アイネットラジオ 2021/3/27
3月、沖縄県独自の緊急事態宣言の解除以降の状況
DJ:アーサー 3月27日の放送、アイネットラジオでは恒例となりました、ウェルネスウィーク、そして昨年4月からロングランで、きょうでちょうど12回の特集回となりました、かなり長い間情報提供しておりますけれども、本日も新型コロナウイルスに関する情報提供と位置付けましてお送りいたします。画面上ではご登場いただいておりますが、今回の新型コロナ企画では多くのご提言をいただきました群星沖縄臨床研修センターの徳田安春先生をお迎えしております。よろしくお願いいたします。
徳田安春 よろしくお願いします。
アーサー 初回から、もうほんとに、ずいぶん経ちました。
徳田 そうですね。
アーサー 昨年4月からの遡りで、各放送回のおさらいをしてみたんですけれども、うーん。個人的に、本当にこの企画、やることができてよかったというのが実感としてあります。各回の放送後のリスナーの皆さんの反響もさることながら、実質的に、情報の取り扱いと、各自でやっぱり学ぶべきところ、そして事実とフェイクと呼ばれるものの境目の部分ですね、いろんな観点でこの企画をお届けできたことをうれしく思っています。また改めて、コントともよろしくお願いします。
そして今週のウェルネスウイークの特集についてなんですけれども、この3月、沖縄県に対しては緊急事態宣言の解除に伴い、経済活動の再開という状況が始まっているさなかということになります。ただ、感染者数として、毎日、ニュース、新聞等で発表されている数字をリスナーの皆さんもご覧いただいていると思いますが、決して数字がゼロに近づいているわけではなく、また実際情報に表れてこないものも少なからずあるのではないかと思っています。なので、まず、冒頭のテーマとしてはこの3月の数の推移、指標についての見解から、徳田さんお伺いさせていただきたいのですが。
徳田 そうですね、沖縄の場合、県独自の緊急事態宣言の解除が3月1日で、しばらくたってますが、どうしても日本全体の状況と沖縄の状況はリンクしていますから、これは予断を許さないと思います。というのは、首都圏がくすぶっている。感染者数の下げ止まり。ある意味、高止まりということで、ベースラインが上がっているんです。そこに3月4月で人の動きが出てきます。そして5月にゴールデンウィークがあります。
今、沖縄の感染者数が2月にいったん下がったは季節性要因が大きいと言われています。緊急事態宣言のおかげではなく、たまたま運がよかったと考えた方がいいわけです。宣言下でも、人の動きはそんなに落ちていないというデータを見ても明らかです。
アーサー たしかにこの3月の渡航状況、それから県内の活動状況を見ても、去年、ひっ迫した状況を抑え込んでいたあのころと比べると、はるかに、人の動きもある印象です。
徳田 はい。ということで、4月5月が心配です。
アーサー うーん。すでに沖縄県では、この収録をしているきょう3月27日の昼に、新規感染者89人を、陽性者は98人を確認していますし、25日には県内中部でのクラスターを確認していると報道されました。
やはりまだ飲食店での会食にフォーカスがあたりがちというところがあるんですが、この特集では、昨年「ゼロコロナ」の提言をしていただいた徳田さんのお話の中でも、実は、もちろん会食という場所にも要因はありますが、家庭内感染のリスクというものを繰り返しお伝えしてきたと思うんですけれども、この辺りのリスクは現時点でも?
