日本記念日協会に登録されている記念日に「不眠の日」があった。
由緒を読むと、“日本人の約53 %がなんらかの不眠症状を持っているといわれる。しかし、その中の多くの人が対処方法や改善手段の正しい知識を有していないことから、睡眠改善薬などを手がけるエスエス製薬株式会社が制定。不眠の改善について適切な情報発信を行うとしており、日付は2 と3 で「不眠」と読む語呂合わせから2月3日を「不眠の日」とし、また、不眠の症状は一年中起こるので毎月23日も「不眠の日」とした。”・・・とある。
不眠症とは眠りたいという意思があるにもかかわらず、眠りが浅く、睡眠時間が短くなり、身体や精神に不調が現れる神経症であり、睡眠障害の一種である。つまり、不眠症とは、何らかの原因によってよく眠れないことを悩んでいる状態(=症状)を指している言葉であり、病名ではない。
フランスの英雄ナポレオンは1日に3時間しか寝なかったとなどいわれているが、相対性理論を創始したことで有名な20世紀最大の物理学者アインシュタインは10時間の睡眠が必要だったと言われているように、睡眠には個人差が大きく、短い睡眠時間でもぐっすり眠れる人と、8時間以上眠らないとだめな人がある(※:ただ、ナポレオンは癲癇持ちであり、1日3時間しか睡眠を取らなかったと言われるのは、夜間に発作が起きたからだとも言われているが・・・)。
また、寝床に入るとすぐに睡眠に入る人がいるかと思うと、寝つきが悪く、なかなか眠れない(入眠障害)人もいるが、年をとるとともに、夜中に何度も目覚める(中途覚醒)や、朝早く目が覚め再度眠ることが出来ない(早朝覚醒)人が多くいることは、よく知られているところである。そして、十分に睡眠時間はとっているものの、眠りが浅く、熟眠感が得られない(熟眠障害)の人がいるなど、現代の複雑多様なストレス社会にあっては、不眠に悩まされている人は多い。
我が家では、私など寝床に入ると、2~3分もしないうちにいつとはなしに寝入っているのだが、家人は、寝入るまでには少なくとも1時間くらいはかかると歎いている。当然、朝の寝起きが悪いのだが、家人自身は、これは若い頃からであり、それは、低血圧だからだと言っている。
このような低血圧の人には、いくら寝ても寝たりない、また、寝つきが悪いなどにより自分に必要な睡眠のとれていない人が多いらしいが、それは、脳にある睡眠中枢(中枢神経系参照)を含めた自律神経中枢に障害があり、睡眠リズム(概日リズム参照)が狂っているからだと考えられているそうだ。
寝たときにイビキ(鼾)をかく人も多くおり、イビキをかくのは「よく眠っている証拠」だ・・などと誤解している人もいるのだが、イビキは、睡眠中に、鼻や喉など息を通すところ(気道)が狭くなり、ここを無理矢理に息を通すため、気流が乱れ、鼻や喉が振動して出る音であり、睡眠中に呼吸をするための余計な労力を要しているわけだから、実際にはよく眠れない原因の1つとなっているのだ。それに、重度のひどいイビキをする場合には、睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome。SAS)、の疑いもあり、その場合には睡眠時に呼吸停止または低呼吸状態になっているため、深い睡眠はまったくとれていないのでる。
