夢七雑録

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11.淀橋から小滝橋

2009-11-11 22:26:35 | 神田川と支流
(86)淀橋

 次の橋は、青梅街道が通る「淀橋」である。前に来た時は未だ工事中だったが、それもどうやら終わったようだ。前の時の写真と見比べてみると、橋の欄干は新しくなったようだが、親柱などの柱は、洗って再利用したらしい。由緒ある橋だからだろう。この橋には、多くの富を得た中野長者という人物が、その財宝を埋めた際、その場所が漏れないよう、手伝った使用人をこの橋の下で殺したという伝説がある。そのため、帰りには使用人の姿が見えなくなることから、「姿見ず橋」と呼ばれていたという。この話を聞いた三代将軍家光が、不吉な橋の名に代えて「淀橋」と呼ぶよう命じたとする説もあるが、確かなことは分からない。ただ、青梅街道の交通の要所としての役割は、今も昔も変わりが無い。なお、この橋の親柱には、三重丸のような形が彫られているが、近くにあった淀橋水車を表しているのだそうである。

(87)栄橋
 江戸時代、淀橋から面影橋までの間には、小滝橋と田島橋の二つの橋しかなかった。それ以外の橋は、明治以降に架けられたものである。その多くは、昭和初期に蛇行する神田上水を緩やかな流路に改修してからの架橋だが、この場所に橋が架けられたのは、それより早く、大正時代のことであったらしい。十数年前に来た時には、川沿いに道が無く、回り道をして橋を探して歩いたが、当時は栄橋も未だ工事中で、仮橋が架かっていた。今回は川沿いに出来た遊歩道を歩いて、新しくなった「栄橋」を渡る。

(88)伏見橋
 初架橋は、「栄橋」と同じ頃だろう。橋の名は、近くにあった伏見宮別邸に由来する。橋には魚の頭のようなオブジェが置かれているが、神田川の他の場所でも見られるものである。十数年前に来た時には、既に橋も新しくなっていて、下流には遊歩道も出来ていた。この辺りの神田川は、中野区と新宿区の区境になっているが、今回は、左岸の中野区側の遊歩道、四季の道を歩く。四季折々楽しめる道というわけだ。

(89)末広橋

 「末広橋」の手前に、「桃園川緑道」の出口がある。桃園川は天沼弁天池付近を水源とする神田川の支流だが、今は暗渠化されていて、その上は緑道になっている。時間があれば歩いてみたい気もしたが、今日のところはパスして、「末広橋」を渡る。振返ると新宿の高層ビル群が見える。新宿のビル群も、そろそろ見納めである。

(90)柏橋
 「末広橋」から先は右岸を歩く。橋の下流側に、暗渠化された桃園川の開口部が見えるが、水量は思いのほか少ない。豪雨の際は大量の水が流れ込むのだろうか。神田川の右岸は新宿区で、水とみどりの散歩道と名付けられている。左岸より緑は多そうだ。やがて、斜めに架けられた「柏橋」に出る。橋の名は柏木の地名に由来するという。

(91)新開橋
 明治の終わりの頃、甲武鉄道が開通し柏木駅が開業する。現在の中央線東中野駅である。これにあわせて、駅近くの神田川に二か所の橋が架けられるが、その橋の一つを継いだのが、現在の「新開橋」ということのようだ。新しい駅を中心に新たな市街地が出来る、橋の名は、そんな意味なのだろう。

(92)万亀橋
 この橋も、柏木駅の開業の際に架けられた橋を継いだということになるが、昭和初期の河川改修の時に、位置をずらし、新たに架けられたようである。この橋の東側に玉川上水から分流した用水が流れていて、その辺りの窪地を亀窪と称したことが、橋の名の由来という。

(93)大東橋
 左岸を歩き、JRのガードを潜って、高層マンションの横を抜けると、「大東橋」に出る。最初の架橋は、昭和の初めであろうか。橋の名の由来は、東中野駅北側の旧地名である大塚に対して、東側にあるからという。橋を渡ると、神田上水公園という川沿いの公園に出る。園内は狭いが、人工の流れもあって、それなりに整備はされている。ただ、ここから先の主役は、何といっても桜である。花見時、この辺りを訪れたのは、これまで何度あっただろうか。

(94)南小滝橋

 ここに最初に架橋されたのは、大東橋と同じ頃だろう。橋の名は地名(字)に由来しているという。この辺り、上流も下流も、両岸から桜が枝を伸ばし、神田川の上は、花の雲状態になっている。桜は満開の時よりも、散り際が美しい。橋の上から眺めると、散り終えた桜が、時には流れにのり、時には澱みながら、流れ下っていくのが見える。その流れを追うように、公園の中をゆっくりと歩いて行く。

(95)亀齢橋
 初架橋は「南小滝橋」と同じ時期だろう。橋の名の由来は分からないが、「万亀橋」と同様、亀窪からきているのかも知れない。橋を渡り、川を眺め、それから左岸の桜の下を歩いて行く。途中、ジョキングをしている人とすれ違う。新宿区側は、遊歩道をウオーキングの道として推奨しているが、中野区側はジョキングの道として推奨しているらしい。このさき、川が緩やかに曲がり始めると、間もなく小滝橋に出る。

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