電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

ベートーヴェン「ピアノ三重奏曲第1番」を聴く

2010年02月22日 06時20分52秒 | -室内楽
このところ、通勤の音楽として、また入手したばかりのウォークマンによるウォーキングの音楽として、ベートーヴェンの「ピアノ三重奏曲第1番変ホ長調」を聴いております。作品1の1という、文字通り若い作曲家の出版デビューです。スタートがピアノソナタとかピアノの小品とかいうものでなくて、ヴァイオリンとチェロ、ピアノという編成の室内楽作品であることに意外性を感じますが、その作品は、予想通りにピアノが活躍する若々しくフレッシュな佳品です。演奏は、ヨゼフ・スーク(Vn)、ヨゼフ・フッフロ(Vc)、ヨゼフ・ハーラ(Pf)のスーク・トリオ。1983年、DENON による、プラハの「芸術家の家」におけるデジタル録音です。

第1楽章:アレグロ、4分の4拍子、変ホ長調、ソナタ形式。冒頭、力の入った音で始まります。第1主題の提示に続き第2主題が提示され、提示部の反復を経て展開部へ。そして第1主題と第2主題が再現されるという典型的で見事な構成です。第1主題の活発な魅力、第2主題のややメランコリックな性格など、たいへん魅力的な音楽です。
第2楽章:アダージョ・カンタービレ、4分の3拍子、変イ長調、ロンド形式。若いベートーヴェンらしい、よく歌う、すっと心に入ってくるような音楽です。冒頭のピアノ独奏に始まり、ゆったりとしたテンポでヴァイオリンが歌うと、チェロが朗々と答えます。全体に、ピアノが効果的に支えながらヴァイオリンとチェロが交互に歌い交わすようなところなどに、室内楽の魅力を存分に味わうことができます。好きですねぇ、こういう音楽。若いベートーヴェンの魅力です。
第3楽章、スケルツォ:アレグロ・アッサイ。4分の3拍子、変ホ長調。すでにメヌエットではなくスケルツォです。前楽章から曲想は一転して跳ね回るような軽やかなものへ。
第4楽章:フィナーレ、プレスト。4分の2拍子、変ホ長調、ソナタ形式。オクターブ高くなる印象的な導入に始まる、いかにも晴れやかなフィナーレ。ピアノ、ヴァイオリン、チェロが交互にカノンふうに旋律を奏するところなど、充実した音楽です。

伝記によれば、ボンからウィーンに出て、ハイドンのもとで対位法を学びながら、1793年からはヨハン・シェンクに、ハイドンがロンドンに向けて出発した1794年からはアルブレヒツベルガーにも師事し、対位法を学んでいるそうな。1795年の春まで続いたレッスンの後期には、Op.1となる三曲のピアノ三重奏曲が誕生、この変ホ長調のOp.1-1は1794年の作だそうで、作曲者24歳頃でしょうか。まさに疾風怒濤の真っ只中、強情なところもある青年ベートーヴェンの、若いエネルギーと努力を傾注した、後の膨大な作品群の堂々たるスタートです。

■スーク・トリオ盤
I=10'14" II=7'41" III=4'57" IV=7'47" total=30'39"

【追記】
ベートーヴェンのピアノ三重奏曲Op.1の記事リンクです。
(*1):ベートーヴェン「ピアノ三重奏曲第2番」を聴く~「電網郊外散歩道」
(*2):ベートーヴェン「ピアノ三重奏曲第3番」を聴く~「電網郊外散歩道」
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