電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

万城目学『プリンセス・トヨトミ』を読む

2010年02月13日 06時17分45秒 | 読書
万城目学著『プリンセス・トヨトミ』を読みました。万城目という苗字は「まきめ」と呼ぶ(*)のだそうで、本書は2009年の第141回直木賞候補作だそうです。なかなか笑える、肩の凝らないお話です。

会計検査院の調査官3名と、社団法人OJOに代表される豊臣家のプリンセスを守る大阪の男たちの戦いのお話です。会計検査院の調査官である松平と旭の優秀なエリートぶりと、対照的な鳥居のおかしみ、大阪の空堀中学の二年生、性同一性障害に悩む真田大輔と、彼を理解する行動派の橋場茶子、大輔の父親である真田幸一の朴訥な人柄など、物語としての筋立て、道具立ては十分です。

日本国の内部にある二重国家「大阪国」。その秘密は親から子へ、厳粛に伝えられる、という想定です。でもね~。でも、エントロピーは増大するのですよ。物事は乱雑なほうへ向かうのが通例です。口から先に生まれて来て、およそ秘密というものを保つことができない、しゃべりたくってしょうがない大阪人というのが、一定の比率でいると思うのですよ(^o^)/
とても多くの人々の間で、400年間保たれる秘密、という想定はかなり漫画チック。そうか、漫画ならいいのか。たしかに、劇画やアニメにはよく似合いそうな、空前絶後のストーリー展開ではあります(^o^)/

(*):「万城目学」~Wikipedia より

さて、今日は山形交響楽団のモーツァルト定期を聴きにいく予定。ホルン協奏曲には、八木さんがソロで出演の予定。楽しみです。
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SONYのウォークマンEシリーズの4GBを購入する

2010年02月12日 06時09分08秒 | コンピュータ
ステレオ初期の録音が公共の財産(パブリック・ドメイン)として公開されるようになったことを意識し(*1)、当方もデジタル音楽プレイヤーを検討することにしました。

(1)小型であること。できれば首掛け型イヤホン等に一体化して、農作業のお供にもできるものがありがたい。
(2)安価であること。当方、Linuxユーザーですので、Windows はたまにしか使いません。やっぱり不便でダメだこりゃ~となる可能性は十分にあります。すっぱり諦めがつく程度に安価であるほうがありがたい。
(3)静電気や落下などを心配しなくてよいように、ハードディスクではなくシリコンディスクのものであること。
(4)セル指揮クリーヴランド管のハイドンで40~50MBですので、容量は、まあ当面は4GBもあれば十分か。
(5)充電に専用の充電器を必要としないこと。本体が小型でも、充電器まで持ち運ぶんじゃ、面倒です。

で、手近の量販店で、あれこれ物色しました。いろいろな製品があり、目移りしましたが、当方はイヤホンを二本使える初期型ウォークマンDDのユーザーでありました(*2)ので、Walkman という呼称の懐かしさもあり、ウォークマンEシリーズの4GBのものを購入してきました。税込みで9,680円也。



パッケージから取り出し、取扱説明書を見ながら Windows パソコンの USB 端子に接続します。そういえば、自宅の WindowsXP パソコンを起動するのも久しぶりです(^_^;)>poripori
Autorun でメッセージが表示されますが、管理者権限でないとダメよ、とのことですので、ログオフして管理者になり、再ログイン。今度はオートランは動作しませんので、マイコンピュータから Walkman の Install ディレクトリ中の SetupLauncher.exe を開きます。すると、SonicStageV というツールがインストールされました。これは、比較的スムーズに終了。「終わった~」と喜び、ログオフしてユーザーで再ログインします。

さて、使う前に「ソニー製品カスタマー登録」アイコンをダブルクリックしたら、Internet Explorer じゃなきゃダメよ、と言う。え~、Firefox じゃダメなの?まるで税務署の確定申告みたい(^o^)/
仕方なく Internet Explorer 8 を立ち上げ、カスタマー登録なるものをしようとしたら、「しばらくお待ちください」と表示したままぜんぜん次に進まない。

当方は、Linux ネットブックで遊んでいましたが、いくら待っても「登録に必要な情報を自動で取得しています。完了すると、自動的に次の画面が表示されます。」のままです。なんだかなぁ(^o^;)>poripori
まあ、カスタマー登録などしなくても、別に爆発したりしないでしょうから、ここは潔く諦めます。

次に、SonicStageV を立ち上げようとしたら、「このプログラムを実行するには、コンピュータの管理者としてログオンする必要があります」だそうで。おやおや、たかだかアプリケーションを起動するのに、管理者権限を必要とするのかい。へぇ~。
仕方なく、右クリックして「別のユーザーとして実行」を選び、管理者権限を持つユーザーでログインします。これはOK。