このような人は、無呼吸をくりかえすことにより夜間も交感神経が興奮しているため睡眠中も血圧が高い人が多く、その状態が日中まで引きずられ、一日中血圧が高い状態に陥っている人もいるようだ。この症状の人は、肥満の人より2倍も高血圧になりやすいというデーターがあるという。このような状態であることから血圧が高いだけでなく心臓にも負荷がいっそうかかり、さらに、心臓病や脳血管障害も引き起こす可能性があるといわれているので恐いよね~(以下参考の※1参照)。
「僕の神経衰弱の最も甚(はなはだ)しかりしは大正十年の年末なり。その時には眠りに入らんとすれば、忽ち誰かに名前を呼ばるる心ちし、飛び起きたることも少からず。又古き活動写真を見る如く、黄色き光の断片目の前に現れ、「おや」と思ひしことも度たびあり。十一年の正月、ふと僕に会ひて「死相(しさう)がある」と言ひし人ありしが、まことにそんな顔をしてをりしなるべし」・・・・・。
これは、芥川龍之介『 病中雑記』(以下参考の※2:青空文庫の『病中雑記』参照)よりの抜粋であるが、結局、芥川は、体力の衰えと「ぼんやりしたとした不安」のなか、35歳という若さで薬物自殺している。
彼は、1921(大正10)年、中国各地を旅行し、3月から7月月上旬まで大阪毎日海外視察員として中国に派遣され、この旅行後から健康を害して、その後晩年まで激しい不眠症と神経衰弱・胃腸病に悩まされていたという。そして、1927年(昭和2年)7月24日未明、『続西方の人』(以下参考の※2:青空文庫の『続西方の人』参照)を書き上げた後、致死量の睡眠薬 (青酸カリとの説も) を飲んで自殺した。
「神経衰弱」というのは戦前まで、現在に普及している「ノイローゼ」という呼称のように精神疾患の一種でとして使われていた用語であり、心身の過労による中枢神経系の刺激性衰弱の状態とされ、疲労感、頭重、頭痛、過敏、不眠、集中力低下、抑うつ感などの症状が特徴だというが、今日では他の病名、とくにうつ病と診断されることが多いそうだが、それは、うつ症状を中心症状と理解される場合が多くなったことによるものだそうである。
芥川は、煙草が大好きで、1日に180本も吸っていたといわれており、もう、これは完全なニコチン依存症というべきである。
近年喫煙が睡眠障害を引き起こすことが判ったという。タバコに含まれるニコチンにはアドレナリンの分泌を促して脳を覚醒させる働きがあるため体は活動モードに切り替わって血圧や心拍数も上がってしまう。そして、寝つきが悪くなり、眠れたとしても健全な深い眠りを得ることはできない。
つまり、タバコを吸う人は脳のための深い眠り(ノンレム睡眠)が少なく、浅い眠り(レム睡眠)のままでいる時間が長いためどんなに長く眠っていても、睡眠障害に陥りやすいそうだ(以下参考の※3を参照)。
人間の精神活動は脳の働きによって保たれているので脳が侵されるとその結果として、記憶の障害や、判断の誤り、感情の障害、幻覚や妄想の出現といった、さまざまな精神機能の障害が生ずることのなる。
晩年(1926〔大正15年〕)の芥川の作品「点鬼 簿」(以下参考の※2:青空文庫参照)では実母が狂人であることを述べており、この頃の芥川は神経衰弱(うつ症状)・・不眠症等で薬漬けの日々で幻覚症状も起きていたようだ。
眠りたいが眠れない不眠の人も居れば、逆に眠いけれども眠れなかった睡眠不足の人。また、どんなに眠くても眠ることを許されない状況や環境にある人など、現代においては、睡眠不足を解消できないと感じている人も多いだろうが、人は一体何時間眠れば良いのだろうか?