徳田 もちろんそうですね。やっぱりこれはパンデミックですから、世界中のデータを見てそれから学ぶのが大事です。日本のデータだけでものを言おうとするとミスリードされる。なぜかというと、日本の場合、検査をしぼっている。いまだに行政検査数が少ないと。で、少し前に「基本的対処方針分科会」の尾身会長がおっしゃってましたが、「見えにくいクラスター」「隠れた感染源がある」と。それを見つけるためには大規模検査しかないんですよね。それをやっていないわけですから、隠れたところを見つけられないということになるわけです。
アーサー はい。このあたり、前々回の提言特集の中で、空港でのサーモグラフィーの在り方を取り上げたときに、こういうお話がありました。
サーモグラフィーがあります、けれども通る人が熱がなければ感知しない、素通り。ですけど、感染と本人のこのときの熱の状態が必ずしも一致しないということと、あとは、それを避けるという。
徳田 そう、逃げる。
アーサー その状況が起きた時に。
徳田 みんな逃げたくなるんですよ(笑)。捕まえようとすると逃げる。人間の心理です。
アーサー 皮肉な話なんですけど、この辺りの心理状況があったり。
徳田 全員検査をするということにすれば、逃げません。捕まえようとするから逃げるんです。
「対策疲れ」と、相変わらず少なすぎる行政検査数
アーサー うーん、ですよね。ただ、沖縄県の方の発表の、まだ2月の更新状況ではあるんですけれども、先ほどの家庭内感染のリスクというのを昨年に8月にさかのぼった状態で、ずっとコンスタントに続いているという状況がありました。もちろん、表に出てこない会食の場というのもありますけれども、実数として挙がってきやすいのがこの家庭内感染という状況があるので、引き続き、ご家庭での食事の状況ですとか、もろもろに十分な注意をはらっていただきたいというのがあります。また、この、経済活動がスタートしている中なんですけれども、私自身が外に出て思うことなんですが、例えば今ですと、お店ややいろんな施設でも、消毒用のスプレーが置いてあったり、飲食店さんでも店内の消毒はもとより、新しい設備を導入して、いわゆる滅菌の方向にしながら、換気その他の対応もして、営業sれるという工夫をされているところもあると思うんですが、特に私がコンビニでよく思うんですけれども、スプレーされる方って意外と少ないんだなと。これって、ある種の慣れなんでしょうか。
徳田 スプレーは、エタノールでしょうか。
アーサー はい。
徳田 そうですね、入り口に置いてありますが。
アーサー なにか、来場来店されるお客様の数からすると、それを実際に手に取る方の割合が、ある時期を境に少しずつ減ってきたような印象があるんですが。
徳田 減ってますね。うん、これは、行動経済学でわかっているんですよ、すでに。こういうのは、「対策疲労」。対策疲れ、予防疲れですね。疲れるんですよ、人間っていうのは。
アーサー あー、なるほど。
徳田 最初はびくびくして、みんな、1日何十回という手洗いもする、マスクも厳重にするし、人が向こうから歩いてきたら逃げるっていうのが、今はもう人にぶつかっていく。
アーサー (笑)
徳田 もう、全然関係なしですね。ショッピングモールを見ても。対策疲労です。だからゼロコロナは、早期、1年前にやるべきだったんです。途中からゼロコロナをやるというのは相当の気合がないとできない。それはやった国はあるんです。オーストラリアもニュージーランドも、最初はゼロコロナじゃなかったですからね。途中からゼロを目指して頑張って、今ゼロにもってきているわけですけれども。
アーサー 特にニュージーランドあたりよく出てきますけれども、発生した時の次のアクションのスピード感がものすごい。
徳田 スピードが速い。
アーサー 速いですね。
徳田 速く、短く、狭く、強く、ね。私はもう何回も申し上げてますけど、その原則に則ってますね。
アーサー うーん。
徳田 一方で、日本の場合は遅い、それでだらだらとやっている。それで、緊急事態宣言の中身も弱い。それで広すぎる。ということでですね、やってることが、原則に違反しているわけですね。
アーサー このあたりで出てくるのが、最初でも出てきました行政検査数に、話がリンクするかと思うんですが。3月の15日現在の沖縄県の検査実施の件数についてのデータを手元に準備してます。直近1週間、3月8日から15日までの内訳でいうと、行政検査が461件に対し、保険検査が2568です。この差って、もともと想定していたものなのか、ある種の誘導なのか、もしくは行政検査としての限界なのか、どうでしょう。
