徒然なか話

誰も聞いてくれないおやじのしょうもない話

土手券たちの芸

2021-02-12 23:17:25 | 音楽芸能
 明治から昭和初期にかけて、熊本のお座敷文化を支えた「町芸者」たちは最初、寺原町の坪井川土手付近に住んでいたので「土手券」と呼ばれた。わが町の文化史の一つである「土手券」について数年前から史料を探しているのだが見つからない。何かその痕跡でもとお年寄りのお話を聞いて回ったりしているが、さすがにご存じの方はもういらっしゃらないようだ。
 「土手券」たちがどんな芸を披露していたのか、当時の芸能関係資料などから推測するしかないが、昭和10年に水前寺北郊で開催された「新興熊本大博覧会」の公式ガイドブックに、熊本の民謡として次の8曲が歌詞付きで紹介されている。

 火の国小唄/五十四万石/田原坂/おてもやん/キンキラキン/東雲節/新興熊本博覧会会歌/新興熊本小唄

 最後の2曲は博覧会用に作ったものだろうが、前の6曲が当時熊本で最も唄われていた曲だと考えられる。従って、「土手券」たちのレパートリーにも含まれていたと思われる。今日は下の2曲を聴いてみた。


東雲節


キンキラキン

古式泳法と水球

2021-02-11 23:12:21 | スポーツ一般
 ブログを通じていろいろ勉強させていただいている津々堂さんが先日の記事に、肥後古式泳法・小堀流踏水術の六代師範である猿木宗那のご親戚筋であることを書かれていた。
 昭和7年(1932)に済々黌の学校創立50周年記念事業の一つとして建設されたプールの竣工式では小堀流踏水術の猿木師範らによる游ぎ初めが行われたという記録が残っているので、この猿木師範と六代師範猿木宗那との関係についてお尋ねした。おそらく孫にあたるだろうというご返事とともに、踏水術は水球に何かしらお手本になったのだろうかというご質問をいただいた。
 小堀流踏水術と水球との関係は何度かブログネタにしたことを思い出し、それらの抜粋をまとめてみた。(右の写真はベルリン大会時の古荘次平さん)

 済々黌水球部の創設に尽力された古荘次平さん(熊本商業→早稲田大学)は、日本水球が五輪初参加したベルリン大会に、ゴールキーパーとして活躍された方だが、名もない平泳ぎの選手から水球のゴールーキーパーに転じ、猛練習を重ねてオリンピックの日本代表に登りつめた要因の一つは、熊本伝統の小堀流踏水術の心得があったからだと言われている。
 また、済々黌水球部の部長として、何度も全国制覇に導かれた平田忠彦先生は、ご自身は大学時代に箱根駅伝を走ったという陸上競技がご専門だった。しかし、少年時代の夏は一日中、白川八幡淵で泳いでいたという水泳の名手でもあり、小堀流踏水術の達人でもあった。小堀流の特長は踏水術、つまり立泳ぎにある。その技術は今日の水球やシンクロの基礎技術である「巻足」と全く同じであり、その小堀流踏水術が済々黌水球部が他校に先駆けて全国の強豪チームとなった要因の一つではないかといわれている。
 日本で踏水術を含む古式泳法が確立されたのは江戸中期、18世紀初頭といわれているのに対し、水球という競技がイギリスで始められたのは19世紀の後半で、今日と同じような基礎技術が確立したのは19世紀末頃といわれている。欧米の水泳の歴史を調べても、日本の古式泳法のような水泳技術があったことは見出せないので、「巻足」の技術を覚えたのは日本の方が200年ほど早かったと思われる。
 この「巻足」のことを英語で「トレディング・ウォーター」、通称は「エッグ・ビーター」という。「エッグ・ビーター」というのは、もともとボウルに入れたなま卵をかき混ぜる、棒の先に針金が何本も丸められたあのお馴染みの調理器具のことだ。つまり、巻足の足のまわし方が「エッグ・ビーター」で卵をかき混ぜる動作を連想させることから、こう呼ばれるようになったらしい。

 済々黌水球部OBで、ミュンヘン五輪日本代表の木村隆さんからコメントが寄せられましたので、本文にも追記させていただきました。
 
43年卒業の木村です。私は小学校4年まで泳げませんでした。そこで母は当時、夏休みの間熊大プールで行われていた小堀流の教室に通わせてくれました。その後、竜南中で平泳ぎ・済済黌で水球をやる事になりました。1972年のミュンヘンオリンピックに出場出来たルーツは小堀流にあると思っています。


かつて小堀流踏水術の水練場でもあった白川八幡淵


巻足の技術

石牟礼道子さん没後3年

2021-02-10 19:21:19 | 文芸
 今日(2月10日)は石牟礼道子さんが亡くなられて3年になります。昨年、石牟礼道子資料保存会が「不知火忌」としてイベントを開催されましたが、今年はコロナ感染防止のためイベント開催を断念、かわりに動画を制作し、YouTubeで公開されています。
 また、石牟礼さんの遺作となった能「沖宮(おきのみや)」が2018年に熊本、京都、東京で公演が行われましたが、今年6月12日に京都での再演に向け、現在クラウドファンディングが行われています。ライブ配信も計画されているそうです。
 世界中の人々がコロナ禍に苦しむ今だからこそ、石牟礼さんが生命界の復活を願って書き上げた新作能「沖宮」を再見したいと思っています。


能「沖宮」


不知火忌2021

最後の運転免許更新?

