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自閉っ子と未来への希望 |
クリエーター情報なし | |
花風社 |
編集者としてお仕事をされている花風社の浅見淳子さんが、ご自身の体験をもとに、自閉症や発達障害のある人について、また、支援について書かれた本です。
浅見さんが障害のある方とお付き合いする中で気がついたり、考えたこと、また、書籍で伝えたいことなどがまとめられています。浅見さんのお仕事のこれまでの歩みを振り返った本といえます。
浅見さんは、お仕事を一緒にしたい、一緒にする必要がある人だから、お付き合いしていくという姿勢の方。障害の有無は、仕事上のお付き合いをする・しないとは関係ない。
お付き合いの考え方は、とても自然だと思います。
また、本書を読むと、浅見さんが失敗を経験されたり、試行錯誤されながら、お付き合いしてこられたことも伝わってきます。
私が注目した点は、次の箇所です。
「(株)たすく」の斎藤宇開先生の言葉としてご紹介されている「社会の理解には限界があるんです」という言葉。
これは、胸のなかにもやもや蓄積していたものがストンと落ちるような言葉だと思います。
浅見さんもご指摘されていることですが、一般の人から理解を得にくい、分かりにくいとされている障害について、理解を得るのはなかなか難しいと思います。
理解を得るために啓発活動をしたり、情報発信することは必要ですが、でも、それをしたからといって、すぐに理解されるかというと、おそらくそうでないとも思います。
社会のなかには「わかってくれない」人もいる。
社会の理解には限界がある。
頭の中で一応は分かっているけれど、なんとなくモヤモヤしてしまったとき、改めて、「ああ、そうでした」と、再確認するような感じがします。
そして、「社会の理解には限界がある」ということを踏まえて、だからこそ、こうしていこう。こうやってみよう。
という次の一歩が見えてくるような気がしました。
本書第7章の「新時代へ」は、この本の総括であり、浅見さんのお仕事のこれからについて書かれています。
そのなかで、
「社会は怖い場所ではない」というテーマで書かれていることは、私が障害者の就労に注目している理由と重なる点がありました。
また、「希望を記録していく」というテーマでまとめられていること、素敵です。
その人の今だけでなく、未来ごと受容するという考え方は、視野が開けます。
読みやすく、そして、読み終えた後、「なるほど」と感じさせる1冊。