睡眠障害に取り組む専門医により組織された快眠推進委員会の公式サイトである以下参考に記載の※4:「快眠推進倶楽部」によれば、
“よく、理想の睡眠時間として「1日8時間」という数字があげられているが、これは医学的根拠があるわけではなく、多くの人の睡眠時間が6~9時間の間という統計から出された平均的な睡眠時間にすぎず、これは、あくまでも一つの目安であり、基本的には、日中眠気がなく、きちんと活動していくのに十分な睡眠時間が確保されていれば、何時間でもかまわない”という。
そして、“長く眠る人でも、脳の睡眠であるノンレム睡眠は短時間睡眠の人と変わらないとの報告もあり、睡眠は時間よりも「質」の方が重要であり、質のよい睡眠とは、目覚めがスッキリとしていて、ぐっすり眠ったという満足感が得られる眠りのことだ”・・としている。
ただ、今年・2011(平成23)年2月3日「不眠の日」に合わせ、杏林大学医学部精神神経科主任教授の古賀良彦氏を中心に、『睡眠改善委員会』が発足しているが、同HPに書かれている同委員会発足の理由を見ると、同委員会が、「慢性的な不眠ではなく、専門的な治療をする必要はないが、睡眠に悩みや不満を抱え、日常生活に影響がある。そんな状態にもかかわらず睡眠の重要性に対して認識が低い状態を示す言葉」として命名した「かくれ不眠」の人が近年増えており、全国には20~40代の約8割がこの「かくれ不眠」だというデータが出ているそうである。そのデーターとは、「不眠の日」を記念日として設定した エスエス製薬株式会社の2010年12月調べだそうだが・・・。
そのようなことから、当委員会では、「不眠の日」として制定された2月3日と毎月23日に合わせ、特設サイト上にて、「かくれ不眠」 解消のための正しい情報や知識を発信し、すこやかな眠りのための支援を行ってゆこうということらしい(以下参考の※5:「睡眠改善委員会」参照)。
又、厚生労働省が一般の人を対象に正しい健康情報をわかりやすく提供するために開設したという「e-ヘルスネット」というサイトがある。サイトのサブタイトルには、”メタポリック症候群が気になる方のための健康情報サイト”とあり、2008(平成20)年4月1日オープンとなっていることから、同年4月から始まった特定健診制度(糖尿病等の生活習慣病に関する健康診査)、すなわち、一般に言われるところのメタポ検診に併せての開設であろう。
このサイトの“情報提供”ページの最下段の“記事ランキング”の、「今、最も読まれているのは?」のところを見ると、1位、”アルコールの吸収と分解 ” 、2位”飲酒と暴力 ”に続いて3位に“不眠症”がランキングされているのを見ても、それだけ、不眠症に悩まされている人が多いのは確かなことなのだろう。
日本人、特に子供や就労者の睡眠時間は世界で最も短いと言われているようで、とりわけ女性は家事や育児の負担が大きいため男性よりもさらに睡眠時間が短く、平日・週末を問わず慢性的な寝不足状態にあると言えるようだ。
質の高い眠り・・・「快眠」は心身の休養のために欠かすことができないものだが、現代生活はシフトワークや長時間通勤、受験勉強、インターネットやゲームをしての夜型生活など、睡眠不足や睡眠障害の危険が一杯であり、睡眠不足による産業事故、慢性不眠によるうつ病や生活習慣病の悪化など、睡眠問題を放置すると日中の心身の調子にも支障をもたらすため、最も身近な生活習慣である睡眠にもっと目を向けてみる必要はあるだろう。
よく日頃の寝不足を週末に平日より長く眠ることで何とか睡眠不足の帳尻を合わせている人も多いようだが、このようなことをしても、寝る時間が毎日バラバラであると、体中の体内時計がひっきりなしに微調整されることになり、まとまったリズムを作ることが困難になり、自然で質の高い睡眠はとりにくくなってしまう。
結論的には、快眠のための生活習慣にはふたつの役割があるといい、一つは直接的な役割で、「運動」や「入浴」のように習慣そのものが直接的に快眠をもたらす場合。もう一つは間接的な役割で、良い習慣で体内時計を24時間にきっちりと調節すれば、規則正しい睡眠習慣が身に付き、快眠が得られるが、そのためには光浴(太陽など自然の光を浴びる)が必要だと言う。
それと、以下参考に記載の※6:にある加藤諦三氏のホームページにも書かれているように神経症者には、執着性格があり、完璧な結果を求める傾向があるようだ。このような非現実的な要求は外の世界についてばかりではなく、時に自分自身に対する要求についても同じであり、床につけば、すぐに寝付けないとイライラするという。「不眠を治そう」とするある欲求が、実は、不眠を作り出しているというのだ。
