民主党の新代表が海江田万里氏に決まった。参議院選挙に向けて党の再建を期待したい。が、さて・・・
これから参議員選挙までの半年余り、政治の主導権は安倍政権が握る。
外交・安全保障や教育など安倍首相が大好きな分野はそれまでじっと我慢で、参議院選挙で勝利を得たら、一気にタカ派路線をむき出しにするだろうというのが、もっぱらの安倍政権に対する予測のようである。
いつ爪が現れ、牙をむくかは油断できないが、この半年はアベノミクスと言われる経済対策が最大の争点となる公算が大である。
政権発足前から株価は上がり、円安も進み、見事な政権交代効果だと思うが、実体経済がどうなるかがやはり気にかかる。
かつての小泉・安倍政権時代の「雇用なき成長」の繰り返しとはならないか、多くの勤労者にとって「実感できない景気回復」とならないか心配である。
そんな中、今日の朝日新聞は「『危ないミックス』」は困る」とのテーマで社説を掲載した。
まさに後段にある「雇用への目配りを」は民主党政権で十分にできなかった積み残しの課題である。財政と金融という供給側の刺激だけでは日本経済の再生はない。
朝日新聞(12月25日)
今週発足する安倍新政権は、「デフレ脱却」を最大の政策課題に掲げる。
財政・金融のマクロ経済政策では、前の自公政権下で司令塔となった経済財政諮問会議を復活させる。
同時に「日本経済再生本部」を新設し、国際競争力の強化やエネルギー政策など、産業や企業により近いミクロ政策を担わせる。双方の連携をとる経済再生担当の大臣も置く。
意気込みが伝わってくる陣立てではある。
■プラスの循環つくれ
大事なのは、財政と金融の刺激策を、企業や家計に浸透させるという政府の責任をきちんと果たすことだ。
次代を開く新しい市場と産業を創出し、若い勤労者層を中心に収入と消費を増やし、実体経済の活性化を通じて、物価が上がっていく。そんなプラスの循環をつくる必要がある。
金融・証券市場では、公共事業を中心とした財政拡大と金融の大幅な緩和を柱とする安倍氏の経済政策を「アベノミクス」とはやし、円安、株高が進んでいる。
一方、人口減少とグローバル化が進み、国の借金が国内総生産の2倍に達する日本で、財政と金融のバラマキはリスクが大きいとの見方も強い。
財政支出と金融緩和という手法それぞれは、景気対策として目新しいものではない。
それが、ある人には希望に見え、別の人には危うく映るのは、峻別(しゅんべつ)すべき財政政策と金融政策を、ごちゃまぜにしているからだろう。
中央銀行を財布代わりに財政を拡大するのは、財政と金融の「危ないミックス」と言わざるをえない。国債金利の急騰から財政破綻(はたん)を招きかねず、歴史の経験から慎重に避けられてきた道だ。
すでに日銀は大量の国債を買い込み、資産規模は来年末に200兆円を突破する。
財政政策と金融政策の分担を明確にし、それぞれの規律を守って、国民や世界からの信用を失わないことが大切だ。
■潜在需要を引き出す
それには、マクロ経済対策が波及効果をうみ、投資が増え、産業の変革が着実に進んでいることを内外に示さなければならない。
問われるのは、公共事業の選別であり、規制や制度の見直しを通した構造改革である。
第1次安倍内閣では、羽田空港の国際化を軸とした「アジア・ゲートウェイ構想」を打ち出した。格安航空会社の参入を促し、航空業界の競争地図を塗り替えた。公共投資と規制緩和が実を結んだ好例だろう。
こうした潜在的な需要を掘り起こすとともに、グローバルに活躍する企業の本拠地としてもふさわしい市場を構築していく必要がある。
期待されるのは、電力や省エネ・環境、農業、医療・福祉、観光などの分野だ。いずれも国民のニーズは高く、収益の見通しがつけば資金需要が生まれる余地は大きい。
旧来型のお金のバラマキで古い経済構造を温存しないためにも、政府が新分野のビジョンを描き、規制や制度の改革を進めて、民間の創意と競争に委ねていくべきだ。
心配なのは、自民党がこれらの分野で既得権益を持つ層の支持を得て衆院選で大勝したことである。選挙中も目ぼしい政策を語っていない。
こうした展望のなさが、安易な公共事業と金融緩和頼みとの危惧を高めている。
■雇用への目配りを
日本経済の再生には、お金の流れ方を大きく変えていかなければならない。
これまでの金融緩和が効かないのは、金利を下げても借金で事業を広げる企業が少ないからだ。内部留保をため込んで無借金を誇る傾向も強い。
企業は利益確保のために賃金を抑え、収入が伸びない家計は節約する。このため、企業の売り上げが伸びない。「合成の誤謬(ごびゅう)」である。
前回、安倍氏が首相を務めていた06~07年は、02年から始まった戦後最長景気のピークに当たり、円安で輸出が伸び、日経平均株価が1万8000円を超す局面もあった。
だが、株価が上がっても内需は低迷したままだった。その根底には、働く人の所得が増えない構図があった。
高齢化で現役人口が減っているうえ、非正規雇用の拡大で低賃金労働が増えている。資産をもつ高齢者も、将来不安があれば貯蓄を消費に回さない。
アベノミクスの狙い通り、インフレになっても、国民の収入が増え、将来不安が薄まらなければ、消費は一段と手控えられるだけだ。
非正規雇用の待遇改善や、女性の就労を増やす子育て支援、富裕層の貯蓄を動かす税制改革など、幅広い目配りが求められている。
これから参議員選挙までの半年余り、政治の主導権は安倍政権が握る。
外交・安全保障や教育など安倍首相が大好きな分野はそれまでじっと我慢で、参議院選挙で勝利を得たら、一気にタカ派路線をむき出しにするだろうというのが、もっぱらの安倍政権に対する予測のようである。
