『居場所を探して 累犯障害者たち』
【つらい記憶、が高村正吉(60)=仮名= にはある。
…両親と弟、妹の5人で暮らした。
小学校時代は特殊学級、今で言う特別支援学級に在籍。…
よくいじめられた。
父親が在日朝鮮人だったことで「チョーセン」「バカ」とののしられ、石をぶつけられた。
頭から血を流して帰ると、母親は黙ってヨモギで止血をしてくれた。
母の手は震えていた。
いじめられるのも、母が悲しむ姿を見るのも、同じぐらいみじめだった。
高村は20代半ばから、母の実家で暮らした。
父を早くに亡くしてからは母と二人暮らし。
実家に戻っても働き口は見つからず、母のわずかな年金が生活の糧だった。
金が底をつき、後先考えずに、近所の家に盗みに入ったこともある。
長崎刑務所で11度目の服役中だったある日。…刑務官が近付いてきて言った。
「おふくろさんが亡くなった」
…度々面会にやって来ては、着替えやお菓子を差し入れてくれた母。
わずかな年金から搾り出したのだろう、刑務所に時々、一万円札が2枚ずつ届いた。
たった一人の「味方」を失った気がして、高村は独房で、布団をかぶって涙を流した。
悲しげな母の面影ばかりが浮かんで、また泣いた。
「罰が当たった」と自分を責めた。
(※ そのころ、《2011年》「長崎県地域生活定着支援センターの職員が面会に訪れる」
…11回の服役、25年を塀の中で過ごし、…60歳になって刑務所内で行った知能テストの結果はIQ28。
服役中に「療育手帳」を初めて取得。
障害の程度は「A2」。4段階中2番目に重度だった。
「高村さん、刑務所を出たら福祉の支援を受けてやり直しませんか?」
「福祉って何ですか? 規則があるんですか?」
(『居場所を探して 累犯障害者たち』 長崎新聞社・「累犯障害者取材班」)
◇
この本は、タイトル通り、「累犯障害者」をめぐるここ数年の司法と福祉の劇的といえる変化が書かれています。
山本譲二さんや浜井浩一さんの本を読んではいましたが、2009年に累犯障害者を社会的に支える仕組みや制度ができたこと、全国の刑務所に社会福祉士が配置されたことなど、知らないことばかりでした。
面白すぎて、というか、いろんなことが頭に浮かびすぎて、読み進めるのがもったいないと思いました。
この本に、教育のことは書かれていません。
でも、私には、この本もまた、みんなが当たり前に普通学級の中で、必要な配慮を得ながら、一緒に育ちあうことの意味を語っているとしか思えませんでした。
そのことをちゃんと言葉にしたいと思うのですが、時間がかかりそうです。
少しずつ、メモを重ねてみたいと思います。
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