つまり、眠ろうと頑張るほど興奮が強まり、眠るためにするいろいろな試みが、「眠らせない」という脳の反応に結びついてしまうので、あまり、「こうしなくてはだめ」とか「あれをしてはだめ」という考え方にとらわれず、「これができた」、「これは自分にとって気持ちがいい」といったことを大切にして、自分なりのリラックス法を見つけることが大切なようだ。そのため、日々の生活でのちょっとした工夫で、快適な眠りを手に入れることができるかもしれない。加藤諦三の言葉のページなど読むと少しリラックスして眠れるようになるかもしれない。
兎に角、睡眠と社会生活および心身の健康は、互いに深く関係しあっているものであり、厚生労働省の「e-ヘルスネット」には、「快眠のためのテクニック」「快眠をもたらす生活習慣」で日常生活において出来る限り健やかな睡眠を確保するためのテクニックを紹介しているので、関心のある人は、一度見ておかれると良いだろうね。
(冒頭の画像は、睡眠改善委員会のシンボルマーク。同委員会より借用)
参考:
※1:高血圧と睡眠時無呼吸症候群(SAS)
http://www.ketuatu.jp/index.html
※2:青空文庫:作家別作品リスト:No.879〔芥川 竜之介〕
http://www.aozora.gr.jp/index_pages/person879.html
※3:睡眠・メンタルヘルス » 喫煙が睡眠障害を引き起こす
http://www.hgc-ncl.com/bbp07.php?itemid=209
※4:眠りの総合サイト:快眠推進倶楽部
http://www.kaimin.info/index.html
※5:睡眠改善委員会
http://www.brainhealth.jp/suimin/
※6:加藤諦三ホームページ
http://www.katotaizo.com/index.html
e-ヘルスネット(厚生労働省HP)
http://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/index.html
総合失調症の陰性症状とうつ病との違い
http://utu-kokufuku.org/utsubyou/sougou.html
ぐっすりネット
http://www.gussuri.net/
Yahoo!ヘルスケア
http://health.yahoo.co.jp/
Yahoo!百科事典トップ
http://100.yahoo.co.jp/
不眠症 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%8D%E7%9C%A0%E7%97%87
不眠を起こす怖い病気 前編:心の病 - [不眠・睡眠障害] All About
http://allabout.co.jp/r_health/gc/300280/
由緒を読むと、“日本人の約53 %がなんらかの不眠症状を持っているといわれる。しかし、その中の多くの人が対処方法や改善手段の正しい知識を有していないことから、睡眠改善薬などを手がけるエスエス製薬株式会社が制定。不眠の改善について適切な情報発信を行うとしており、日付は2 と3 で「不眠」と読む語呂合わせから2月3日を「不眠の日」とし、また、不眠の症状は一年中起こるので毎月23日も「不眠の日」とした。”・・・とある。
不眠症とは眠りたいという意思があるにもかかわらず、眠りが浅く、睡眠時間が短くなり、身体や精神に不調が現れる神経症であり、睡眠障害の一種である。つまり、不眠症とは、何らかの原因によってよく眠れないことを悩んでいる状態(=症状)を指している言葉であり、病名ではない。
フランスの英雄ナポレオンは1日に3時間しか寝なかったとなどいわれているが、相対性理論を創始したことで有名な20世紀最大の物理学者アインシュタインは10時間の睡眠が必要だったと言われているように、睡眠には個人差が大きく、短い睡眠時間でもぐっすり眠れる人と、8時間以上眠らないとだめな人がある(※:ただ、ナポレオンは癲癇持ちであり、1日3時間しか睡眠を取らなかったと言われるのは、夜間に発作が起きたからだとも言われているが・・・)。
また、寝床に入るとすぐに睡眠に入る人がいるかと思うと、寝つきが悪く、なかなか眠れない(入眠障害)人もいるが、年をとるとともに、夜中に何度も目覚める(中途覚醒)や、朝早く目が覚め再度眠ることが出来ない(早朝覚醒)人が多くいることは、よく知られているところである。そして、十分に睡眠時間はとっているものの、眠りが浅く、熟眠感が得られない(熟眠障害)の人がいるなど、現代の複雑多様なストレス社会にあっては、不眠に悩まされている人は多い。
我が家では、私など寝床に入ると、2~3分もしないうちにいつとはなしに寝入っているのだが、家人は、寝入るまでには少なくとも1時間くらいはかかると歎いている。当然、朝の寝起きが悪いのだが、家人自身は、これは若い頃からであり、それは、低血圧だからだと言っている。
