(図3:重力散乱モデルに基づいて計算した雲の時間発展を上から見たもの(上図)。軸の単位はpc(パーセク)で1 pcは3.26光年。隣り合う二つのガス雲が点状重力源に引き寄せられていく様子を、シミュレーション開始から10万年ごとに90万年後まで表示している。下図は、上図下方向から見た場合の位置-速度図を、一酸化ケイ素回転スペクトル線位置速度図に重ねたもの。シミュレーション開始後およそ70万年後のガス雲の位置と速度が観測とよく一致する。( 大きな画像 )
Credit: 岡朋治(慶應義塾大学)、国立天文台 )
① ""天の川銀河の中で二番目に大きなブラックホールの兆候を発見、<その2>""
☆彡 本研究成果の意味
本研究成果は以下の二つの意味において重要なものでした。第一に、存在が示唆されたブラックホールは、恒星質量よりも遥かに大きく、銀河中心核の巨大ブラックホールに比べると一桁小さい、「中質量」ブラックホールであった事です。この10万太陽質量という質量は、天の川銀河内のブラックホールとしては、中心核「いて座A*」に次いで二番目に大きなものになります。このような中質量ブラックホールが、中心核から200光年という比較的近い距離に存在するとすれば、前述の中心核巨大ブラックホール形成シナリオを支持する重要な観測的事実になります。つまり、その中質量ブラックホールは中心核巨大ブラックホール形成・成長に寄与する存在と考えられるのです。
第二に、大型電波望遠鏡を用いた星間ガスの運動の観測からブラックホールを間接的に検出できる可能性があることです。天の川銀河の中心部には、特異分子雲CO–0.40–0.22に類似したコンパクトな高速度ガス雲が数多く検出されており、これらの一部についてもブラックホールによる重力散乱で形成された可能性が考えられます。また、天の川銀河全体におけるブラックホール総数は1億個程度との評価もあり、現在X線観測から発見されているブラックホール候補天体数(十数個)との間には大きな開きがあります。つまり、真の意味で「暗い」ブラックホールを、スペクトル線の広域観測によって探査する可能性が示されたのです。今後、野辺山45m望遠鏡を使用した大規模な天の川掃天観測、またはアルマ望遠鏡(注4)を使用した近傍銀河の高解像度イメージング観測によって、ブラックホール候補天体の数は飛躍的に増加するでしょう。
注1) ☀太陽質量 :天文学で使われる質量の単位。1 太陽質量 =1.99×1030 kg。
注2)中質量ブラックホール :大質量星の残骸である「恒星質量ブラックホール」と銀河中心核の「巨大ブラックホール」との間にある、中間的な質量のブラックホールの事。
注3)高励起ガス塊 :高いスペクトル線強度比から高温・高密度のガスが集中していると考えられる領域。
注4)アルマ望遠鏡:アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計(ALMA)。南米のチリ共和国北部にある、アタカマ砂漠の標高約5000メートルの高原に建設された巨大電波望遠鏡。国立天文台を代表とする東アジア、米国国立電波天文台を代表とする北米連合、欧州南天天文台を代表とするヨーロッパなどの国際共同プロジェクトとして進められている。
☆彡 研究論文について
本研究成果は、1月1日発行の米国の天体物理学専門誌『The Astrophysical Journal Letters』に掲載されました。
論文の題目、および著者と研究当時の所属は以下の通りです。
"Signature of an Intermediate-Mass Black Hole in the Central Molecular Zone of Our Galaxy"
岡 朋治(慶應義塾大学 教授)
水野麗子(慶應義塾大学 学部4年生)
三浦昂大(慶應義塾大学 大学院生)
竹川俊也(慶應義塾大学 大学院生)
『The Astrophysical Journal Letters』, January 1, 2016, vol.816-2 issue, L7
電子版(プレプリント) http://arxiv.org/abs/1512.04661
この研究は、文部科学省科学研究費補助金、基盤研究(C) 24540236の補助を受けて行われました。
② ☀太陽質量、wikipedia
(太陽質量 Solar mass )
★ 太陽質量(たいようしつりょう、英: Solar mass)は、天文学で用いられる質量の単位であり、また我々の太陽系の太陽の質量を示す天文定数である。
単位としての太陽質量は、惑星など太陽系の天体の運動を記述する天体暦で用いられる天文単位系における質量の単位である。 また恒星、銀河などの天体の質量を表す単位としても用いられている。
★ 太陽質量の値[編集]
※ 一部、特殊文字で転換できません。
太陽質量を表す記号としては多く M ⊙ {\displaystyle M_{\odot }} M_{\odot } が用いられている[1]。 ⊙ {\displaystyle \odot } \odot は歴史的に太陽を表すために用いられてきた記号であり、活字やフォントの制限がある場合には Mo で代用されることもある。 天文単位系としては記号 S が用いられることが多い。
キログラム単位で表した太陽質量の値は、次のように求められている[2]。
M ⊙ = ( 1.9884 ± 0.0002 ) × 10 30 kg {\displaystyle M_{\odot }=(1.9884\pm 0.0002)\times 10^{30}{\hbox{ kg}}} M_{\odot }=(1.9884\pm 0.0002)\times 10^{{30}}{\hbox{ kg}}
このキログラムで表した太陽質量の値は 4–5 桁程度の精度でしか分かっていない。 しかしこの太陽質量を単位として用いると他の惑星の質量は精度よく表すことができる。 例えば太陽質量は地球の質量の 332 946.048 7 ± 0.000 7 倍である[2]。