「ウルトラ・ダラー」
手嶋龍一・著
今日のニュース。
米国が北朝鮮で偽ドル札が製造されていることを確認したと発表した。TVのニュースキャスターは「スーパー・ダラー」と紹介した。
北朝鮮が、どのような手段で、どのように精巧な偽ドル札を製造したのか。
「小説」というかたちで、その行程を掴むことができるのが、手嶋龍一氏が書いた小説「ウルトラ・ダラー」だ。
手嶋氏はNHKの元ワシントン支局長。つまり、現実に起きている事件を取材し、報道する機関にいた。
北朝鮮の偽造ドル札製造とそれに関する動きを、事実である可能性が高くても最終的に報道できるだけの裏づけがなかったり、外交上の理由で報道できない情報として掴んでおり、それを「小説」というかたちにして見せたのだと思う。
小説を読んでいる時には「一体、どこまでが事実なのだろう?」と想像しながら進む。
報道されないままだった重要な事実がようやく報道された時、読者は「あの小説に書かれていたことは、事実だったんだ」と確認することになる。そして、報道でも確認できない部分を、さらに小説から想像することになる。
報道が小説よりも遅い。
報道で伝えられる内容が、小説から読み取れる内容と比べて情報が少ない。
そうなると、「報道=裏づけが取れた事実」の持つ力が脆弱にさえ感じられる。この小説はそういう力を持った作品だと思う。
少し厳しい目で見て、付け加えるならば、小説という土俵でこの作品を見たらどうか?という点である。展開の面白さ、登場人物の描き方などの要素が、よくも悪くも小説の背景にある事実の持つ力に押され気味な印象が残ってしまう。「事実は小説よりも奇なり」なのだろう。
手嶋龍一・著
今日のニュース。
米国が北朝鮮で偽ドル札が製造されていることを確認したと発表した。TVのニュースキャスターは「スーパー・ダラー」と紹介した。
北朝鮮が、どのような手段で、どのように精巧な偽ドル札を製造したのか。
「小説」というかたちで、その行程を掴むことができるのが、手嶋龍一氏が書いた小説「ウルトラ・ダラー」だ。
手嶋氏はNHKの元ワシントン支局長。つまり、現実に起きている事件を取材し、報道する機関にいた。
北朝鮮の偽造ドル札製造とそれに関する動きを、事実である可能性が高くても最終的に報道できるだけの裏づけがなかったり、外交上の理由で報道できない情報として掴んでおり、それを「小説」というかたちにして見せたのだと思う。
小説を読んでいる時には「一体、どこまでが事実なのだろう?」と想像しながら進む。
報道されないままだった重要な事実がようやく報道された時、読者は「あの小説に書かれていたことは、事実だったんだ」と確認することになる。そして、報道でも確認できない部分を、さらに小説から想像することになる。
報道が小説よりも遅い。
報道で伝えられる内容が、小説から読み取れる内容と比べて情報が少ない。
そうなると、「報道=裏づけが取れた事実」の持つ力が脆弱にさえ感じられる。この小説はそういう力を持った作品だと思う。
少し厳しい目で見て、付け加えるならば、小説という土俵でこの作品を見たらどうか?という点である。展開の面白さ、登場人物の描き方などの要素が、よくも悪くも小説の背景にある事実の持つ力に押され気味な印象が残ってしまう。「事実は小説よりも奇なり」なのだろう。