そこで、試しに CD から取り込んでみました。フォーマットは 192kbpsのMP3形式とし、曲はベートーヴェンのピアノ三重奏曲第1番と第2番の2曲。ちゃんと曲名と楽章、アーティスト名などが日本語で表示されるのはありがたい。リッピングが終わると、ファイルをウォークマンに転送します。これも、転送条件が指定できます。まあ、初期デジタル録音に特別に高いビットレートはいらんだろう、という判断です。

カスタマー登録でもたついたおかげで充電も終わっていたので(^o^)/
転送が終わるとすぐにメディアをアンマウントし、イヤホンで再生してみました。けっこういい音で、なかなか便利です。あとは蓄えた MP3 データを順次移していけばよいのですが、これは自宅の LAN 経由とするのが一番いいのかな。こうなると、家庭内の有線及び無線のネットワークが本当に生きてきます。

(*1):ジョージ・セル指揮ベートーヴェンの交響曲第3番「英雄」がパブリック・ドメインに
(*2):音楽を携帯する~MyComputingStyle~2004年12月頃
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角川文庫にマーク・トウェインの『アーサー王宮廷のヤンキー』を発見

2010年02月11日 06時24分54秒 | -外国文学
2010年はマーク・トウェイン没後百年だそうで、各社いろいろな企画を出しているようです。そのおかげで、これまで絶版だったものが復刊されるものも出ている模様。たとえば、マーク・トウェイン『アーサー王宮廷のヤンキー』です。

写真は、左が昨年12月に、30年ぶりに改訂し刊行された、大久保博訳の角川文庫。右がこれまで愛読してきた龍口直太郎訳の創元推理文庫。こちらも、すでに絶版になって久しいものです。

角川文庫の裏表紙には、本書についてこんなふうに紹介されています。

コネチカット生まれのちゃきちゃきのヤンキー、ハンクが昏倒から目を覚ますと、そこは中世円卓の騎士たちの時代だった!科学の知識で、魔術師マーリンに対抗し、石鹸や煙草作りに始まり、ついには新聞や電話網まで整備して、次第にお人好しのアーサー王の側近としての地位を固めていくが……。奇想天外なストーリーでSF小説の元祖とも呼ばれ、ひとつの価値観に凝り固まる現代文明を痛烈に批判する幻の名作が改訂版で登場!

現代文明の批判かどうかはともかくとして、当時の社会に対して、マーク・トウェインの毒舌が炸裂したものであることは間違いないところでしょう。角川文庫版の特徴は、挿絵の線が細密に表現されていて、まだ版がつぶれていないところでしょうか。当方、訳者の違いにも興味があり、さっそく確保してしまいました。タイムスリップものの元祖に興味をお持ちの方は、絶版にならないうちに、お早めにどうぞ(^o^)/
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モーツァルト「アダージョとロンド K.617」を聴く

2010年02月10日 06時34分31秒 | -室内楽
通勤の音楽は、あいかわらず「パリ・バロック・アンサンブルの精華」から、Disc2 のモーツァルト、クヴァンツ、J.C.バッハ、ハイドンなど、前古典派の音楽を集めたアンソロジーを聴いております。



収録されている、クヴァンツの「三重奏曲ハ短調」、あるいはJ.C.バッハの「五重奏曲ニ長調」などの美しさや、ハイドンの「ロンドン・トリオ第1番」などもたいそう魅力的な音楽ですが、大雪で飛行機は飛ばないわ、ようやく飛んだ飛行機は大揺れに揺れるわで、多難な出張の帰り道の運転時などには、やっぱりモーツァルトの「アダージョとロンド K.617」のような楽しい音楽に心惹かれます。

この曲は、モーツァルトが死の半年前に、盲目のグラスハルモニカの奏者のために作曲した曲なのだそうで、オリジナルの編成はフルート、オーボエ、ヴィオラ、チェロ、グラスハルモニカというものだそうな。それがこのCDでは、グラスハルモニカ、ヴィオラ、チェロのかわりに、それぞれチェレスタ、ヴァイオリン、バスーンが使われています。そのためか、全体に響きが遊園地の音楽ふうというか、ストリート・オルゴール風のものになっています。「魔笛」の一場面に出てきそうな、あるいは映画「ビッグ」の背景音楽に使えそうな、そんな雰囲気の楽しい音楽です。

演奏は、フルートがマクサンス・ラリュー、オーボエがピエール・ピエルロ、ヴァイオリンがロベール・ジャンドル、バスーンがポール・オンニュ、チェレスタがロベール・ヴェイロン=ラクロワの5人組。1977年10月に、石橋メモリアルホールで収録された、DENON の初期デジタル録音です。幸い、高音域に妙なデジタル歪みは感じられません。たいへん鮮明で、聞きやすい音だと思います。