このような低血圧の人には、いくら寝ても寝たりない、また、寝つきが悪いなどにより自分に必要な睡眠のとれていない人が多いらしいが、それは、脳にある睡眠中枢(中枢神経系参照)を含めた自律神経中枢に障害があり、睡眠リズム(概日リズム参照)が狂っているからだと考えられているそうだ。
寝たときにイビキ(鼾)をかく人も多くおり、イビキをかくのは「よく眠っている証拠」だ・・などと誤解している人もいるのだが、イビキは、睡眠中に、鼻や喉など息を通すところ(気道)が狭くなり、ここを無理矢理に息を通すため、気流が乱れ、鼻や喉が振動して出る音であり、睡眠中に呼吸をするための余計な労力を要しているわけだから、実際にはよく眠れない原因の1つとなっているのだ。それに、重度のひどいイビキをする場合には、睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome。SAS)、の疑いもあり、その場合には睡眠時に呼吸停止または低呼吸状態になっているため、深い睡眠はまったくとれていないのでる。
このような人は、無呼吸をくりかえすことにより夜間も交感神経が興奮しているため睡眠中も血圧が高い人が多く、その状態が日中まで引きずられ、一日中血圧が高い状態に陥っている人もいるようだ。この症状の人は、肥満の人より2倍も高血圧になりやすいというデーターがあるという。このような状態であることから血圧が高いだけでなく心臓にも負荷がいっそうかかり、さらに、心臓病や脳血管障害も引き起こす可能性があるといわれているので恐いよね~(以下参考の※1参照)。
「僕の神経衰弱の最も甚(はなはだ)しかりしは大正十年の年末なり。その時には眠りに入らんとすれば、忽ち誰かに名前を呼ばるる心ちし、飛び起きたることも少からず。又古き活動写真を見る如く、黄色き光の断片目の前に現れ、「おや」と思ひしことも度たびあり。十一年の正月、ふと僕に会ひて「死相(しさう)がある」と言ひし人ありしが、まことにそんな顔をしてをりしなるべし」・・・・・。
これは、芥川龍之介『 病中雑記』(以下参考の※2:青空文庫の『病中雑記』参照)よりの抜粋であるが、結局、芥川は、体力の衰えと「ぼんやりしたとした不安」のなか、35歳という若さで薬物自殺している。
彼は、1921(大正10)年、中国各地を旅行し、3月から7月月上旬まで大阪毎日海外視察員として中国に派遣され、この旅行後から健康を害して、その後晩年まで激しい不眠症と神経衰弱・胃腸病に悩まされていたという。そして、1927年(昭和2年)7月24日未明、『続西方の人』(以下参考の※2:青空文庫の『続西方の人』参照)を書き上げた後、致死量の睡眠薬 (青酸カリとの説も) を飲んで自殺した。
「神経衰弱」というのは戦前まで、現在に普及している「ノイローゼ」という呼称のように精神疾患の一種でとして使われていた用語であり、心身の過労による中枢神経系の刺激性衰弱の状態とされ、疲労感、頭重、頭痛、過敏、不眠、集中力低下、抑うつ感などの症状が特徴だというが、今日では他の病名、とくにうつ病と診断されることが多いそうだが、それは、うつ症状を中心症状と理解される場合が多くなったことによるものだそうである。
芥川は、煙草が大好きで、1日に180本も吸っていたといわれており、もう、これは完全なニコチン依存症というべきである。
近年喫煙が睡眠障害を引き起こすことが判ったという。タバコに含まれるニコチンにはアドレナリンの分泌を促して脳を覚醒させる働きがあるため体は活動モードに切り替わって血圧や心拍数も上がってしまう。そして、寝つきが悪くなり、眠れたとしても健全な深い眠りを得ることはできない。
つまり、タバコを吸う人は脳のための深い眠り(ノンレム睡眠)が少なく、浅い眠り(レム睡眠)のままでいる時間が長いためどんなに長く眠っていても、睡眠障害に陥りやすいそうだ(以下参考の※3を参照)。
人間の精神活動は脳の働きによって保たれているので脳が侵されるとその結果として、記憶の障害や、判断の誤り、感情の障害、幻覚や妄想の出現といった、さまざまな精神機能の障害が生ずることのなる。
晩年(1926〔大正15年〕)の芥川の作品「点鬼 簿」(以下参考の※2:青空文庫参照)では実母が狂人であることを述べており、この頃の芥川は神経衰弱(うつ症状)・・不眠症等で薬漬けの日々で幻覚症状も起きていたようだ。
眠りたいが眠れない不眠の人も居れば、逆に眠いけれども眠れなかった睡眠不足の人。また、どんなに眠くても眠ることを許されない状況や環境にある人など、現代においては、睡眠不足を解消できないと感じている人も多いだろうが、人は一体何時間眠れば良いのだろうか?
