真実を知りたい-NO2                  林 俊嶺

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覇権の衰退で、CIAが表に出てきたか?

2023年07月24日 | 国際・政治

 最近、しばしばアメリカ中央情報局(CIA)長官の発言が報道されます。先日は、CIAバーンズ長官イギリスMI6のムーア長官が、”プーチン政権に不満を抱くロシア人たちを情報工作員などとして取り込みながら、諜報活動に生かしたい”とする考えを示した、との報道がありました。
 私は、その報道にびっくりし、それはアメリカが相当追い込まれていることを示しているのではないかと疑わざるを得ませんでした。
 プーチン政権に不満抱くロシア人を工作員として利用し、秘密工作活動によって、ロシアを混乱させ、弱体化し、あわよくばプーチン政権の転覆を図ろうということでしょうが、 今までは、そうしたことは、水面下で秘かに行われてきたと思います。
 CIAは、表向きには、世界中からアメリカの安全保障に関わる情報を収集し、分析することを任務としているということですが、現実には、違法な諜報活動や秘密工作活動も行ってきたと思います。だから、膨大な予算が割り当てられているのに、その用途など詳細情報は明らかにされていなかったり、その組織の詳細もはっきりとはわからないのだと思います。CIAの局員には諜報員だけでなく、公にできない秘密作戦非合法作戦等に従事する局員も少なくないと言われていますが、その実態はわかりません。 
 私は、CIAが自らの手の内を見せるかのように、プーチン政権に不満を抱くロシア人たちを情報工作員などとして取り込みたいという姿勢を公にすることは、アメリカが相当追い込まれていることを示しているように思うのです。言い換えれば、CIAが、なりふり構わず動くことを抑制できない状況になっているのではないか、と想像するのです。
 また、バーンズ長官もムーア長官も、いずれも、ウクライナ軍が続けている反転攻勢について「楽観している」と述べ、ロシア軍は、政権や軍内部の混乱が弱点となり今後、戦況はウクライナ側に好転する可能性があるなどと語ったと言います。でも、国際法違反が問われるクラスター爆弾の供与に踏み切らざるをえなかった現実は、決して「楽観」できるような状況ではないことを示しているように思います。なぜ、長く裏方であったCIA長官が、誤認が疑われるような戦況に関する発言をするのか、と思うのです。

 今、戦争に反対するために大事なことは、CIAが世界中で他国の内政に干渉し、他国の政権転覆にも深く関わってきた過去の事実の数々を振り返ることだと思います。
 下記は、「CIAとアメリカ 世界最大のスパイ組織の行方」矢部武(廣済堂出版)から「第三章 これがCIA”裏外交”の実態だ」の一部を抜萃したものですが、その中に、元CIA諜報員として南米で秘密工作活動に関わってきたバーン・ライオン氏の聞き捨てにしてはならない指摘があります。

宣戦布告も行われずに突然、外国の要人が暗殺されたり、建物や橋が爆破されたリ、一般市民が殺されたりする。ここでは米国が唱えている民主主義、人権、憲法などは全く存在しない。米国はいつも他の国に対して、何が正しく何が正しくないのか、”何をなすべきで何をなすべきでないのか”を告げているが、これは全くの偽善であり、ダブルスタンダードの民主主義です。言うまでもなく米国にそんな権利や資格はありません。米国はいつも民主的な側面と偽善的な側面の”二つの顔”をもっているのです

 また、元CIA諜報員のラルフ・マクギヒー氏は、

米国が支援する外国の政権は、いつも軍事独裁政権か軍隊を前面に掲げた政権、あるいは超保守主義のいずれかである

 と指摘しています。いずれも、重大な指摘だと思います。そして、CIAの歴史は、それが疑いようのない事実であることを示していると思います。

 だから、私は、CIAが何をやってきたのか、また、CIA諜報員の秘密工作活動がどんなものなのかを知らなければ、国際政治の現実はわからないし、ウクライナ戦争の現実も理解できないと思います。
 西側諸国の主要メディアは、ロシアの一方的侵略でウクライナ戦争が始まったとくり返していますが、ヤヌコビッチ政権の転覆に、CIAが深く深く関わっていたことは、さまざまな事実が示しています。バーン・ライオン氏ラルフ・マクギヒー氏の指摘したことは、現在進行形だと思います。
 
 イラン政府報道官・ジャフロミー氏の、”アメリカ は善悪を逆さに見せることにおいて先端を走っている”という言葉が忘れられません。 

 「停戦」の話が進まないのは、ロシアを孤立化させ弱体化させなければ、覇権が失われるため、アメリカがウクライナ戦争を画策したからではありませんか?
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                 第三章 これがCIA”裏外交”の実態だ