2021-02-09 18:57:20 | 
 今日は運転免許更新をしに熊本県運転免許センターへ行った。昭和42年(1967)10月に初めて運転免許を取得して今まで何回更新したのだろう。最近は、そろそろ免許返納かな、と考えることもあるので、今回が最後の更新になるかもしれない。
 免許センターでは、70歳以上の更新は分けられていたので、とてもスムーズに進み、短時間で免許証をもらうことができた。天気も良かったので、帰りには菊陽町辛川の農道に車を停め、しばし阿蘇山の雄大な景色を眺め、心穏やかなひと時を過ごした。


菊陽町辛川の畑から阿蘇山を望む

八千代座とちんこ芝居

2021-02-08 19:53:13 | 音楽芸能
 FB友の小路永こずえさんのフェイスブックに、「大代寅次郎 水絵に見る山鹿の懐かしい風景展」が山鹿市の八千代座交流施設で開催されているという記事が投稿されていた。大好きな画集なのでできれば見に行きたい。
 ところで、八千代座は今年、開業110年を迎える。10年前、開業100周年の2010年6月に発行された「広報やまが」に前・山鹿市立博物館館長・木村理郎さんの、開業100周年記念記事が掲載されている。そこには開業間もない八千代座を華やかに彩った森峯吉一座の少女歌舞伎(ちんこ芝居)のことが書かれている。(下記参照)
 今日でいう「会いに行けるアイドル」たちを生んだ「ちんこ芝居」はいったいどんな演目を演じていたのだろう。木村理郎さんにお尋ねしたこともあるのだが、どうも詳しい記録は残っていないらしい。
 そもそも「ちんこ芝居」はそのネーミングとともに大阪の発祥らしい。江戸時代前期、初世竹田近江が道頓堀で創始した「からくり人形芝居」の前座として子供芝居をやっていたらしい。人形のように首を振ったので「首振り芝居」「ちんこ芝居」「子供狂言」などとも呼ばれていたようだ。「からくり人形芝居」はやがて「人形浄瑠璃」として発展していくわけだが、一方の「ちんこ芝居」は人形浄瑠璃で人気を博した演目などを歌舞伎舞踊として演じるようになって行ったという。
 はたして八千代座の舞台ではどんな芸能が演じられたのだろうか。大正7年1月の朝鮮新聞には森峯吉一座の娘歌舞伎で米山甚句や博多節などを演じるという記事が見える。大衆を喜ばせるためにそういう演目もやったのだろう。しかし、本来は歌舞伎舞踊。例えば下の動画「義太夫 二人三番叟」のような人形浄瑠璃から歌舞伎舞踊化した演目などを主にやっていたのではないかと思われる。


八千代座




梅と洋楽

2021-02-07 16:49:58 | 音楽芸能
 今日は昨日作成したファミリーニュースを発送するため熊本中央郵便局へ。帰りに護国神社の梅園に立ち寄る。一部の早咲きの木を除いて、まだまだ開花には時間がかかりそうだ。
 帰宅してから洋楽を聴きたくなった。それも良質な。YouTubeのなかで探してみた。イントロだけ聞きまくって「これは!」と思うものを選び出した。それが下の2曲。
 1曲目はイギリスの世界的ギタリストでありシンガーソングライターでもあるエリック・クラプトンと、イタリアの世界三大テノールの一人と言われるオペラ歌手ルチアーノ・パヴァロッティの共演による「Holy Mother」。
 2曲目がオーストリア出身のシンガーソングライターであり音楽プロデューサーでもあるパトリツィオ・ブアンネと、オランダ出身の天才ソプラノ少女といわれるアミラ・ウィルハーフンによる「オー・ソレ・ミオ」。
 どちらも聴きごたえ十分だった。

     ▼「Holy Mother」エリック・クラプトン&ルチアーノ・パヴァロッティ



     ▼「オー・ソレ・ミオ」パトリツィオ・ブアンネ&アミラ・ウィルハーフン

水仙(Daffodils)

2021-02-06 21:06:22 | 
 FB友の栗田さんが水仙の花の写真を掲載しておられた。最近、この花を見る機会はあまりないが、僕にとって「水仙」は青春時代を思い出すキーワードの一つである。
 その一つは高校時代の英語の教科書に載っていたウィリアム・ワーズワースの詩「水仙(The Daffodils) 」。全文を暗記するほど繰り返し繰り返し読んだものだ。今日久しぶりに全文に目を通した。だいぶ忘れている。

  I wandered lonely as a cloud
  That floats on high o'er vales and hills,
  When all at once I saw a crowd,
  A host, of golden daffodils;
  Beside the lake, beneath the trees,
  Fluttering and dancing in the breeze.