睡眠障害に取り組む専門医により組織された快眠推進委員会の公式サイトである以下参考に記載の※4:「快眠推進倶楽部」によれば、
“よく、理想の睡眠時間として「1日8時間」という数字があげられているが、これは医学的根拠があるわけではなく、多くの人の睡眠時間が6~9時間の間という統計から出された平均的な睡眠時間にすぎず、これは、あくまでも一つの目安であり、基本的には、日中眠気がなく、きちんと活動していくのに十分な睡眠時間が確保されていれば、何時間でもかまわない”という。
そして、“長く眠る人でも、脳の睡眠であるノンレム睡眠は短時間睡眠の人と変わらないとの報告もあり、睡眠は時間よりも「質」の方が重要であり、質のよい睡眠とは、目覚めがスッキリとしていて、ぐっすり眠ったという満足感が得られる眠りのことだ”・・としている。
ただ、今年・2011(平成23)年2月3日「不眠の日」に合わせ、杏林大学医学部精神神経科主任教授の古賀良彦氏を中心に、『睡眠改善委員会』が発足しているが、同HPに書かれている同委員会発足の理由を見ると、同委員会が、「慢性的な不眠ではなく、専門的な治療をする必要はないが、睡眠に悩みや不満を抱え、日常生活に影響がある。そんな状態にもかかわらず睡眠の重要性に対して認識が低い状態を示す言葉」として命名した「かくれ不眠」の人が近年増えており、全国には20~40代の約8割がこの「かくれ不眠」だというデータが出ているそうである。そのデーターとは、「不眠の日」を記念日として設定した エスエス製薬株式会社の2010年12月調べだそうだが・・・。
そのようなことから、当委員会では、「不眠の日」として制定された2月3日と毎月23日に合わせ、特設サイト上にて、「かくれ不眠」 解消のための正しい情報や知識を発信し、すこやかな眠りのための支援を行ってゆこうということらしい(以下参考の※5:「睡眠改善委員会」参照)。
又、厚生労働省が一般の人を対象に正しい健康情報をわかりやすく提供するために開設したという「e-ヘルスネット」というサイトがある。サイトのサブタイトルには、”メタポリック症候群が気になる方のための健康情報サイト”とあり、2008(平成20)年4月1日オープンとなっていることから、同年4月から始まった特定健診制度(糖尿病等の生活習慣病に関する健康診査)、すなわち、一般に言われるところのメタポ検診に併せての開設であろう。
このサイトの“情報提供”ページの最下段の“記事ランキング”の、「今、最も読まれているのは?」のところを見ると、1位、”アルコールの吸収と分解 ” 、2位”飲酒と暴力 ”に続いて3位に“不眠症”がランキングされているのを見ても、それだけ、不眠症に悩まされている人が多いのは確かなことなのだろう。
日本人、特に子供や就労者の睡眠時間は世界で最も短いと言われているようで、とりわけ女性は家事や育児の負担が大きいため男性よりもさらに睡眠時間が短く、平日・週末を問わず慢性的な寝不足状態にあると言えるようだ。
質の高い眠り・・・「快眠」は心身の休養のために欠かすことができないものだが、現代生活はシフトワークや長時間通勤、受験勉強、インターネットやゲームをしての夜型生活など、睡眠不足や睡眠障害の危険が一杯であり、睡眠不足による産業事故、慢性不眠によるうつ病や生活習慣病の悪化など、睡眠問題を放置すると日中の心身の調子にも支障をもたらすため、最も身近な生活習慣である睡眠にもっと目を向けてみる必要はあるだろう。
よく日頃の寝不足を週末に平日より長く眠ることで何とか睡眠不足の帳尻を合わせている人も多いようだが、このようなことをしても、寝る時間が毎日バラバラであると、体中の体内時計がひっきりなしに微調整されることになり、まとまったリズムを作ることが困難になり、自然で質の高い睡眠はとりにくくなってしまう。