             (三)「CIAの秘密工作は宣戦布告なしの奇襲攻撃だ!」

 ”民主”と”偽善”── 米国の二つの顔
 CIAの秘密工作活動は米国政府の活動の中でもきわめて特殊であり、CIAだけに与えられた”特権”ともいうべきものだ。CIAが秘密工作を行うには米国大統領の許可を得なければならないが、誰も知らない秘密情報を握っているという強みからか、CIAは大統領を説得するのがうまい。ここに”秘密”という魔力の本当の怖さがあるのだ。
 CIAが設立された当初は、秘密工作活動を実行するにあたって、はっきりした取り決めがなかったという。CIA設立規約書には、「CIAは米国の国家安全保障に影響を与えると思われる情報の収集・分析、さらに他の諜報活動も行う役割と義務がある」(『CIA入試問題集』より)と書かれているが、もう一つはっきりしない。そこで当時のCAI幹部と政府高官との間で、この規定(条文)をどう解釈したらいいかについての話し合いが行われた。
 初代CIA長官のロスコー・ヒレンコエター氏は、トルーマン大統領の補佐官に「他の諜報活動の役割というのは秘密工作活動を含むのか?」と聞かれた。そこでヒレンコエター氏はCIAの主任顧問弁護士のローレンス・ヒューストン氏に尋ねると、彼の最初の答えは「ノー」だった。しかし、ヒューストン弁護士はこの件をもう一度慎重に検討した結果、「CIAが合法的に秘密工作活動を行うことができるのは、国家の最高指導者である米国大統領がその命令を出し、さらに議会がその秘密工作活動に必要な予算の承認をした場合だけである」との回答をした(『同』より)。こうしてCIAは秘密工作活動を行う”特権”を得たのである。
 秘密工作活動では、積極的かつ意図的に相手国の政治状況を変えたり(外国の政権転覆や要人暗殺などを含む)、相手国の政治不安や混乱を拡張して見せたりする。CIAが過去に行った秘密工作活動の具体例は前項で述べたとおりだ。
 CIAが外国の政治家、新聞社、出版社、学生運動家、労働組合のリーダーなどを買収し、その国の優秀な人材をCIAの操り人形に育て上げて政府や関係機関に送り込み、最終的にその国を乗っ取ってしまうという話はまるで映画か小説のようだ。
 元CIA諜報員として南米で数々の秘密工作活動に関わってきたバーン・ライオン氏は、「CIAの秘密工作活動は相手国に対する宣戦布告なしの奇襲攻撃のようなものだ」ときっぱり言う。
 ライオン氏は私とのインタビューで、CIAの秘密工作活動を厳しく批判した。
「宣戦布告も行われずに突然、外国の要人が暗殺されたり、建物や橋が爆破されたリ、一般市民が殺されたりする。ここでは米国が唱えている民主主義、人権、憲法などは全く存在しない。米国はいつも他の国に対して、何が正しく何が正しくないのか、”何をなすべきで何をなすべきでないのか”を告げているが、これは全くの偽善であり、ダブルスタンダードの民主主義です。言うまでもなく米国にそんな権利や資格はありません。米国はいつも民主的な側面と偽善的な側面の”二つの顔”をもっているのです」
 ライオン氏が大学を卒業してCIAに入ったのは1965年で、ベトナム戦争の真っ最中だった。徴兵制度がどんどん厳しくなり、彼も大学卒業後にベトナムの戦場に送られる可能性が出てきた。そこでどうしようか迷っているときに、大学のキャンパスでCIAのリクルーターから誘いを受けたという。
 ライオン氏は「CIAに入ればベトナム戦争に行かなくて済むし、アメリカのために役に立つこともできる」と考え、一石二鳥とばかりにCIAの誘いに乗った。
 難関とされるCIAの試験を難なくパスしたライオン氏は、それから12年間、CIA諜報員としてグアテマラ、エルサルバドル、キューバなど中南米での秘密工作活動に関わった。最初の数年間で、CIAの不法行為と米国政府の偽善をいやというほど見せつけられた。
「CIAは外国の人たちを苦しめるだけでなく、国内の米国人もずっと騙し続けてきたんです。それがわかって私はすぐにCIAを辞めようとしましたが、秘密計画がすでに進行してしまい、途中で辞められなくなってしまった。結婚に失敗してすぐに離婚しようとしても、いろいろな理由でできない場合があるでしょう。あんな感じでした」
 結局、ライオン氏は77年にCIAを去った。しかしCIAを辞めてから次の仕事を探すのに6年もかかってしまったという。
 ライオン氏は現在、アイオワ州の教会で難民やホームレスの救済活動を行っている。自分がかつて秘密工作活動を行っていた中南米諸国からの難民を救済することで、少しでも昔の償いをしようとしているのかもしれない。