徳田 これは、検査の基準を一切拡大していないからです。それに尽きますね。最初から、この基準を変えてないわけです。
アーサー うーん。
徳田 きょう、あるテレビ番組で、官邸に近いと言われるコメンテーターが言ってましたが、政府は検査をやりたいと思ってたんだと。ところがいくら言っても厚労省の医系技官が反対するんだと。安倍前総理も検査拡充と言っていたのに、厚労省は馬耳東風だったと。厚労省に責任があると言っていました。官邸か厚労省かどちらに責任があるのかわかりませんが、「責任がある」ということは認めた、官邸は認めているわけです。
アーサー はい。
徳田 責任はある。ただ自分たちにはないと言っているだけで。
アーサー いやいやいや(笑)。
徳田 要するに検査を拡充すべきであるというのは認めたわけですが、今まではそれを認めなかった。
アーサー はい。
クラスター対策の欠点――「家族内発生」、「濃厚接触者」を見つけにくい
徳田 では何が問題かというと、このクラスター対策そのものの欠点なんですが、クラスター対策では5人という「患者集団」が出た場合には徹底的に調べることになっていますが、それより少ないと(そこまで追究)しない。けれど、5人家族って、現在では少ないですよね。
アーサー はい。
徳田 ですから家族内発生を見つけるのが弱い。また、日本の濃厚接触者の定義が厳しすぎる。どういうことかというと、1メートル以内で15分以上しゃべっていても、お互いがマスクをしていると濃厚接触者としない。二人ともマスクをしていれば濃厚接触者の定義に入らない。だから行政検査の適応にならない。
アーサー うーん。
徳田 WHOとかアメリカのCDCは違います。マスクは関係なし。
アーサー そうですよね。
徳田 しかも距離も2メートルです。ところが日本の場合は1メートルにいるふたりでも、マスクをしていれば検査をしない。それが去年からずっと同じ。その基準を変えていない。
アーサー はー。
徳田 あれだけ検査拡充が必要だって、みんなが言っているのに。この基準でやるから検査数が増えない。増えないのはあたりまえです。
アーサー なるほど。この保険診療の項目で、PCRと抗原検査の内訳が出ているんですが、このあたりの数には、病院で単独で検査された方ももちろんなんですが、ここ最近、PCRの検査センターというのがいくつか稼働始めています。ここも含まれるんですか。
徳田 民間検査の場合は含まれてない方が多いと思います。というのは医療保険の検査というのは病院や医療機関で行う検査ですから、医師が必要として認めた検査と。ですから、大部分は症状がある人です。一部は、症状はないんだけれども、手術前とか、何かの理由で入院するという時にやっている検査です。医師は一生懸命やっているわけです。私も、毎週外来をやっていますから、PCR検査も抗原検査も、しょっちゅうオーダーしています。
ところが、行政検査が増えていないというのは、お話ししたように、基準が全く拡大していないからということと、必要ないろいろな検査がなされていない。私たちはサーベイランス検査と呼びますが、政府はモニタリング検査と呼んでますが、サーベイランス検査とかスクリーニング検査、そういったことをやるべきだと言っていますけれども、それが広がっていない。そこで行政検査が増えていない。これを、本当は県議会などが追及しなければいけないんですけれども、追及していないんですね。
これは沖縄だけの問題じゃないんです。全国的に少ない。それで官邸はその責任を逃れるために、自分たちではなく厚労省が問題だと、言うことを聞かないんだと言っています。ほんとうのところどっちなのかわかりませんが。いずれにしても、問題だということを初めて言ったわけです。
アーサー うーん、このあたりは本当に、だいぶ長くかかっているんですけれども、一向に行政検査の展開が変わってこないんですね。
徳田 医師はオーダーしているわけです。なぜかというと医療保険で行われる検査は、原則、医師のオーダーがないとできませんから。だけど、行政検査をやっていない。行政検査というのは保健所と地域の衛生研究所がやるもので、ほとんどの場合は無症状者に対するものです。それが少ない。そうすると、たくさんの感染者が見過ごされているということになるわけです。
アーサー うーん、ほんとうに難しいところです。リスナーの皆さんにも、重ね重ねお伝えしたいのは、このあたりの情報というのが、正しく理解できていないと、自ら、あるいはご家族の行動にも影響が出てくるところでもあったりするので、憶測や偏った情報の取り方ではなく、より事実に近づくための工夫として、情報を取り扱っていただければと思っています。
