客さんは総勢5人。その5人全員がなんと!アンパンマンでした。
手のひらサイズのアンパンマンが等間隔に5人並び、次々とラーメンを注文します。男の子は食品サンプルのような小さなラーメンを袋から1つ1つ出します。けれど、何度やってもアンパンマンと同じ数のラーメンを出せません。6個、7個と多めに出してしまうのです。余計に出してしまった分は「いらないね」と母親が片付けます。
ビデオを見たあと、講師が問題点を指摘しました。「余分に出した分をお母さんが片付けたのは間違いです。この場合は正解するまでやらなくてはいけません」
さらに問いかけます。
「どうして彼は同じ数のラーメンを出せなかったと思いますか?」
「対象物(5人のアンパンマン)を、
よく見ていなかったからだと思います」
母親が答えました。
…違和感がありました。それは教室が始まってすぐに感じていました。
私はどうしてここにいるのだろう? naoが普通学級にいる意味を忘れたの? 私の願いはただひとつ『みんなといっしょ』だったはず。
障害は治すものでも克服するものでもない。大事なのは、出来ないままの自分でもみんなの中にいられること。naoはもう十分頑張ってる。朝7時すぎには家を出て夕方遅くまで、休むことなく毎日毎日、学校に部活に本当によく頑張ってる。これ以上なにを求めるの?
…真剣なまなざしの母親たちの中でいたたまれなくなった私は、逃げるように教室をあとにしました。
naoは中学生になって「みんな勉強が得意なのに、なんでウチは苦手なんだろう」と言ったことがあります。
私は即座に答えました。「え~っ!みんな勉強なんか得意じゃないよ~。お母さんも子どものころ苦手だったもん。勉強なんか出来なくてもいいじゃん。お母さんは、そのまんまのnaoが大好きなんだよ!」
勉強で人の価値は決まらない。勉強ができないことは不幸じゃないし悪いことでもない。ありのままのnaoが好き。大好き! 母親の私だからこそ伝えられる言葉があります。
naoは計算はできませんが、1人でコンビニに行きます。お金が足りなくて、でもどうしても家族分のお菓子を買いたくて、根負けしたバイトのお兄さんが不足分を払ってくれたこともあります。自動販売機で見知らぬ人にジュースを買ってもらったことも何度かあります。
それは人から見れば「ちゃんと買い物できていない」のかもしれません。コンビニで「お金が足りないから買えないよ」自動販売機で「お金を持っていないなら買えないよ」と言われればそれで終わりでした。
でも、naoには人を巻き込む力があります。例えば、登下校中に知り合った数えきれない人たち…naoの顔の広さは、nao自身の力によるものです。そしてありがたいことに、naoのまわりの人はみんなあたたかい。学校、部活、学校の行き帰り、習い事、そしてコンビニでも。naoは人の優しさの中で生きているのだと思います。
先日、初めて行った病院でnaoの様子を見た医者に言われました。
「算数の計算くらいできた方がいいですよ。コツさえつかめば簡単な計算くらいできると思います。これだけお喋りできるんだから、もったいない! 学校を休んでも療育に通われた方がいいと思います」
…久しぶりに本当に久しぶりに療育のお誘いを受けました。あの日、わざわざ算数教室に出向いたことを思い出して、思わず苦笑いしてしまいました。もちろん速攻断りましたけど。体験教室に行ったことは決して無駄ではなかったと思います。時には今回のように揺れ動くこともあるけれど、改めてなにが大事なのか冷静に考えることができました。
「算数の計算ができなくてもnaoの生活は豊かです!」