ようこそ就学相談会へ(ホグワーツ編)
昨日、届いた会報に、9月の相談会の感想がありました。
一年前、相談会に参加されたときは「ピンとこなかった」、「わが子は知的障がいだから無理だろうという気持ちは変わらなかった」そうです。
でも今年は、「やっぱり、わが子も学区の通常級に通わせたい」と強く思ったそうです。
一年前も今年も、私は同じようなことば、同じような話をしていると思うのですが…。
◇
ここで先日のOさんのコメントを思い出します。
Oさん、「言葉の掟」はここでも働きます。
「伝わる」か「伝わらない」は、「ことば」の種類や用法だけではないようです。
「ことば」が「うまれる」ときや、「捕まえる」とき、「料理する」ときの「鮮度」があるように、
その「ことば」を、「きく」あるいは「よむ」ときにも、受け取る側の「わかりたい鮮度」に左右されるのだと思います。
どんなにことばの魔法の修業をしても、高度な魔法を駆使しても、魔法の効かない「時間帯」や、心に張られた「結界」を破れないことがあります。
(どうして「魔法」の話になるのかって?
聞きたいですか?
たんに、昔読んだル・グインの本を読み返しているからだと思います。)
…これも、ことばの魔法の一つですよ(;’∀’)
◇
さて。感想の話に戻ります。
その方は、一年前に相談会に参加したときは、「ぴんと来ず」、今年の春からまじめに教育委員会に通い、支援級も支援学校も見学に行きました。
そこまでは、ごくふつうの(?)、知的障がいをもつ子どものお母さんだったのだとおもいます。特別支援への道は、高速道路のようにきれいにスムーズにできあがっています。道は、そのまま特別な道につながっていくはずでした。
そのとき、うまれた魔法のことばは、子どものことばでした。
「オレ、ランドセルはくろがいいな」
その一言で、世界は変わります。
そのことばが、母親の「知的障がいなんだから、みんなと一緒にべんきょうするなんて無理」という常識の結界にヒビを入れました。
そして、今回、相談会に参加して、「やっぱり、わが子も学区の通常級に通わせたい」と強く思ったそうです。
「オレ、ランドセルはくろがいいな」という一言には、ことばそのものの力があります。それは、来年一年生になる子、誰もが使えることばの力です。それは、他人にも聞き取ることができます。
でも、そこにもうひとつ、たぶん親にしか聞き取れないことばの力があります。
それは、子どもの隣りで見守ってきた母親にだけ聴こえる、「その子の六年分の人生の豊かさ」を表わします。
そのことばは、一年前にはありませんでした。
だから、一年前には、「みんなと一緒の学校」がぴんとこなかったのです。
そのことばが生まれるまでのこの一年の間に、たくわえられたもの、はぐくまれたもの、こどものことばといのちの内に満ちてきたもの、その鼓動を子どものとなりで感じ続けてきたのが、母親という存在なのだと思います。
「オレ、ランドセルはくろがいいな」ということばは、単語の並びではありません。
「おれは、おれのじんせいを、いく」という、この世界への信頼のことばだと、わたしには聞こえます。
それに比べたら、わたしが相談会で話したことばといえば、
「勉強ができなくても大丈夫」ということにすぎません。
また、「お母さんは学校の勉強は好きでしたか? 全部理解できましたか?」
という質問に、「学校で勉強するのはあまり好きでなかったことや苦手な教科が自分にもあったことを思いだしました」といいます。
ありきたりの質問とありふれた答えにすぎません。
わたしのことばには、なんの魔法もまじないもかかっていません。
もちろん、相談会で杖はつかっていません。
この一年のあいだに、それらしいことばがあるとすれば、「オレ、ランドセルはくろがいいな」だけです。
だから、彼はホグワーツ魔法学校に行く必要もないし、特別支援学校に行く必要もありません。
いまの保育園の仲間といっしょに、地域の普通学級に黒いランドセルを背負って通えばいいのです。
(^。^)y-.。o○
PS: そのお母さんは、就学時健康診断も受けないって決めたそうです。
一年前の相談会の感想と、今年の覚悟の距離は何でしょうね?
ほんとうに、子どものまほうのちからとしか思えません。
コメント一覧
![](https://blogimg.goo.ne.jp/image/upload/f_auto,q_auto,t_profile_square_m/v1/noimage/user_photo/gb25_noimage.png)
ono
最新の画像もっと見る
最近の「ようこそ就園・就学相談会へ」カテゴリーもっと見る
最近の記事
カテゴリー
- ようこそ就園・就学相談会へ(494)
- 就学相談・いろはカルタ(60)
- 手をかすように知恵をかすこと(29)
- 0点でも高校へ(393)
- 手をかりるように知恵をかりること(60)
- 8才の子ども(161)
- 普通学級の介助の専門性(54)
- 医療的ケアと普通学級(90)
- ホームN通信(103)
- 石川憲彦(36)
- 特別支援教育からの転校・転籍(48)
- 分けられること(67)
- ふつう学級の良さは学校を終えてからの方がよくわかる(14)
- 膨大な量の観察学習(32)
- ≪通級≫を考えるために(15)
- 誰かのまなざしを通して人をみること(134)
- この子がさびしくないように(86)
- こだわりの溶ける時間(58)
- 『みつこさんの右手』と三つの守り(21)
- やっちゃんがいく&Naoちゃん+なっち(50)
- 感情の流れをともに生きる(15)
- 自分を支える自分(15)
- こどものことば・こどものこえ・こどものうちゅう(19)
- 受けとめられ体験について(29)
- 関係の自立(28)
- 星になったhide(25)
- トム・キッドウッド(8)
- Halの冒険(56)
- 金曜日は「ものがたり」♪(15)
- 定員内入学拒否という差別(97)
- Niiといっしょ(23)
- フルインクル(45)
- 無条件の肯定的態度と相互性・応答性のある暮らし(26)
- ワニペディア(14)
- 新しい能力(28)
- みっけ(6)
- ワニなつ(351)
- 本のノート(59)
バックナンバー
人気記事