燃えるフィジカルアセスメント

総合診療医徳田安春の最新医学情報集。問診、フィジカル、医療安全、EBM、臨床研究に強くなれます。

米国初のエボラ出血熱ケースの診断エラーについての考察

2014-10-06 | 症例集

ダラスで米国初のエボラ出血熱感染が確認された男性は、入院の2日前に病院を訪れたが、抗生物質を処方され帰宅していた。

という報道で全米がパニック状態となっている。

ポセイドンアドベンチャーやタワーリングニンフェルノなど、パニック映画の発祥地の米国なので、マスコミではパニック的に議論されている。ホットゾーンという映画と小説も最近リバイバル人気という。

ここで一つ問題とされているのが「診断エラー」だ。

ケースの簡単な経過は、ここに詳しく記載されているが、

渡航歴(travel history)をナースがちゃんと聞いており「電子カルテ」の看護記録に記載したのにもかかわらず、診察したER医が見逃していた、という。

ER医は「ウイルス感染症」という診断をしたというので、厳密には診断エラーではない(エボラウイルスもウイルス)。でも、超特別なウイルスだ。

これほど、世界的に注目された「診断エラー」はないだろう。

ER医は「ウイルス感染症」に抗菌薬を処方したということも問題であるが、ここでは「診断エラー」を認知バイアス(system1)と情報分析エラー(system2)の2つに分けて論じる(詳しくはここをご参照)。

認知バイアス(system1での欠点)では

availability bias:「発熱=単なるウイルス感染症」とすぐに考える

hassle bias:「多忙な現場で簡単に処理しようとする」

なども関連していたのだろう。どこの国でもERは多忙だ。医師は自身のバイアスを認知する必要がある。

情報分析エラー(system2での欠点)では

「電子カルテ」の看護記録を医師が見ていないという現実。

ナースとドクターのcommunication failure

読みにくい「電子カルテ」のインターフェースの問題。

が挙げられる。紙カルテはたしかにデータ保存には勝手がよくない。しかしながら、アナログ的に重要情報を「よく見えるスペースに書き込む」ことで、アートな情報を印象的に伝達できる。

最近の研究で、スクロールを要するスペースに記載された情報は「見られる」ことが少ないという、ことが示された。電子化のピットフォールだろう。

写真は、3週間前にアトランタで行われた「国際診断エラー学会」の際に学会参加メンバーとともに訪れたエモリー大病院。ここは、アフリカでエボラ熱を発症した最初の米国人医師を航空搬送して治療した病院だ。

 

 

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