3.『私はなぜ菜食主義者となったのか?』
菜食主義者となった、アメリカ最大級の畜産業者の良心の告白が込められた本『私はなぜ菜食主義となったのか?』は、私たちがなぜ菜食をしなければならないのかについて、合理的で十分な理由を提示しています。4代続いた畜産業を引き継いだハワード・リーモンは、除草剤と化学肥料で育った穀物や、成長ホルモンがたっぷりと入った餌、また動物の死骸で作られた動物性飼料で牛を育てたと告白しています。このような物が牛や土壌に、さらにはその肉を食する人間に及ぼす害悪について、深く考えずに習慣的に行ってきたというのです。しかし、やがてリーモン自身が脊髄腫瘍にかかり、命懸けの大手術を受けることになった時に、深く考えるようになり、それまで自身がやってきたすべてのことが、どんなにひどいことであったかに気付き、農場と土壌を昔のように戻そうと決心しました。
また、時代と共に、畜産業と酪農業が結局は地球の環境をこれ以上手の施しようがないほどに破壊するだけでなく、肉類が人間の健康に役立つ要素がいっさいないばかりか、多くの害悪を及ぼすという事実に気付いたリーモンは、菜食主義者となることを決心したのです。菜食を始めてから、体重が60㎏も減り、300を越えていた血中コレステロール指数は、動脈硬化症をはじめとする各種血管疾患の心配がないほどの150以下へと落ちたと言います。
ハワード・リーモンは国際菜食主義連合の会長として、長い間肉食の危険性を警告して来ました。草食動物と同様の体の長さの12倍に達する消化器官と、穀物を消化する酵素を持っている人間が肉食をするというのは、自ら破滅に向かう道を歩いているのだと強調しています。肉類業界が掲げる肉食の必要性に反発するリーモンは、肉食ががん、心臓病、肥満などの根本原因になるという事実を箇条書きで列挙し、説明しています。また、全地球的に行われる畜産産業が地球の環境を継続的に破壊していること、何よりも砂漠化を加速化させていると警告しています。
『私がなぜ菜食主義となったのか?』という本を通して菜食の良さをアピールするハワード・リーモンは、根拠もなく自分の好みを掲げているのではありません。かつては肉食を楽しみ、肉を生産してきた畜産業者だった彼が、自身とこの地球の健康のために菜食主義者になるまでの、率直な体験談によって、環境の激変の時代に陥っている人類に、科学的な事実を基に、肉食の問題点について警鐘をならしているのです。