■パリ・バロック・アンサンブル time=9'47"
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先週末の雪が

2010年02月09日 06時14分01秒 | 季節と行事
先週末に降った雪が、自宅の作業小屋の北側の屋根から、一繋がりになって落ちてきています。なんともびっくりの光景です。
ちなみに、横から見るとこんな感じで、



近づいて内側を見ると、こんな感じ。ただし、少々暗いので、ストロボを使いました。



いやはや、まるで雪の掛布団ですなあ。

実はナイショですが、これを目にしたわが妻は、さっそく脇からパンチを繰り出して、どどっと破壊しておりましたですよ(^o^)/
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ジョージ・セル指揮ベートーヴェンの交響曲第3番「英雄」がパブリック・ドメインに

2010年02月08日 06時23分11秒 | -オーケストラ
著作権法では、保護期間が定められています。ということは、保護期間が経過したら、公共の財産となる、ということでしょうか。ずいぶん前から、ステレオ初期の録音が保護期間からはずれ、パブリック・ドメインになる時を待っておりました。お金を払う意志があっても、聴きたい曲目・演奏を自由に聴けない、レコード会社から「廃盤」という知らせを受ける悲しさを、何度も味わっています。公共の財産となれば、どこかで誰かがネット上で公開することも合法的に可能です。

ずっと前から、青空文庫をモデルに歴史的音源を公開する、Blue Sky Label(*) に注目しておりました。先日、ふとベートーヴェンの項目を眺めていたら、「交響曲第3番《英雄》ジョージ・セル指揮クリーヴランド管弦楽団、1957年2月録音」という項目を発見。

たしかに、2007年に50年なのですが、戦時加算とかなんとか、著作権法の難しいところは敬遠して、手元にあるLPやCDを大切に聴いておりました。でも、これからは、大きな声で言えます。

ジョージ・セル指揮クリーヴランド管弦楽団によるベートーヴェンの交響曲第3番「英雄」の1957年のステレオ録音は、すでにパブリック・ドメインになっています。合法的にダウンロードして、自分で聴くこともできます。どうぞ、この素晴らしい演奏を、お聴きください!

R.シュトラウス「ドンファン」「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快な悪戯」やハイドンの交響曲、ドヴォルザークの「新世界」、シューマンの「春」、レオン・フライシャーとのピアノ協奏曲なども含まれているようです。また、クリーヴランド管以外のオーケストラと共演した録音も含まれている様子。やがて1960年代のものも順次パブリック・ドメインとなって増えてくることでしょう。嬉しい限りです。

これは、私もデジタル音楽プレイヤーを真剣に検討する時期が来たようです。

(*):クラシック音楽へのおさそい~Blue Sky Label~
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小川糸『食堂かたつむり』を読む

2010年02月07日 06時10分29秒 | 読書
ポプラ社刊の単行本で、小川糸著『食堂かたつむり』を読みました。物語の始めのほうは、「恋と家財道具一式と声」を失った若い女性・倫子が、ただ一つ残った祖母の「ぬか床」をかかえて故郷に帰り着くまで。中盤は、やや生真面目過ぎるように思えるけれど料理の才能があるらしい倫子が、故郷の人々と田舎町のゆったりした環境の中で、食堂「かたつむり」を開店する話。そして終盤は、母の秘密と母娘の和解の物語です。ユーモラスなところもありますが、なかなかシリアスなところもある、若者(あるいは、そろそろ若者と呼ばれる年代を卒業しつつある世代)向けの童話なのかな、と感じました。

もうすぐ映画化される(もうされた?)らしいです。チャンスがあればぜひ映画も観たいと思います。いいお話なので、あまり野暮天なつっこみをしてもしょうがないのですが、楽しみながらちゃんと読んだ証に、中年オジサン的なつっこみを少々。

(1)経済的な裏付けは合理性があるか。
ほとんど無一文になったわりには、店舗の意匠を実現するにはお金がかかるはず。母親から高利で借金したことになっていますが、田舎町のスナックのママは、そんなにお金を持っているのでしょうか。

お手洗は、壁一面タイル貼りにし、私が、色違いのタイルを貼り合わせて鳥のカップルの模様を作った。プリミティブな感じがあって、即興で作ったわりにはかなりいい仕上りになった。いくら料理が良くても、お手洗が汚いとすべてが台無しになってしまう。他の所は切り詰めても、お手洗いだけにはお金をかけることにして、最新式のシャワー付きトイレを購入した。壁にちいさな窓も取り付け、とても安らげる空間になった。