変異ウイルスは「感染力が増す」「重症度が増す」「免疫が効かなくなる」
アーサー そして、この3月、沖縄でも感染状況に一つのトピックがあったのは、変異株と呼ばれる、ウイルスの進化形のものがあるんですが、改めてこの変異株について、改めて解説をいただきたいと思いますが。
徳田 これはウイルスが進化しているということなんですけど、もともと、ウイルスは進化するものです。まあ、人間も進化してこうなっているわけですから。生物の定義、ウイルスは生物かという議論はありますが、いちおうRNAとかたんぱく質の構造を持っているわけですから機械ではないわけです。生物と同じような構造からなるものに感染する。そうすると、それが進化するのは当たり前のことで、進化する方向性というのは三つです。
一つは感染力が増す。二つめは重症度が増す。三つめが免疫が効かなくなる。これは基本的には三つとも全く別々の方向の進化です。
アーサー そうなんですね。
徳田 はい。メインの変異株は世界中に三つあると言われているんですが、最近はアメリカとかフィリピンでもあるという話ですけれども。一つの変異株でさっきの進化で獲得する三つの特徴の一つだけでなく、二つあるいは三つ重ねて持つという場合もあるんです。今言われているのは、英国型と呼ばれているイギリスで最初に見つかった型、あれは感染力が増すというのはすぐにわかったんですけど、最近のデータによると重症度も増すということもわかりました。ですから、変異というのは問題で、すでに沖縄でも見つかっていますからね。
アーサー そこがひとつ、ターニングポイントなのかなと思います。
徳田 はい。検査数が少ないけれど、市中で流行しているだろうというのは明らかですから。
変異株というのは、感染力が強い。特にイギリス型の場合はけっこう若い人に、小児に感染が広がるという特徴を持っていますから。
アーサー はー。
徳田 これは日本本土でもすでにそういう傾向がわかっているんです。今後、沖縄でも若い人、そして小児に感染が増えるようなことがあれば、これは変異ウイルスが広がっていることを示していると思います。
アーサー なるほど。この変異株の発生というのは、もともと日本だけの話と、通常でしたら諸外国からの持ち込みであったり、こちらからの渡航であったりというのがひとつのきっかけというのがあると思うんですが。一度発生した場合、沖縄の場合、未だ表に見ええている数、症例自体が少ないじゃないですか。ですけどそこから、市中流行に向けて加速度的に感染が増えていっている可能性があるということですものね。
徳田 はい、あるんじゃないかなと思うんですね。例えば島によっては陽性者ゼロがずっと続いているところがあります。1月にあれほど感染爆発した宮古島が今、比較的少ない。けっこうゼロが続いているというところですから、そこでは広がっていない可能性はあると思いますけれど。ただ、沖縄本島、特に那覇を中心としたエリア、人口密集地で、まだモニタリング検査とか行われていないですから。政府は、全国で1日1万件やるとか言っているじゃないですか。沖縄もそれに含まれているようですけれども、それをもっと数を増やす必要がある。全国1万というと、人口当たりにすると沖縄では100件やるということになりますが、1日に100ではちょっと少ないんじゃないかと思います。まあやらないよりはましですが。
アーサー そうですよね、このあたりはもう昨年からのデータで、実際のところリスナーの方でまだ誤解されている方、多いと思いますが、人口比率で考えると、沖縄の感染率は全国的にも上位に入るので。
沖縄は東京24区!? 感染状況は直結している
徳田 そうなんです。以前にもこの番組で申し上げましたけれど、ある意味で沖縄は、東京24区ということなんです。というのは、那覇空港発着便を考えて、東京から入ってくる羽田発とかの人数があれだけ多いわけですから。東京の状況が沖縄にそのまま広がる。というのは人を介して広がるわけですから。これはもう、沖縄は東京の一部というくらいに考えた方がいい。ですから東京をマークしておいた方がいいですよ。
アーサー ここがもう、重ねてお伝えしたいのはそこです。確かに経済活動は必要というのも十分理解はできるんですけども、目に見える数が少ないということに対しての慣れといいますか、疲れもあるのか、関心がどんどんどんどん薄れていっているというのがすごくきになっているところです。個人的には。