いつ爪が現れ、牙をむくかは油断できないが、この半年はアベノミクスと言われる経済対策が最大の争点となる公算が大である。
政権発足前から株価は上がり、円安も進み、見事な政権交代効果だと思うが、実体経済がどうなるかがやはり気にかかる。
かつての小泉・安倍政権時代の「雇用なき成長」の繰り返しとはならないか、多くの勤労者にとって「実感できない景気回復」とならないか心配である。
そんな中、今日の朝日新聞は「『危ないミックス』」は困る」とのテーマで社説を掲載した。
まさに後段にある「雇用への目配りを」は民主党政権で十分にできなかった積み残しの課題である。財政と金融という供給側の刺激だけでは日本経済の再生はない。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
朝日新聞(12月25日)
アベノミクス―「危ないミックス」は困る
今週発足する安倍新政権は、「デフレ脱却」を最大の政策課題に掲げる。
財政・金融のマクロ経済政策では、前の自公政権下で司令塔となった経済財政諮問会議を復活させる。
同時に「日本経済再生本部」を新設し、国際競争力の強化やエネルギー政策など、産業や企業により近いミクロ政策を担わせる。双方の連携をとる経済再生担当の大臣も置く。
意気込みが伝わってくる陣立てではある。
■プラスの循環つくれ
大事なのは、財政と金融の刺激策を、企業や家計に浸透させるという政府の責任をきちんと果たすことだ。
次代を開く新しい市場と産業を創出し、若い勤労者層を中心に収入と消費を増やし、実体経済の活性化を通じて、物価が上がっていく。そんなプラスの循環をつくる必要がある。
金融・証券市場では、公共事業を中心とした財政拡大と金融の大幅な緩和を柱とする安倍氏の経済政策を「アベノミクス」とはやし、円安、株高が進んでいる。
一方、人口減少とグローバル化が進み、国の借金が国内総生産の2倍に達する日本で、財政と金融のバラマキはリスクが大きいとの見方も強い。
財政支出と金融緩和という手法それぞれは、景気対策として目新しいものではない。
それが、ある人には希望に見え、別の人には危うく映るのは、峻別(しゅんべつ)すべき財政政策と金融政策を、ごちゃまぜにしているからだろう。
中央銀行を財布代わりに財政を拡大するのは、財政と金融の「危ないミックス」と言わざるをえない。国債金利の急騰から財政破綻(はたん)を招きかねず、歴史の経験から慎重に避けられてきた道だ。
すでに日銀は大量の国債を買い込み、資産規模は来年末に200兆円を突破する。
財政政策と金融政策の分担を明確にし、それぞれの規律を守って、国民や世界からの信用を失わないことが大切だ。
■潜在需要を引き出す
それには、マクロ経済対策が波及効果をうみ、投資が増え、産業の変革が着実に進んでいることを内外に示さなければならない。
問われるのは、公共事業の選別であり、規制や制度の見直しを通した構造改革である。
第1次安倍内閣では、羽田空港の国際化を軸とした「アジア・ゲートウェイ構想」を打ち出した。格安航空会社の参入を促し、航空業界の競争地図を塗り替えた。公共投資と規制緩和が実を結んだ好例だろう。
こうした潜在的な需要を掘り起こすとともに、グローバルに活躍する企業の本拠地としてもふさわしい市場を構築していく必要がある。
期待されるのは、電力や省エネ・環境、農業、医療・福祉、観光などの分野だ。いずれも国民のニーズは高く、収益の見通しがつけば資金需要が生まれる余地は大きい。
旧来型のお金のバラマキで古い経済構造を温存しないためにも、政府が新分野のビジョンを描き、規制や制度の改革を進めて、民間の創意と競争に委ねていくべきだ。
心配なのは、自民党がこれらの分野で既得権益を持つ層の支持を得て衆院選で大勝したことである。選挙中も目ぼしい政策を語っていない。
こうした展望のなさが、安易な公共事業と金融緩和頼みとの危惧を高めている。
■雇用への目配りを
日本経済の再生には、お金の流れ方を大きく変えていかなければならない。
これまでの金融緩和が効かないのは、金利を下げても借金で事業を広げる企業が少ないからだ。内部留保をため込んで無借金を誇る傾向も強い。
企業は利益確保のために賃金を抑え、収入が伸びない家計は節約する。このため、企業の売り上げが伸びない。「合成の誤謬(ごびゅう)」である。
前回、安倍氏が首相を務めていた06~07年は、02年から始まった戦後最長景気のピークに当たり、円安で輸出が伸び、日経平均株価が1万8000円を超す局面もあった。
だが、株価が上がっても内需は低迷したままだった。その根底には、働く人の所得が増えない構図があった。
高齢化で現役人口が減っているうえ、非正規雇用の拡大で低賃金労働が増えている。資産をもつ高齢者も、将来不安があれば貯蓄を消費に回さない。
アベノミクスの狙い通り、インフレになっても、国民の収入が増え、将来不安が薄まらなければ、消費は一段と手控えられるだけだ。
非正規雇用の待遇改善や、女性の就労を増やす子育て支援、富裕層の貯蓄を動かす税制改革など、幅広い目配りが求められている。
頑張ってほしいですが、先日フジ系の番組で「どうして規制緩和するんですか?」の質問に対して、「欧米がやってるからやるんです。」の回答に、正直言って愕然としました。
何か趣味かブームのような感覚でやるっていうのが見え見えで、まったく理念とかストーリー性がないので、この先前途多難かなっていう疑問がわきました。