うーん、水まわりって、案外予算オーバーしやすいところなんですけど(^o^;)>
1日1組のお客しか受け付けない食堂「かたつむり」の売上げは、@数千円×25日としても、たぶん月に10万円はないと思われます。内装や道具など借金の返済に加え、光熱費だけでなく凝って作るさまざまな材料費などもあり、現実に店舗と本人の生活を維持していくのはけっこう難しいのでは(^o^)/

(2)主人公を置き去りにしたインド人の恋人は、なぜ去っていったのか。
数百万というお金も家財道具も、みんな黙って持ち去るという仕打ちは、愛情よりもむしろ憎しみを感じさせます。逆にいえば、倫子はなぜそれほど憎まれるようになってしまったのかが、よくわからない。ふと、思い当たりました。この物語というより童話は、一人称で、主人公の視点から書かれています。もしかするとこれは主人公のやや過敏な見方であって、真実はもっと相対的なものかもしれません。

(3)生命を食べることについて。
初めて生物学を学んだとき、最初の時間に習ったのは、独立栄養生物と従属栄養生物という区分でした。ヒトを含む動物はみな従属栄養生物であり、他の生物を食べることによって生きていくことができる。それは、動物という存在そのものがそうなのである、という認識に、ある意味、感動したものでした。この認識は、この物語(童話)の主題と、とても近いものです。

(4)母娘の和解について。
始まりは不幸を絵に描いたような事件ですが、その後は悪意の人間が登場するエピソードは一件だけ。娘が母親と和解するのは、母親の人生を理解できる年齢になったことの証というべきでしょう。ただし、水鉄砲には唖然。水道水中で精子が無事に生存できるのかどうか、たいへん疑問です。ありえないのでは(^o^)/
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アル・ゴア『不都合な真実』を読む

2010年02月06日 06時22分29秒 | -ノンフィクション
かつて、クリントン政権時代に副大統領だったアル・ゴア氏にノーベル平和賞というニュースに接したとき、世間知らずの当方は、正直きょとんとしました。同時に受賞した IPCC という英四文字の機関にいたっては、なんじゃそりゃ?という状態でした。地球温暖化という語は知っていましたが、身近なローカル気候にそれほどの変化を感じていないこともあて、いたってのんきにかまえておりました。

さすがに IPCC が国連の気候変動に関する政府間パネルの略称であること、その第四次報告書が、ノーベル平和賞受賞の根拠となったことなどは、その後の報道で知ることとなりましたが、ジャーナリズムや出版界における懐疑論の影響などもあって、ほんとうに近年まで無関心でありました。

ところが、IPCC の第四次報告書の第5章「海」の執筆者が、本県出身であり知人でもある某氏であることを知り、また同氏の講演などを聴いて、認識をあらためることとなりました。氏の話によれば、IPCC というのは、世界中の科学者が集まっている組織であるために、けっこう保守的なのだそうです。氏が執筆した第5章「海」の原稿は、世界中の専門の科学者に事前に査読を依頼し、数百のコメントをもらったそうです。そして、その一つ一つについて、データの裏付けをとり、統計的な確からしさが95%というレベルにしているとのこと。したがって、いろいろ部分的な疑問が出されたとしても、根本的な結論は揺るがないそうです。

なるほどそういうものかと認識不足を自覚し、著名な本書を手にして、昨年の暮れから一ヶ月かかって、じっくりと読んでみました。いや、興味深い内容でした。ゴア氏が大学生時代、ロジャー・レヴェル教授の下で学んだ個人的な記憶や、家庭的な事情なども織りまぜながら、米国民に「不都合な真実」を知らせたいとする主張が、よく理解できました。と同時に、これは米国の石油メジャーにとってはまさに禁書だろうなあと思いましたし、クリントン後を決める大統領選で、ゴア対ブッシュがなぜあれだけの大接戦を演じたのか、また 9.11 後にアフガニスタンからイラクへ、唐突に鉾先を転じたのか、まるで国際政治小説を絵に描いたようなできごとの連続に、ビックリしてしまった次第。

まあ、当方は人畜無害の世間知らずですので、声高に天下を論ずることは似合いませんし、もともと省エネルギー、省資源志向はしみついておりますので、従来どおり地産地消のささやかな生活を営みながら、「不都合な真実」にも目をむけていきたいものだと思っております(^o^)/
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ヴィヴァルディ「ソナタ イ短調 RV86,F.X No.1」を聴く

2010年02月05日 06時13分40秒 | -室内楽
激しくスリップする危険な雪道は、慎重な運転が求められますが、不必要に恐怖心にかられると、通行の流れを阻害し、かえって危険運転を誘発したりします。そんな季節の通勤には、不思議に屈託のない音楽がよく似合ったりします。神経はピンと研ぎ澄ましているのですが、雪国の自動車通勤族である当方は、「パリ・バロック・アンサンブルの精華」などというCDで平常心を保っているのかもしれません。中でも、ヴィヴァルディの「ソナタ イ短調 RV86, F.X No.1~フルート、バスーン、通奏低音(クラヴサン)のための」が、いたく気に入ってしまいました。フルートの軽やかさ、通奏低音の名人芸はもちろんですが、いや~、このバスーンの音色と動き!タイヤスリップも思わず片手でコントロールしてしまうほどの楽しさ!