結論的には、快眠のための生活習慣にはふたつの役割があるといい、一つは直接的な役割で、「運動」や「入浴」のように習慣そのものが直接的に快眠をもたらす場合。もう一つは間接的な役割で、良い習慣で体内時計を24時間にきっちりと調節すれば、規則正しい睡眠習慣が身に付き、快眠が得られるが、そのためには光浴(太陽など自然の光を浴びる)が必要だと言う。
それと、以下参考に記載の※6:にある加藤諦三氏のホームページにも書かれているように神経症者には、執着性格があり、完璧な結果を求める傾向があるようだ。このような非現実的な要求は外の世界についてばかりではなく、時に自分自身に対する要求についても同じであり、床につけば、すぐに寝付けないとイライラするという。「不眠を治そう」とするある欲求が、実は、不眠を作り出しているというのだ。
つまり、眠ろうと頑張るほど興奮が強まり、眠るためにするいろいろな試みが、「眠らせない」という脳の反応に結びついてしまうので、あまり、「こうしなくてはだめ」とか「あれをしてはだめ」という考え方にとらわれず、「これができた」、「これは自分にとって気持ちがいい」といったことを大切にして、自分なりのリラックス法を見つけることが大切なようだ。そのため、日々の生活でのちょっとした工夫で、快適な眠りを手に入れることができるかもしれない。加藤諦三の言葉のページなど読むと少しリラックスして眠れるようになるかもしれない。
兎に角、睡眠と社会生活および心身の健康は、互いに深く関係しあっているものであり、厚生労働省の「e-ヘルスネット」には、「快眠のためのテクニック」「快眠をもたらす生活習慣」で日常生活において出来る限り健やかな睡眠を確保するためのテクニックを紹介しているので、関心のある人は、一度見ておかれると良いだろうね。
(冒頭の画像は、睡眠改善委員会のシンボルマーク。同委員会より借用)
参考:
※1:高血圧と睡眠時無呼吸症候群(SAS)
http://www.ketuatu.jp/index.html
※2:青空文庫:作家別作品リスト:No.879〔芥川 竜之介〕
http://www.aozora.gr.jp/index_pages/person879.html
※3:睡眠・メンタルヘルス » 喫煙が睡眠障害を引き起こす
http://www.hgc-ncl.com/bbp07.php?itemid=209
※4:眠りの総合サイト:快眠推進倶楽部
http://www.kaimin.info/index.html
※5:睡眠改善委員会
http://www.brainhealth.jp/suimin/
※6:加藤諦三ホームページ
http://www.katotaizo.com/index.html
e-ヘルスネット(厚生労働省HP)
http://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/index.html
総合失調症の陰性症状とうつ病との違い
http://utu-kokufuku.org/utsubyou/sougou.html
ぐっすりネット
http://www.gussuri.net/
Yahoo!ヘルスケア
http://health.yahoo.co.jp/
Yahoo!百科事典トップ
http://100.yahoo.co.jp/
不眠症 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%8D%E7%9C%A0%E7%97%87
不眠を起こす怖い病気 前編:心の病 - [不眠・睡眠障害] All About
http://allabout.co.jp/r_health/gc/300280/