![]() | 文章がうまくなるコピーライターの読書術(日経ビジネス人文庫 ブルー す 4-2)鈴木 康之日本経済新聞出版社このアイテムの詳細を見る |
文章は、文字、そして、言葉の組み合わせだ。
だから、文章の上手・下手は、伝えたいことを伝えるために、言葉をどう組み合わせて使うかという能力に長けているかどうかにかかっていると思っていた。
「文章がうまくなるコピーライターの読書術」は、著名なコピー作品(企業や製品の宣伝広告)や、文学作品の具体的な事例を示しながら、そのコピーの面白さや注目すべき特徴を紹介している。
掲載されているコピー作品は、読者(消費者)を惹きつける力がある。解説を読み進めると、なぜ惹きつけるのかが、「なるほどね」という感じで分かってくる。
著名なライターは、みな努力家というのもうなづけた。
私が面白かったのは、第3章「書き出しは読みだしである」のなかで、とりあげられている、太宰治の「ヴィヨンの妻」だった。
著者によると、「太宰治作品から文章教育を受けたコピーライターは多いと思う」とのこと。
しかし、私はこれまでに、太宰治作品を読んで、「コピーライターが参考にできる」などと思ったことはこれまでない。
夏目漱石の小説「坊っちゃん」などのほうが、登場人物に「赤シャツ」とあだ名をつけたりして、コピーにも活かせそうな気がしていた。
しかし、「ヴィヨンの妻」から引用された文章を読んで、読み手を惹きこむ工夫がされていることが分かり、コピーライターが参考にする理由が理解できた。
結論を急げば、文章は、文字や言葉の組み合わせだけで上手下手が決まるものではないということ。
文章は、「読む」という行為のなかで意味をなすものだが、「読む」という行為は文字面をただ追いかけているのではなく、時間性をもつ。文章の作り方しだいで、読むなかにスピード感が生まれることがあり、それが文章で描かれた世界の切迫感をつくりだすこともある。ゆっくり読むように作られた文章は、読み手にゆったりとした空気を感じさせるかもしれない。
たしか、「ヴィヨンの妻」は、松たか子が出演した映画にもなった気が。実は、まだ、読んだことがない。こんど手にとってみよう。

クリックしてね。