第1楽章:ラルゴ。短調の曲の美しさはこう書くんだよ、と言わんばかりの、緩やかですが明暗のはっきりした音楽です。
第2楽章:アレグロ。澄んだ音色のフルートが駆けめぐると、リズム感抜群のお相撲さんが軽やかにステップを踏むような、ユーモラスなバスーンの動きが楽しい。
第3楽章:ラルゴ・カンタービレ。ゆったり、のびやかな旋律が広がります。フルートが、いいですねえ。
第4楽章:アレグロ・モルト。クラヴサンも積極的に出てきます。三者が緊密にアンサンブルを展開。これは楽しい。

これまで、ファゴットとバスーンは名前の呼び方が違うだけで、同じ楽器だと思っておりましたが、先ごろ映画「のだめカンタービレ最終楽章・前編」を観て、二つの楽器の違いを認識しました。ルー・マルレ・オーケストラのオーディションにやってきたバスーン奏者、ファゴットにしたら、という意見にも耳を貸しません。バスーンの音色に惚れ込んでいるようでした。このCDでバスーンを吹いているのは、往年の名手、ポール・オンニュ。見事なものです。もしかしたら、マルレ・オケのバスーン奏者の彼も、オンニュのファンだったのかな?
ちなみにフルートはマクサンス・ラリュー、通奏低音のクラヴサンはロベール・ヴェイロン=ラクロワ。3人ともパリ音楽院時代からの仲間だそうで、いずれも一世を風靡した名手たちの、50代前半の頃です。

1974年6月23~4日、武蔵野音楽大学ベートーヴェン・ホールでデジタル録音されたもの。DENON PCM 録音の最初期にあたります。クレスト1000シリーズ中の2枚組 COCO-70913~4 のうちの Disc-1 に収録されています。収録されているテレマン、クープラン、J.S.バッハなどの音楽も、たいへん魅力的なものばかりです。

■パリ・バロック・アンサンブル
I=3'30" II=2'43" III=2'25" IV=1'55 total=10'33"

しばらく県外出張です。今回はパソコンを持参できませんので、記事は日時予約投稿としますが、コメントの返事は少々遅れるかもしれません。
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RSSリーダーとブックマークに登録したブログサイト数

2010年02月04日 06時19分30秒 | コンピュータ
ブックマークには、多くのWEBサイトが登録してあります。ずっと以前、Windows95 の時代から、Netscape のブックマークを export して、Mozzilla や Firefox にインポートし、蓄積してきました。こういう継続性は、たいへんありがたいものです。ただ、さすがに数が多くなってきたので、近年は RSS を提供しているものについては Web 版の goo RSS リーダーに登録しています。

ところで、当方のブックマーク、あるいは RSS リーダーに登録されたブログのサイト数は、どんな勢力分布になっているのだろう。ふと思い立って、調べてみました。その結果、

第1位 goo ブログ 33
第2位 ココログ  14
第3位 excite    9
第4位 ameblo   8
第5位 fc2     7

以下、so-net、livedoor、hatena、seasaa、dion、jugem、yahoo、rakuten という具合に続きます。大学など、独自ドメインもあります。

コメントやトラックバックのやりとりがきっかけで定期閲覧するようになったものが多いわけですが、goo ブログが多いのは、一度 goo ブログのトップでアホ猫記事が紹介された影響なのでしょうか。
ココログのほうは、古参ユーザーが多く、パソコン通信の時代の電子会議室(フォーラム)のように、じっくりと書き込まれた内容が多いように感じます。

いっぽう、アメブロのほうは、動画の貼付に特色があり、全体に重くなりがちです。そのため、単身赴任先で使用している、Celeron(400MHz)+320MB-RAM というような非力なマシン環境では、常時閲覧する対象からは外さざるを得ません。せいぜい、自宅に戻り、hp の新しいマシン環境で、一週間分をまとめて見るような利用になってしまいます。このあたり、痛し痒しです。
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試してみてわかったGoogleとBingの検索結果について