”独裁政権打倒”という名目なら許されるか
 CIAの秘密工作活動は結果的に悲劇を招くケースが多いことは前にも述べた。チリのアジェンデ政権転覆にしても、同国は中南米では最も古い民主主義の歴史を持っており、CIAがあえて内政干渉する必要などなかったのではないか。ベトナムではCIAの秘密工作がきっかけで、あの悪夢のベトナム戦争へと発展させてしまったのである。
 その一方で、「もし独裁政権によって長く支配された国があり、その独裁政権を倒そうとする反対勢力にCIAが秘密工作という手段で支援する。このようなケースなら秘密工作も許されるのではないか」との主張がある。
 しかし、実際にCIAが支援するのはこれとかけ離れたケースが多い。元CIA諜報員のラルフ・マクギヒー氏は、「米国が支援する外国の政権は、いつも軍事独裁政権か軍隊を前面に掲げた政権、あるいは超保守主義のいずれかである」ときっぱり言う。
 たとえCIAの秘密工作活動が独裁政権を倒すための支援だとしても、米国に自国の民主主義を他国へ輸出したり(無理矢理押しつけたり)する権利など与えられていない。神に誓っても米国にそのような権利などないのだ。
 50年代初め、トルーマン政権下でCIA長官を務めたウォルター・スミス氏は、大統領補佐官に、
「秘密工作活動がCIAの本来の仕事である情報の収集・分析活動に障害を与えていることは明らかです。CIAが情報の収集・分析か秘密工作活動かのどちらを主体にしていくのか、いずれはっきりさせなければならないでしょう」
と述べたという。
 この後、アイゼンハワー政権下でCIA長官を務めたアレン・ダレス長官は、後者を選択することで前任者の質問に対する答えを出した。それから75年にCIAの秘密工作活動を調査するチャーチ委員会が設置されるまで、CIAは秘密工作活動をほとんどやりたい放題だった。

 膨大な秘密工作用予算
 それでは、CIAは予算の何割ぐらいを秘密工作活動に費やしているのだろうか。
    1.  ジェームス・ウルジー前CIA長官は「CIA予算の99パーセントは情報の収集や分析などにあてられ、残りを秘密工作活動に費やしている」と言ったが、私が独自に入手した情報では、CIAが秘密工作活動に費やす予算の割合は約三割から五割である。この差は一体どこからくるのか。
 米国の政府情報機関に詳しいジョン・パイク博士(全米科学者連盟)によると、CIAは冷戦後も年間数億ドルから十億ドルを秘密工作活動にに費やしているという。CIAの年間予算は約28億ドル(92年から96年までこの額でほぼ一定)だから、秘密工作活動に費やす額が数億ドルなら全体の約10パーセント、10億ドルなら約35パーセントということになり、どこをどうやっても1パーセントという数字は出てこない。

 『CAQ』誌(95年冬季号)によると、84年度から93年度までに費やされたCIAの秘密工作活動費は、
84年度=6億5900万ドル  
85年度=10億3100万ドル
86年度=8億8500万ドル
87年度=10億9000万ドル
88年度=11億2000万ドル
89年度=9億7000万ドル
90年度=10億3500万ドル
91年度=7億5500万ドル
92年度=7億1000万ドル
93年度=5億ドル

 と推定される。
 これを見ると、CIAは冷戦後も莫大な予算を秘密工作活動に費やしていることがわかる。ちなみに92年度の秘密工作活動費には、アフガニスタンへの2億ドル、アンゴラへの1000万ドルが含まれている。
 どうやら米国政府は、今後もCIAの秘密工作活動に頼った外交政策を続ける方針のようだ。94年にはハイチに対するCIAの秘密工作活動が明らかになったが、このようなケースはこれからもどんどん出てくるだろう。もしかしたら米国は、過去の秘密工作活動の失敗から何も学んでいないのかもしれない。
 CIAの秘密工作活動をどうするかについてはこの数年間、活発な議論が行われ、諜報部門と秘密工作部門をはっきり分ける案、秘密工作部門をCIAから切り離して独立させる案、秘密工作をCIAから国防総省の管轄に移す案などが出た。これらの提案は、95年2月に設置されたCIAの役割を見直す大統領特別委員会で1年余りかけて議論され、96年3月に最終的な結論が出された。これについては第七章で詳しく述べることにする。

 

 

 


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