こだわりの溶ける時間。
こだわりの溶ける関係。
こだわりの溶ける場所。
それを人は、繰り返し生きているんじゃないかと思います。
「こだわり」には「頑な」なイメージがつきまとっています。
それに「硬さ」、「とっつきにくさ」、
「持て余す」イメージが連なります。
でも、それはその人がいま、こうありたいと強く望んでいる姿であり、
自分の大切にしたいものを、必死で守ろうとしている姿にすぎません。
一番大切な自分の真ん中を、譲れない自分を、守っている姿です。
こだわりとは、そうした必死の守りの姿として、
私には感じられてきました。
それがなぜ、
「障害」とか「脳の異常」のように言われるのでしょうか。
子どもの、必死な「守る思い」が理解できずに、
専門家は、そのこだわりを「解け」と迫ります。
解くことが、治ることであり、適応することだと迫ります。
でも、初めてのこの世で、経験もなく、先の見通しも未熟なときに、
「こだわるな」「守るな」「こだわりを解け」
と迫ることは、子どもにとってあまりに無茶な要求です。
専門家は、その「こだわり」をなくすために「訓練」をします。
それは「障害」なんだから、
「治療」「療育」しなければいけないと考えるようです。
「こだわり」があるから、
この子は社会に「適応」できない、と考えるようです。
だけど、「こだわりを解け」と命じる姿勢で、
子どもに伝わるものはどんなことでしょう。
それは、谷間に揺れる吊り橋の上で、
手すりに「つかまるな」ということ。
泳げないのに、海の真ん中で、
浮き輪に「つかまるな」ということ。
そもそも、「そのこだわりを解け」と迫る前に、
この子は、何に迫られて、何が不安なのかと考えなければ、
子どもの気持ちは分かりません。
子どもが初めての場面、うまく状況が飲み込めない時に、
自分にとって数少ない確かなものにしがみつくことで、
必死に守ろうとしている姿を、
「こだわり」と言っているのではないでしょうか。
こだわる必要がなくなれば、子どもは新たな興味に向かって、
自分で一歩を踏み出します。
その、子どもの時間を、待つこと。
それは、子どもにこだわるなと迫るよりも、
ずっとずっと大事なことです。
最新の画像もっと見る
最近の「こだわりの溶ける時間」カテゴリーもっと見る
最近の記事
カテゴリー
- ようこそ就園・就学相談会へ(504)
- 就学相談・いろはカルタ(60)
- 手をかすように知恵をかすこと(29)
- 0点でも高校へ(393)
- 手をかりるように知恵をかりること(60)
- 8才の子ども(161)
- 普通学級の介助の専門性(54)
- 医療的ケアと普通学級(90)
- ホームN通信(103)
- 石川憲彦(36)
- 特別支援教育からの転校・転籍(48)
- 分けられること(67)
- ふつう学級の良さは学校を終えてからの方がよくわかる(14)
- 膨大な量の観察学習(32)
- ≪通級≫を考えるために(15)
- 誰かのまなざしを通して人をみること(134)
- この子がさびしくないように(86)
- こだわりの溶ける時間(58)
- 『みつこさんの右手』と三つの守り(21)
- やっちゃんがいく&Naoちゃん+なっち(50)
- 感情の流れをともに生きる(15)
- 自分を支える自分(15)
- こどものことば・こどものこえ・こどものうちゅう(19)
- 受けとめられ体験について(29)
- 関係の自立(28)
- 星になったhide(25)
- トム・キッドウッド(8)
- Halの冒険(56)
- 金曜日は「ものがたり」♪(15)
- 定員内入学拒否という差別(97)
- Niiといっしょ(23)
- フルインクル(45)
- 無条件の肯定的態度と相互性・応答性のある暮らし(26)
- ワニペディア(14)
- 新しい能力(28)
- みっけ(6)
- ワニなつ(351)
- 本のノート(59)
バックナンバー
人気記事