2010年02月03日 06時21分57秒 | コンピュータ
ウェブの利用のためには、検索エンジンは不可欠の存在です。当方、もっぱら Google を利用しておりますが、先年、鳴り物入りで登場した某社の検索エンジン Bing の実力はどうなのだろうと、当「電網郊外散歩道」の記事を例に、試してみることにしました。もちろん、Bing の利用はまったくの「初めて」です。結果の整理方法は、次のように比較することとしました。

■検索キーワード
Google: 検索結果~ 順位と表示されたページのタイトル
Bing: 検索結果~ 順位と表示されたページのタイトル

さて、結果はいかに。順位はかなり変動するもので、以下は、1月下旬における表示結果です。



まずは、おおむね順当なところから。

■電網郊外散歩道
Google: 第1位。第2位以下も、新しいページが登録されている。
Bing: 第1位。ただし、第2位以下は数年前の古いページが多い。「らびおがゆくVol.2」など。

■ボロディン 弦楽四重奏曲第2番
Google: 第6位。「愛妻に捧げる夜想曲~ボロディン『弦楽四重奏曲第2番』を聴く」。上位には通販サイトが来ている。ただし、「第2番」をつけないと第2位にくるのは不思議。
Bing: 第2位。「愛妻に捧げる夜想曲~ボロディン『弦楽四重奏曲第2番』を聴く」。Amazonの次。

■藤沢周平 山桜
Google: 第5位。「小室等さんの好きな藤沢周平作品『山桜』を読む」。
Bing: 第11位。「小室等さんの好きな藤沢周平作品『山桜』を読む」。

■ドヴォルザーク チェロ協奏曲 ライスター
Google: 第1位。「カール・ライスターの『一番印象深かった録音』」。
Bing: 第5位。「カール・ライスターの『一番印象深かった録音』」。

■ネコ枕
Google: 第17位。「ネコ枕。」
Bing: 第3位。「ネコ枕。」

このように、数年前の古い記事に関しては、順位は若干違いますが、同一のページが表示され、まずは順当なところです。むしろ、通販ページなどがうるさい点を考慮すると、検索結果がやや古い点に目をつぶれば、Bing のノイズの少なさは美点かもしれません。

ところが、比較的新しい記事、あるいはまぎらわしい記事ではどうかと、次のような比較をすると、事態は少々変わってきます。

■Dell Ubuntu ウィンドウ 最大化
Google: 第2位。「DellのUbuntuネットブックにおけるウィンドウの強制的最大化について」。解決方法が第1位に来ている。
Bing: 第1位。「DellのネットブックInspironMini10vでは、何がウィンドウを最大化するのか」。問題提起が第1位に来ている。後日もう一度試したら、解決方法が第1位に来るようになっていました。

■Windows Vista 消してしまい Ubuntu MP3 gstreamer
Google: 第1位。「Ubuntu Linux でコンセルトヘボウのMP3を聴く」。
Bing: 第2位。ただし、単一の記事ではなく、「コンピュータ - 電網郊外散歩道」カテゴリー全部を表示。

■藤沢周平 用心棒日月抄 凶刃
Google: 第4位。「藤沢周平『用心棒日月抄~凶刃』を読む」。
Bing: 第30位。「藤沢周平『用心棒日月抄』を読む」。

このように、検索結果が違っています。明らかに、Google のほうが的確です。Bing のほうは、定期的に巡回してインデックス登録しているというよりも、一度検索したサイトを後追いでインデックス登録しているような感じです。後発の宿命か、クローラー(ロボット・プログラム)の定期的な巡回が、最近のブログ記事の増加速度に追いついていないのでしょうか。このへんは、先発のメリットを生かすとともに、Google の Linux サーバ群の桁外れの能力の威力なのでしょう。

通販サイトが上位に来てしまうという欠点はありますが、「-在庫 -送料 -商取引」という禁止ワードを併記すれば、こうした通販サイトはかなり除外できる点を考慮すると、当方の検索エンジン利用は、やっぱり Google になるようです。
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館神龍彦『手帳進化論』を読む

2010年02月02日 06時19分53秒 | 手帳文具書斎
PHPビジネス新書で、館神龍彦著『手帳進化論』を読みました。あなただけの「最強の一冊」の選び方・作り方、という副題がついておりますが、手帳歴40年の当方には、実用的な意味よりも手帳というものの見方が興味深いと感じました。日本の手帳は、明治期の大蔵省の懐中日記と旧日本軍の軍隊手帳に大きく影響されているとし、会社という共同体の時間感覚を共有する象徴として年玉手帳を位置づけます。終身雇用制の崩壊によって年玉手帳が廃れ、システム手帳のブームもあって、共同体を背負わない、個人で購入する各種手帳が普及したと考えるものです。こういう見方は、著者が初めて提唱したものではないかと思います。