徳田 ええ、ふつう病院の中をのぞいたりはできませんからね。沖縄県立宮古島病院には自衛隊が応援で入ったという新聞報道があったときなどは、たぶん宮古の島の中ではかなり緊迫感があったと思います。だけどそれ以外の場面であったのかというと、あまりないですよね。プラス、やっぱり1年もたつと、先ほど申し上げたような行動経済学的な現象がどうしても起こってしまうということで、慣れてしまう。
アーサー このあたりくれぐれも強くお伝えしたいことです。そして、今のお話の流れの次に出てくるのが、ワクチンです。沖縄県に関しては、3月の初旬に入荷という状況から医療関係者への接種がスタートしつつあるという状況なんですが、まず、このワクチンの接種について、どうご覧になってますか。
徳田 ワクチンについては、世界中でその分布が、かなり平等に反しているということが問題になっています。先進国が大部分のワクチンをとって、途上国ではなかなか打てない。これは倫理的にどうなのかという問題です。ただ一方で、日本は遅い。先進国の中でダントツに遅いと目立っています。ある意味、ワクチンナショナリズム的なことをやらない、やっていなかった。例えばイギリスとかイスラエルみたいに。アメリカもそうですけれど。世界よりも先に自分たちだけはとにかく打つというエゴイズムに走った国とくらべると、まあいいかもしれませんが、ただ、遅い。というところがあります。
アーサー 今、国から提示されているスケジュールとはずれが生じているという問題が実際ありますし、沖縄県内においても、医療関係者の次に、高齢者も含めた施設ごとに入居者の方々始まっていく状況だと思うんですが、そうはいってもやはり遅いですね。
徳田 遅い。私もまだ打っていないですしね、医療関係者ですが。いろんなところで打ち始めてはいますけれど。
遅れている日本のワクチン接種状況で、夏も冬も心配
アーサー 難しいところですね。ワクチンについて、日本に関していうとほぼ輸入に頼るという中、前回の特集では、国産ワクチンに関する情報提供も行いましたが、現実的に今、その状況を担保できる正確な情報がないので、だからこそ、日々の行動変革にいまひとつ注意を払っていただくのが重要ということになろうかと思います。そして、変異株のことともリンクするんですが、直近、インタビューの中で徳田さんがブースターワクチンというワードを使っておられましたが、それについて簡単にご紹介をお願いします。
徳田 ブースターとは、例えばロケットには、積み増しロケットがついていて、発射したあとに、途中で積み増しロケットのエンジンをまた爆発させ、加速度を増し、宇宙に向かって旅立たせますよね。その積み増しをブースターといいます。免疫についていうと、最初のワクチンに加えるワクチンがブースターワクチンで、それによって免疫を追加させて、効果を得ようというわけです。現在のワクチンはだいたい2回打ちを1回めのシリーズとします。ジョンソン&ジョンソンのワクチンは1回打ちですが。いずれにしても1回めのシリーズを打って終わりというのではなくて、ある程度期間が経った後にもう1回、免疫を追加するためにブースターワクチンを打とうというわけです。
免疫は、ワクチンの種類によって違いますが、やっぱり時間が経つと免疫が落ちていくのがけっこうあるんです。今回の新型コロナでは、ワクチンの効果として今のところ120日分とか半年とかは免疫がもつことがわかっています。ところが1年以上もつかどうかはわかっていないんです。これがひとつ。そしてもうひとつ、今いろんなところに出現している変異ウイルスの中には、一部には、今出回っているメインのワクチンが効きにくいものがもう出てきている。そこで追加のワクチンが必要だろうということなんです。イギリスではいますでに、秋にはブースターワクチンを打つという計画を立てています。
アーサー なるほど、変異ウイルスに対応するためのワクチンというものが今、出しているものと別なタイプが必要になってくる。
徳田 イギリスは今、すごい勢いでワクチンを打っていますけど、もともとイギリスにはワクチンを開発したオックスフォード大学とかもありますから。
アーサー はい。
徳田 それ以外のファイザーとかモデルナのワクチンも手に入れて秋には打とうと。1回めのシリーズ、初回シリーズは夏までには全部終え、秋にはもう2回、ブースターワクチンを打とうとしているんです。そのブースターの中身というのは、変異ウイルス用の構造を中に仕込もうという予定なんですね。
