『 ワクチン接種回数 』
今から一年前、2020年 11月頃は、ワクチン接種が新型コロナウイルス禍(COVID-19)を収束させる最強の対策になると言われ、各国で開発と承認を急ピッチで進めていた時期です。 ロックダウンで国民生活が大きく制限され、各国の経済指標も軒並み前年割れが続き、一部では市民による抗議デモが発生していた時期ですから、ワクチン接種こそが COVID-19 からの最強の救世主になると広く信じられていました。
そして、今年春以降、経済・政治的に有力な国が先行してワクチン接種が始まり、実際、英国やイスラエルなどワクチン先進国では新規感染者数や死亡者数が減少する成果を発表するに至りました。
その成果を追って、米国やEU諸国、そして日本でもワクチン接種を急ピッチで進め、露ロックダウンの解除に続き、米国では接種者に賞品などの特典を与えたり、EU諸国では バランスシーズンに向けて、ワクチン接種済み等を条件に、圏内での国境開放政策を徐々に進めて現在に至っています。
『 接種率 と 人口あたりの死亡者数 』
では、ワクチン接種で最も大切な目的、死亡者を減らす効果だけに絞って検証すると、何パーセント以上の接種率で感染抑制に大きな効果を発揮するのか明確ではなく、逆にワクチン接種率の高さを誇った国でも新規感染者数と死亡者数の増加を記録するなど、接種率と死亡率との間に単純な相関関係は無い事を示すデータを残しています。
例えば英国では、世界各国をリードしてワクチン接種対策を進めて、感染被害を充分に抑える効果を発揮しているとして、様々な行動規制の解除を行なっていますが、現在は新規感染者数と人口あたりの死亡者数と共に 世界各国をリードする良くない状況を続けています。
また、英国と同様に、世界に先駆けて昨年末からワクチン接種を積極的に進めてきたイスラエルでは、昨年末から年初にかけて発生した、世界的に最も深刻だった被害を抑制する事に成功したとしていましたが、何故か、8月から10月にかけて、過去最悪の人口あたりの死亡者数を記録する結果を招いています。
以上の通り、「感染接種率〇〇パーセントを達成すれば、感染被害を抑えられて、国民生活や経済活動への規制は不要になる」という絶対的な法則は無く、独裁的な権力集中的な国家体制か否かとか、隣国との民族や地政学的条件や、経済基盤が観光業など人の移動の必須度、そして DNAなど免疫学的な特性などを加味した対策の結果が表れていると捉えるべきでしょう。
『 日本のワクチン接種対策と経済対策 』
ワクチン接種対策に限って言えば、日本の政策は明確な目標を示さないスタイルです。その為、その目標に対しての段階的達成指標(工程表)を示さず、結果として政治的な責任を負わないシステムだと言えます。 つまり、仮に多くの人が亡くなったとしても、死亡者数を抑えるという目標工程さえ示していないのですから、死亡した人や家族の人々に対して説明責任は負う必要が無いとも言えます。
それが端的に表された言葉が 「 ワクチン接種は、希望する国民全員に対して、〇〇月までに接種完了させる 」という言葉でしょう。実際、ワクチン接種者数は、現在、徐々に伸びを止めつつあり、グラフの通り、11月中には接種数の伸びは止まり、100人あたりの接種回数は 160回 / 100人 以内に留まる可能性も見せています。
ワクチン接種各国の接種率と人口あたりの死蔵者数に明確な相関関係が無い以上、「感染対策の為には、国民〇〇パーセント以上のワクチン接種が欠かせない」とか、「〇〇パーセント以上のワクチン接種が達成できれば、△△の規制は解除する事にします 」等と明確な政治的判断は難しいのは充分に理解できます。
しかし、世界各国の状況を併せて考慮した上で、ワクチン接種行政に関して、政府に強く望みたい事が三つあります。
一つ目は、ここで挙げた世界各国での ワクチン接種と感染状況などの情報を、国民に分かりやすい形で、特定の国の情報に偏らず、説明する機会や、国民が容易に情報収集ができる窓口を開設する事です。 それによって、特定の国の、特定の立場の人々の意見などが SNS 上などに拡散して、様々な疑念や憶測が生まれるのを防ぐ効果があると共に、同じ課題に対して試行錯誤を繰り返してる世界の一員である事をはっきりと自覚できるからです。
二つ目は、ワクチンの効果や副作用を、政府責任で各国での結果を幾つかの指標で整えて提示する事です。また、国際的なコンセンサスを得ている医療機関の研究結果を定期的に日本語訳で詳しく解説か 情報アクセス窓口を開設する事です。
日本は残念な事に、第二言語とされる英語は浸透していません。その為、多くの国民は各国政府や世界的なNGO機関が発表する情報から直接的に情報を得る事が出来ません。また、スマホ以外、PCなどで詳細情報を調べるのに適した端末を日常的に活用している人は少なく、高齢者となれば尚更です。
そして、最後の三つ目は、ワクチン接種への啓発活動を行なう事です。
一時は、ワクチン接種の話題ばかりメディアが報道した影響もあり、希望者は積極的に接種した動きはありましたが、それは決して、行政が ワクチン接種の効果や特性などを丁寧に分かりやすく、繰り返し説明した結果というよりも、緊急事態宣言などによる閉塞感や不安感から解放されたい気持ちから接種衝動に繋がったと言えます。
その為、その様な不安衝動に惑わされたくない人々の中から、ワクチンに対して不信感を抱く人が多く生まれていると考えられます。ですから、分かりやすい解説が出来る専門家の人を動員して、繰り返し、平易な用語を使い、海外での医学情報を交えて、行政の責任で啓発活動を続けるべきだと考えます。
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