1980年代後半のシステム手帳流行期には、アスキー社から刊行されていたシステム手帳専門の雑誌『リフィル通信』も購入しておりました。また近年は、著者の前著『システム手帳新入門!』(岩波アクティブ新書)も興味深く読んでおり、綴じ手帳からシステム手帳に戻す際にも参考にしております。

実は、当方、著者のブログ(*)のごく初期に、あまりシャープでないコメントを書き込んだことがありましたが、残念ながらリプライはいただけなかったと記憶しています。たしかに、焦点のぼけたコメントだったなと反省して、以後、著者のブログでは読むだけの読者に徹しております(^o^;)>poripori

(*):館神blog

【追記】
著者から、『リフィル通信』刊行時には、まだアスキー社にいなかったとのコメントをいただきましたので、前著『システム手帳新入門!』に関する内容に変更しました。
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山形弦楽四重奏団第34回定期演奏会を聴く(2)

2010年02月01日 19時11分15秒 | -室内楽
山形弦楽四重奏団第34回定期演奏会、休憩後に、プロコフィエフの弦楽四重奏曲第1番が始まります。これは、今朝の記事「山形弦楽四重奏団第34回定期演奏会を聴く(1)」の続きです。

第1楽章:アレグロ。モダニズム~新古典主義時代のプロコフィエフにしては、強烈なたたきつけるような音楽ではありません。でも、神秘的な感じはよく出ています。意表をつく跳躍、すぱっと鋭角的な変化は、やっぱりプロコフィエフです。
第2楽章:アンダンテ~ヴィヴァーチェ。始まりはヴィオラとチェロから。ヴァイオリンが入り、緊張感のあるゆっくりした音楽になります。やがてテンポが速くなり、動きのある音楽に。不安感や焦燥感を感じさせる中に、チェロのピツィカートが実にタイミング良く入ります。このリズム感も、プロコフィエフのもので、ヴィオラの旋律が魅力的です。
第3楽章:アンダンテ。懐かしさを感じさせるロシアの子守歌のような旋律から。プロコフィエフらしい抒情性です。硬質の抒情。この楽章は、後年のプロコフィエフを思わせるものがあります。

作曲されたのは、1931年、米国議会図書館からの委嘱によって、とありますので、1891年生まれのプロコフィエフはちょうど40歳、不惑とはいうものの、不安定な惑いの時期だったのでしょう。わがままいっぱいに育った10代を経て、20代半ばで祖国を出て、40代半ばまで米国やヨーロッパで暮らし、作曲では認められつつ、演奏家としては必ずしも成功していない。このまま自分は年老いていくのだろうかという焦りや漂泊感が、政治体制の変化で不安もあるが懐かしくもある故国ロシアへの帰還という願望とないまぜになり、帰るに帰れなかったマルティヌーにも通じる、悩み、悲嘆や切迫感を出しているのかもしれません。



アンコールは、ハイドンの弦楽四重奏曲Op.76-1から、メヌエットを。あ~、やっぱりハイドンはいいなあ。カルテットの原点だなあ。当方、今回は事前予習なし。ぶっつけ本番でした。おかげで、音楽の外形だけ、上っ面をなでただけに終わってしまいましたが、それでもプロコフィエフの弦楽四重奏曲などに、あらためて興味を持ちました。これは、後でCDでじっくり聴いてみなければ!

また、今回のプログラムは、ハイドンを除けばきわめてマニアックな、近現代中心のものでした。プロコフィエフ好きの当方はともかくとして、この冬空の下、お客さんが入るのかなと心配しましたが、トップの写真のように、なんと約80名の来場者でした。これは、固定客数と見ていいでしょう。山形市の人口は20万人、周辺人口をあわせてもたかだか30万人程度の地方都市で、近現代中心の室内楽演奏会に80人の聴衆が毎回集まる。これは、演奏家と聴衆の両方の幸福な関係がなければ不可能なことです。室内楽専門の音楽ジャーナリスト、やくぺん先生(*)の言い方をちょいと真似るならば、「すごいぞ、山形!」なのかもしれません。

そして、次回の第35回定期演奏会は、なんと、チラシもカラー印刷です!
プログラムは、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲第12番、尾崎宗吉「小弦楽四重奏曲Op.1」、ハイドンの弦楽四重奏曲Op.74-2、4月20日(火)、18:45~、文翔館議場ホール、です。これもまた、楽しみです。



(*):やくぺん先生うわの空~音楽ジャーナリスト渡辺和さんのブログ
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山形弦楽四重奏団第34回定期演奏会を聴く(1)