アーサー そこを考えると、やはり日本全体をとってもそうですし沖縄独自の話をみても、ワクチンを実際に供給がきちんと確立されるまでの時間というものは、想像するよりはるかに長くなりそうですね。
徳田 日本では今の見込みでは秋までかかるだろうという話です。夏では、成人全員にというのはちょっと難しいという話ですね。早くて秋だろうと。遅くて年末までかかるかもしれない。そうすると年末になるとまた、感染の大きな波がきているかもしれない。新型コロナの場合は、コロナウイルスはもともと季節性変化があって、それが夏と冬です。だから、今回の夏は確実に来るわけですけど、来年の冬もまた来てしまうという恐れもなきにしもあらず。そこは避けたい。イギリスなどではそこを避けるために、ブースターを打つという計画を立てたわけですね。
アーサー はい。
徳田 というのは、日本もそうですが、ヨーロッパもまた増えているんですね。やっぱりワクチンを打つスピードが遅れているから。世界一早くワクチン接種を進めているのはイスラエルなんですけど。そのイスラエルやアメリカ、イギリスは陽性者の数が減っています。大規模検査もやりながら。ですから確実に下がっていると言える。
アーサー なるほど。
徳田 やっぱりワクチン接種の遅れというのは、日本は、かなり深刻な問題です。夏は(感染の波が)来ると考えられる。この夏の波が前倒しで来る可能性がある。やっぱり人の流れによって広がるわけです。だから4月5月に来る可能性もある。今この3月からみて。
春休みで4月の波が来る、ゴールデンウイークで5月の波が来る可能性がある。去年は5月の波はこなかったんですよ。去年のゴールデンウイークはかなりステイホームしてましたから。
アーサー たしかに。
徳田 だけども、この1年たって、対策疲れがあり、そしてGo Toもやると言ってますからね。広がる要因です。ワクチンを打っているんだったらまあ、Go Toもありだと思うんですけど。私はGo Toそのものに反対しているわけじゃないんです。感染を抑えこんでからというのが、もともとの約束じゃないですか。
アーサー そこなんです。重ねてお伝えしたいのが、この番組の特集では一貫して徳田さんメッセージを出しているのは、本来経済活動を回すべきという前提なんです。だから、経済活動を回すために、大規模検査をやり、スポットをみつけ、影響をなるべく狭くしていくという。
徳田 そうなんです。ですから今回、すばらしい例として、最初の抑え込んだ例として米軍を出しましたけれど、米軍は1パーセントのサーベイランス検査してるじゃないですか。軍人の1パーセントの。沖縄に関係して2番めの例として、巨人軍がすごかった。巨人軍並びにプロ野球球団が、大規模検査をやって、陽性者ゼロ。
アーサー あの取り組みはすごかったですね。
ナショナルセキュリティとして、無料でPCR検査をしてほしい
徳田 だからやろうと思えばできるんです。沖縄に来ていいわけです。きちんとした検査をする体制を作れば。最近航空会社でも、チケットプラスPCR検査サービス、そういうものを販売してますけど、どんどんやってほしいですね。先ほども申し上げましたけれど、陽性の検査に関しましては、行政のキャパが増えないのがどうしてもネックになっていますから。保健所の人員とか、衛生研究所の人員とか、PCR機械の問題とかありますから、アウトソーシングすればいいんですよ。民間の企業に。
アーサー そこのところ、琉球大学さんがPCRの検査に関して研究を進められているという報道がありましたね。
徳田 そうそう。もともとPCRの検査の機械というのは、民間企業が作っているわけで、国立感染症研究所が作っているわけではない。感染研や衛生研は民間企業が作っている機械を買っているだけ。
アーサー そうですね。
徳田 だから全部民間にやらせればいいんです。人がいないんだから。人がいないところでやろうとするのが間違いです。全部委託すればいいということなんですね。
アーサー そうですよね。結構早い段階で、徳田さんのメッセージとしては沖縄のOIST(沖縄科学技術大学院大学)の事例が出されましたし、今回の琉大もそうなんですが、その必ず、行政の枠の中に収めなくても活用できるリソースというのがいろいろなところに点在しているわけですね。
徳田 だから、行政がやるべきは、お金を出すことです。那覇市などでやっている民間のPCR検査は2000円とか、まだ高いじゃないですか。
アーサー はい。
