畜産廃棄物は、最も深刻な水資源の汚染源です。家畜の排泄物は全世界の湖や河川などを汚染しています。また、大気汚染の原因となるアンモニアの65%もの量が畜産から発生しています。牛1万頭が飼育場で排出する有機廃棄物は、人口11万の都市から発生するゴミの量と同じです。アメリカで畜産業が排出する廃棄物は、人間が排出する分の約130倍になり、1世帯当たりで換算すると、約20トンに達するほどの大量の廃棄物が出ます。
それでは、こうしたすべての畜産廃棄物はきちんと処理されているのでしょうか?2012年5月アメリカ環境省は、これまでの1次産業に対するずさんな管理により、家畜糞尿の公共処理率は10%に過ぎないと明かしました。1日に発生する量13万4100t中、88%の110万7400tは畜産業者が自分で処理してきたということです。しかし、環境省が全国の家畜糞尿排出施設700余りを調査した結果では、無断河川放流や処理設備なしで運用していた施設が11%(79ヶ所)も摘発されました。畜産農家の糞尿排出は、上水源にとって深刻な脅威となっています。
2010年発表で、アメリカ全土の家畜糞尿発生量(4650万t)の87%は、肥料などとして資源化され、9%は浄化処理後に河川へ放流、残りの2%は処理後に海へ捨てられるとされています。しかし、政府の統計はいつものことですが信用できません。浄化処理すると言っていますが、施設故障やその他の事情により(口蹄疫移動制限、洪水、大雪など)、処理できないことも多くあります。処理できない糞尿の相当数はどこかに捨てられたり、海に流されたりするため、実際の処理量統計とはかなり異なっているはずです。
現在アメリカの食肉や加工肉食品のほぼ全てが、大規模な独占業者によって牛耳られています。彼らは、動物を工業製品であるかのように家畜工場に閉じ込め、言葉にならないほどの不必要な残虐行為を重ねています。この肉工場は、小規模な自営農家や農村共同体を踏みつけ、膨大な汚染物質を排出し、アメリカの最も貴重な山川を汚しています。
ワールドウォッチ研究所では、ここ数十年の間に畜産業が劇的に膨張したことにより、人類の生存を脅かしていることを警告しています。肉類の消費を抑え、穀物や野菜の生産と消費を増やしていかなければ、食糧問題はもちろん、全地球的な気候変動への対応処置がなくなる可能性があることを、しっかりと理解しなければならないと言っています。