2010年02月01日 06時30分42秒 | -室内楽
1月最後の日曜日、31日の夜6時半から、山形市の文翔館議場ホールにて、山形弦楽四重奏団の第34回定期演奏会。午後、夕方に近づいてから親戚の親子が来訪し、大学入試センター試験の結果などを聞きました。まずまずの成績だったようで、第一志望の地元大学に出願する予定とのこと、励ましてやりました。

そんなこんなで、出発がやや出遅れて、会場に到着した時には、アンサンブルともズのプレ・コンサートが始まっておりました。本日は、ハイドンによる「ヴァイオリンとヴィオラのための6つのソナタ」の第5番。茂木智子さん(Vn)と田中知子さん(Va)のお二人です。

開演前のプレトーク、今回はヴィオラの倉田さんです。あれ?私が倉田さんの生の声を聞くのは、もしかしたら初めてかもしれません。テノールよりはむしろハイ・バリトンとでもいうのでしょうか、男声としてはやや高めの声域の、少しハスキーな、いい声です。
ハイドンの作品50という曲は、モーツァルトから献呈されたハイドン・セットに刺激を受けて、四人が対等の立場で演奏する緊密な音楽を志向して作られるようになった、出発点としての作品とのこと。もう一つのプロコフィエフは、アメリカの議会図書館から委嘱を受けて作曲されたものだそうで、ロシアに帰ろうかどうしようかと悩んでいた時期のものだそうです。この二曲の間に、林光「ラメント(悲の曲)」とヴォルフの「イタリアのセレナーデ」が入るとのこと。赤いネクタイの倉田さん、なかなか弁舌さわやかです。



いよいよ開演。第1Vnの中島さん、Vlaの倉田さん、Vcの茂木さんは黒のダークスーツにネクタイ姿ですが、中島さんと茂木さんのネクタイの色と柄までは確認できず。第2Vnの駒込さんは、春の青空のような目に鮮やかなドレスです。左から、第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、ヴィオラ、そして右端にチェロが位置します。

第1曲、ハイドンの弦楽四重奏曲ヘ長調 Op.50-5「夢」。
第1楽章:アレグロ・モデラート。明るく快活な、いつものハイドンだけれど。そういえば、初期の曲は第1ヴァイオリン主導型のものが多かったかもしれない。第2楽章:ポコ・アダージョ。4人のハーモニーで始まります。第1ヴァイオリンを引き立てたり刻みを引き受けるだけではなく、4人で響きを作ります。チェロが深くていい音を奏でます。第3楽章:テンポ・ディ・メヌエット:アレグレット。第1ヴァイオリンの旋律に付けて、三つのパートが動きますが、単純ではありません。ここでもチェロがいい音を聴かせます。第4楽章:フィナーレ、ヴィヴァーチェ。第1ヴァイオリンが、スラーで面白い音を出します。ウィー、ホィー、ツィー、みたいな。ほどよく陰影も激しさもあり、活気あるフィナーレです。なかなか面白い曲です。

続いて第2曲、林光「ラメント(悲の曲)」。2000年の2月に、ニューヨークで初演された曲だそうです。出だし、いい響きです。伝統的なハーモニーではないけれど、引き裂かれたような現代で、調和を求めるとすればこんな響きになるのでしょうか。第1VnやVcが時おり印象的な強いフレーズを奏します。さらにVlaも。これにVcが絡むと、2つのVnが対抗するように。やがて四人の響きが探られます。第1Vnの長い持続音に第2VnとVaが金縛りにあったように加わり、Vcが入ると音楽は動きを再開します。第1Vnが長い持続音、第2Vnがピツィカート、その間VaとVcは沈黙します。4人の響きが再現され、Vcの持続音のうちに3人のピツィカート、そして2本のVnの持続する音が弱まる中で、VaとVcのピツィカートが静かに曲を閉じます。初めて聴きましたが、緊張感に満ちた、静かな、しかし強い印象を与える音楽です。

前半の休憩前にもう一曲、ヴォルフの「イタリアのセレナード」です。もっぱらレコードやCDで音楽に接してきたためか、小品に接する機会が少ない傾向が否めません。有名な作品であるにもかかわらず、当方、ほとんど初めて聴くようなものです。19世紀末のウィーンに現れた歌曲の作家でブラームス批判の急先鋒でもあった、フーゴー・ヴォルフの作品。全体に p や pp が多いようですが、時代がそうなのか、たいへんロマンティックな響きと感じます。未完の弦楽四重奏曲のある楽章を取り出したものというよりは、交響曲に対する交響詩のように、単一楽章で起承転結を持っている音楽のようです。



写真は、後方から見た休憩時の議場ホールの内部です。休憩のあとに、今回のメインプログラム、プロコフィエフの弦楽四重奏曲第1番があるのですが、時間切れです。続きはまた夜に。
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