徳田 2000円じゃ、ふつうの人は受けないですよ。まだ高い。そういうのは無料でやらなければいけないですよ。1000円でも高い。無料にして初めてみんな受けますよ。だって、みんなスーパーでもポイントを集めるのに必死になっているわけです。そんな中でPCR2000円って誰が行くかって話ですよ。高い。だから行政は自分たちでやろうとするんじゃなくて、利権を忘れて開放して、お金は出すと。ただし、精度管理だけのチェックはやる。
アーサー はい。
徳田 ちゃんとチェックしてますかという精度管理だけする、お金は出す。国民にはお金は出させない。だってこれだけのGoTo予算とかあるわけで、それを回せばいい。基地の建設予算とかもあるじゃないですか。それをいったん止めて、その予算を回すとかね。
これはナショナルセキュリティに関係するものですから。しかも今、政府は専門家会議か何かで「もう打つ手はない」と言っているわけですから。
打つ手はないというのは、オリンピックはもうできないということを意味するじゃないですか、ふつうに考えると。だけど一方では「やる」と言っている。もしやるというんなら、これしかないと思う。大規模検査と。
アーサー そうですよね。今お話が出たナショナルセキュリティという前提があるからこそ。
徳田 前も申し上げましたけれど、1億円の戦車を買うんじゃなくて、1億円のPCRトレーラーを買ってください。戦車を1000台買うというのはナショナルセキュリティのためだとして買うわけです。だけど、その戦車は実際には使わない。実戦はないわけですから。そう考えると、実戦に使うナショナルセキュリティとしてPCRのトレーラーを買って、1台あれば1日2500検体できるわけですから、1000台買うと1日250万件、検体を検査できるんです。
やる気があればできる。だって1000億円といったら、GoTo予算から比べると微々たるものでしょ。
アーサー たしかに。そしてトレーラーであれば移動のメリットを生かして。
徳田 そう。トレーラーを1000億円で買って、民間企業にやらせる。そこで一切、感染研とか衛生研とか、保健所の人にやらせない。というのは人手不足でたいへんだと言っているわけだから、やらなくていいよと。
アーサー そのほうが現実的にもいいはずです。オペレーションの部分は民間に、精度管理は行政が。収集したデータの分析と今後の活用は専門家がやる。そうやってすみわけができますよね。
徳田 そう。そしてコンタクトトレースも、プログラムがありますから。ジョンズホプキンス大学のものとか1年前からある。そういうので、コンタクトトレースができる臨時の雇用をすればいい。全部、保健所がやろうとするからダメなんです。それで保健所がパンクするという。この1年間ずっとパンクしていますよ。
アーサー 確かに、あの限られた人数で追跡ができるわけないですからね。
徳田 人員は増やしてないですし。やる気がないわけです。人員は増やされてないですから。そこでやろうとすること自体が無理です。だから民間にやらせるといい。
アーサー ほんとうに、ここは、強く強く言い続けたいところですね。
徳田 トレーラーを買って、沖縄にプレゼントしてほしいです。
不特定多数のいる密閉空間では十分な換気と、二重マスク・N95マスクの着用を
アーサー ほんとうに強く思います。そして、4月です。先ほども出たように4月以降のある種の波の前倒しが予測できるということがあるわけじゃないですか。その中でも、もちろん感染の予防というのは日ごろの生活の中で習慣として残しておかなければいけないんですが、そことは別に、ちょっとここは注意しておいた方がいいというポイントがあれば、アドバイスをいただきたいと思います。
徳田 やっぱり、換気ですね。どうしても、エアロゾール感染と呼ばれているものが、結構大規模クラスターを起こすという特徴があります。だから換気を十分にする。沖縄の場合、逆に夏の方が密閉が多いと思うんです。
アーサー あ、エアコンですね。
徳田 はい、エアコン。ですからクラスターが起こりやすいと思うんです。だから自然の風に、したい。窓を開けて扇風機をかける。窓を開けると蚊に刺されるというのがありますから、蚊よけスプレーと。自然の風に慣れましょう。
アーサー 換気の部分で、例えば玄関側とベランダ側といったように。
徳田 はい、2カ所。
アーサー 2方向を開けて風を通すと。
徳田 そうそう。これを徹底してやってほしいですね。これだけでもかなり違うと思います。
アーサー これ、極端な話、少しの隙間でもいいと思うんですが、
徳田 はい3センチでもいいです。
アーサー もし、おうちの状況が許すのであれば、なるべく、密閉を減らして、通し続けた方がメリットということですね。
徳田 はい、継続してオープンにするということです。