  Continuous as the stars that shine
  And twinkle on the milky way,
  They stretched in never-ending line
  Along the margin of a bay:
  Ten thousand saw I at a glance,
  Tossing their heads in sprightly dance.

  The waves beside them danced; but they
  Out-did the sparkling waves in glee:
  A poet could not but be gay,
  In such a jocund company:
  I gazed - and gazed - but little thought
  What wealth the show to me had brought:

  For oft, when on my couch I lie
  In vacant or in pensive mood,
  They flash upon that inward eye
  Which is the bliss of solitude;
  And then my heart with pleasure fills,
  And dances with the daffodils.



 そしてもう一つは大学時代によく聴いていたザ・ブラザース・フォア の「Seven Daffodils」。彼らの前にこの歌を歌っていた人もいるらしいが、ザ・ブラザース・フォアが取り上げたことでヒットした。しっとりとした情感豊かなバラードが大好きだった。


ファミリーニュース35年

2021-02-05 20:26:18 | 
 今日はわが家のファミリーニュースづくりで一日を過ごした。
 昭和60年(1985)に、父がファミリーの絆にしようと始め、その後、僕が受け継いだが、創刊以来35年が過ぎた。当初は毎月発行だったが今では隔月発行となっている。今月発行で298号を数え、次々号で300号を迎える。記事は各ファミリーから送っていただくのだが、皆さん毎回ネタに困っているようだ。もともと、お互いの無事を確認しあうのが目的なので、なんでもない日々の出来事を交換するだけでよいのだが、日頃、文章を書くことが少なくなっているので結構負担になっているらしい。
 父の遺産のひとつでもあるので僕が生きている間は続けるつもりだが、子供や孫たちが受け継いでくれるかどうかは彼ら次第だ。
 それはさておき、来るべき300号では何か特集をやりたいと思うが、そろそろ企画を考えてみよう。
 

日本のうた ~「世界の民謡・童謡」より ~

2021-02-03 20:12:07 | 音楽芸能
 先日、サイト「世界の民謡・童謡」に、YouTubeマイチャンネルの「春は嬉しや」が貼り付けてあるのを見てビックリしたという記事を投稿しました。その後、同サイトをくまなく調べてみますと、その他にも次の5曲を紹介いただいていることがわかりました。いずれも、それぞれの地方の代表的な民謡。弊チャンネルの動画を使っていただいたことはありがたいことです。

 〽南部俵積み唄(青森県民謡)
 〽銚子大漁節(千葉県民謡)
 〽伊勢音頭(三重県民謡)
 〽春は嬉しや(京都俗謡)
 〽おてもやん(熊本県民謡)
 〽正調 田原坂(熊本県民謡)
 〽ひえつき節(宮崎県民謡)

 今日はその中から次の2曲を掲載してみました。

     ▼銚子大漁節(千葉県民謡)


     ▼伊勢音頭(三重県民謡)

加藤神社節分祭

2021-02-02 17:05:07 | 日本文化
 今日は節分。2月2日は124年ぶりだそうな。加藤神社では今日明日と節分祭が行われる。この神社は虎退治で有名な加藤清正公を祀っているので、それにちなんで拝殿の前に厄除け虎が設えられている。コロナ退散と家内安全・無病息災を祈って虎口をくぐる。
 参拝を済ませた後、巫女さんから福豆を家族人数分いただいた。


厄除け虎の口をくぐる


拝殿で巫女さんからもらった福豆

「翁」熊本公演

2021-02-01 22:29:40 | 伝統芸能
 昨年、計画が発表されていた「翁」熊本公演の詳細が発表されました。
 細川家ゆかりの水前寺成趣園能楽殿において、現代最高峰の能楽師である友枝昭世師(人間国宝)による喜多流「翁」が実現します。熊本において「翁」が上演されるのは、実に数十年ぶりのことだそうです。
 友枝家とともに細川家の能楽を支えた櫻間家(金春流)の当代・櫻間右陣師と、大倉流小鼓方十六世宗家・大倉源次郎師(人間国宝)による一調「屋島」。さらに、同じく細川家とゆかりの深い、狩野了一師によって、世阿弥の代表曲「高砂」が半能で舞われます。

▼日 時:2021年3月9日(火) 13:00 開場 14:00 公演
▼会 場:水前寺成趣園 能楽殿
▼チケット(2月8日より発売)
   SS席:12,000円 S席:7,500円 A席:6,000円 (℡ 0120-240-540)


友枝昭世師
喜多流能楽師。1940年肥後熊本、加藤家・細川家のお抱え能役者の本座・友枝家に友枝喜久夫の長男として、東京に生まれる。能楽シテ方喜多流十五世宗家喜多実に師事。重要無形文化財(人間国宝)認定。喜多流宗家預り。


水前寺成趣園 能楽殿