バルカン☆人へのなるほど色のインタヴュー(第4巻)
??スポック博士。以前、謎色という色について耳にしたことがありますが、なるほど色というのは初耳です。
☆☆☆初耳や垢を煎じて賢くなる。字余り、ほいほい、と。
??なんですか、だいぶ地球の文化にも造詣が深くなりましたね。
☆☆そうですのじゃ。そもそも文化とは、なるほど色のスペクトル展開にほかならない。
??ムム、とどのつまりは?
☆☆すべて神の自己展開である。
??なるほど。では、ロボットは何をめざしているのでしょう?
☆☆その奴隷根性から言って、人間への奉仕、つまり反逆をめざしている。
??しかし、?
☆☆人間の目的は神になることである。もっと正確に言えば神であることを知ることである。われわれは発達した脳をもってからは物をつくるという神のまねごとをしつづけている。これは想像力のおかげである。想像力は創造力である。神が鏡によって自己認識したとき、宇宙ができた。むろん鏡は神自身であり、宇宙もまた神である。一が二になり三になるの公理である。
??うーーむ、さっぱりわかりません、ことがわかりました。
☆☆そう、わからないことをわからないという、それがわかるということである。
??どこかで聞いたようなセリフ。。。
☆☆それは当然である。すべては五十音であるから。
??それではサルがタイプライターで打ち出したシェイクスピアになるじゃないですか。
☆☆サルであろうとなんであろうと、情報が介在すればなんでもできる。すべてはエネルギーであるが、
エネルギーは情報にしたがう
の公理のとおりである。人間は思考する。それはエネルギーに方向を与えていることであり、神になる練習をしているのである。したがって他人が発明・発見をしたそのときにそのアイデアを盗むこともできる。しかし、本人が独自の発見をしたといっても、本当は神々がそのアイデアが発見されるべく思考界にアイデアを送り込んだものを当人が発見したにすぎない。その意味では先取権争いとか著作権主張は無意味である。
??するとサルは情報だったのですね。
☆☆そのとおり。
??ではその情報とは?
☆☆情報は、取り決めのシステムによって発生することが運命づけられる。つまり発信人と受信人を想定し、解読コードを定めることである。
??つまりDNAは神だったのですか。
☆☆それはただしいけれども間違っている。神などはこの宇宙に存在しない。あるのはエネルギーと情報である。物質とはエネルギーの一形態であり、霊とは物質のしたがってエネルギーの精妙な存在様式である。
??えっ? 神は存在しないのですか?
☆☆そもそも名づけえないものが神なのであろうが、そう呼びたければ存在する。この宇宙に存在するのではなく、この宇宙そのものが神なのである。というよりこの宇宙は神の一部であり、したがってこの宇宙は神において存在するというべきだ。
??頭がくらくらしてきました。
☆☆全体は部分をしっているが、部分は全体をしらない。人間は宇宙全体を知らない。認識の程度が広がった分、宇宙がひろがっただけである。
??すこしはわかる話をしてください。
☆☆豚に真珠にたとえのあるごとしである。
??どうも今回はご機嫌斜めだっただったようで、すたこらさっさとバルカン星へスポック博士は逃げ去ってしまいました。
☆☆これこれ、ご機嫌もへちまも、バルカン星人は感情をとっくに超越したということを覚えておいてほしい。感情という粗野な物質を扱うのは簡単であるのだが、地球人の平均レベルではまだまだ難しいようだね。
??しかし、あいもかわらず突然でてきますね。
☆☆われわれは時間も空間も超越している。
??どうすればそうできますか?
☆☆まず、時間とは錯覚であることを悟らねばならない。時間とは運動にすぎない。それを感覚としてとらえると時間という概念となる。つまり、空間としてひとつであることを知ればすべては同時に起こる。世界はテープとして存在する。それは同時にひとつのものとして存在する。テープを回せば時間が生まれ、世界が時間の現象のごとくして運動するというわけである。よくわかっただろう。
??それで、人間はテープを巻かねばならないということですか。わかったということにしておきます。
☆☆そうそう、わかった気になるということが大事である。
??? ま、いいか。ところで人間とはなんですか?
☆☆人間とは、はじめから人間であるところのものである。人間が鉱物であった時代、植物であった時代も人間だったのである。
??そんな無茶苦茶を言わないでください。混乱します。
☆☆混乱しているのは、同一性をきちんと考えないからである。形態の進化と意識の進化を区別しないからである。あなたとは何か。意識の焦点をあなたの感情にあわせているとき、つまりあなたのからだを構成している感情物質に焦点を合わせているかぎり、あなたは自分をたとえば怒りといったもの、つまり怒りを住まいとしている神々に支配されていることを、意識せずに許しているということになる。これはあなたがあなた自身を感情として同定したということである。あるいは、肉体脳に焦点があるかぎり、自分をそれとして同定していることになる。つまり肉体とは牢獄であり、よりよき住まいにするにはそれなりの工夫がいるということだ。
??ますますわかりません。
☆☆つまり、移ろう世界においては同一性とは情報における同一性しかありえず、したがって神における自己同一性しかないのである。素粒子にしても、生成消滅するからには概念としての同一性、情報的同一性しかない。利己的遺伝子のいう己れとは何なのか。コピーされた遺伝子は物質的には同一ではない。保存されていくのは情報的同一性であり、それも変異していくのであるから、何をいっているのやらわからないことになる。つまり相対的に安定なのは、したがって実在するのはデザインであり、プランであり、イデアである。時計職人は隠れて健在なのである。
??わかったような、わからんような。
☆☆わかるときがくればわかる。それまで、さらばじゃ。
??てなわけで、みなさん、少しはわかりましたか。次の詩が参考になるかも~。
マリア・船粒・その他に
関する手紙のための断片
想い出や夢のなかで、海が向うの方へとひいていくとき、そこらには一面に荒れた岩場のようなものがあらわれてくる。その岩場のようなものは、おそらくはくもつた日には灰色にみえ、そしてまたあるときはその一部が、狭くにぶくとぎれたようにそこで輝く。ずつと以前、おそらくそこには水のようなものが流れ、それはひりひりし、そしてその上をまたなにかしらごちやごちやしたものたちが足もとの方からひきずられ、そして不意になにもかもなくなつた、そんなことが本当におこつたのかもしれぬ。だが、それをたしかめること、あるいはそれがそうではないといいきること、そのようなことに耐える力は、もうあたしには残されてはいない。
〔中略〕
<マリア>。
〔中略〕
それは、くみつくされるとき、海や岩場に似たものになる。海や岩場に似たものは、あるときには、そのあたりに、なにか残光のように、一種船粒様のものをよびおこす。それからそれは、その海や船粒によつて、同時に拡散しながら、いつでも向うの方、もつと荒れたくらがりの方へと昇つていく。
(岩成達也1969「レオナルドの船に関する断片補足」より)