アーサー まあ、建物の構造的に難しいところもあるかと思うんですが、ご自宅ではちょっとチャレンジしていただきたいことですね。
徳田 自宅でしたら、個室でしたら大丈夫ですよ。人から人にしか移らないんで。問題は多人数の部屋にいること。ひとりだったら絶対感染しないですから。人から人へ感染する。
接触感染はありえますけど、接触感染はメインじゃないと言われています、最近は。最初は接触感染が結構あるんじゃないかと言われていましたけれど。この1年間、世界中がいろいろ調べていて、接触感染はあまりないということです。実は。だからクラスターが起こったところに消毒隊が入りますが、あれはあまり意味がない。
アーサー なるほど。接触型ではないがゆえにということですね。
徳田 ええ、いったん(体の)外に出て、物体の上に張り付いたら、RNAは残りますからPCR検査では陽性になります。PCR検査というのは基本的にRNAを見つける検査ですから。しかし、ウイルスとしては残骸なんです、ある意味で。それを気道に吸い込むのが問題です。そして鼻とか喉とか、肺の中に入ってしまうことが問題なんです。
アーサー それは。昨年ニュースに出ていた事例としてあったのが、昼食時の洗面所での歯ブラシというのがあったと思いますが、それと近いイメージでしょうか。
徳田 うん、マスクを外しますからね。マスクも、変異ウイルスについてはあまり予防効果がそれほど強くないと。実際変異ウイルスに関しては、お互いマスクしていても感染した例が見つかっています。ですので、換気ができない場合はマスクを2重にする。ふつうの不織布マスクの上に布マスクを着けて二重にするのがいいと、これはCDCでも推奨しています。もしそれがなければN95というのが、今はもうドラッグストアにも売っています。ドイツでは、N95を一般の人にも推奨していますね。
アーサー もともとは医療向けに。
徳田 そうそう、最初は医療者に使ってもらうために一般の人は使うなと言われていたじゃないですか。医療者が使うべきものを一般の人が独占しては困るので。しかし今はもう、世界中にN95ありますから、積極的に使った方がいいです。閉鎖空間に不特定多数の人がいる場合のことですが。例えば車の中で一人でいるときにマスクをしても意味はないですから。人から人へしか移らないですからね。
アーサー それは、私自身もなぜだろうと思ってしまうことですけど。
徳田 そういうのがある。人からしか移りませんから。
アーサー この特集、長らく聞いてくださるリスナーの方、いまして。
徳田 感想とかコメント、いただきたいですね。おもしろいですかね。
アーサー 一言でいうと、ご自身の日ごろの生活の中になかった情報がでてくるというのがいちばんの驚きだったようで。
徳田 メディアが報じないことが。
アーサー なぜなのかという背景にも関心が、
徳田 政府はメディアに影響を与えてますからね。メディアは弱みも握られてるんですよ。ひとつは官邸から直接電話がかかってくるというのがあるじゃないですか。NHKに対して、今回辞められた山田さんから「総理怒ってますよ」という電話があったというのがありました。その番組のキャスターは交代でしょ。もうひとつあるのは、NHK以外ですけれども、スポンサーが下りていく。NHKには直接電話してというのがあるんだけれど、民放の場合は、朝日新聞なども含めて、全部スポンサーになっているから。政府の言いなりにならないとまずいというインセンティブが働いています。このコロナに関しては。
アーサー 重ねて申し上げますけれど、まず何より第一優先は人命にあるべきという理屈が、本来です。
徳田 そうなんです。プロフェッショナリズム。職業倫理。メディアもそのプロフェッショナリズムを考えた方がいいと思います。
アーサー また、当ラジオでは4月以降の特集に関しても、必要な情報を収集中ということもあります。現在のコロナ状況を見極めながら、引き続き、今年も徳田先生には集中的にお時間をいただきながらお伝えをできればと思っております。徳田先生、よろしくお願いします。
徳田 よろしくお願いします。
アーサー 本当に駆け足でこの特集、スタートからエンディングまであっという間なので。
徳田 このトピックはずっと話していても尽きません。
アーサー というところはありますが、来月は少しでもまた、前向きな形でみなさんに情報をお伝えできるように準備させていただければと思います。
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