2017年7月15日-1
学問修行2017年7月15日:ヒアリの日本への侵入問題2
ヒアリの見分け方や対策については、
国際社会性昆虫学会日本地区会(JIUSSI)のホームページ
ヒアリに関するFAQ
https://sites.google.com/site/iussijapan/fireant
に、ていねいな解説がある。根拠も示していて正しい主張だと思う。
この「ヒアリに関するFAQ」は、辻和希氏によるもので、きちんと書かれている。
とりわけ、駆除作戦については、
9 ヒアリの本当の危険性:危険性はセアカゴケグモとは桁違い
10 現時点ではアリ駆除は逆効果
11 国土交通省と環境省のベイト剤投与法への懸念
の三つで記されている。
要約すれば、
(a) 侵入初期である今は、徹底的な駆逐と防除が必要である。(水際で退治する)
(b) ヒアリの羽蟻は、在来の蟻によって殺されるので、コンテナ置き場などの外でのアリの除去は逆効果である。
ヒアリの侵入経路は、
(1)入国したヒアリが巣ごと引っ越しをして定着する。
(2))どこらからか飛来しヒアリの羽蟻が新たに巣を作る。
(c) ベイト剤を置く範囲には注意が必要である。
(b) については、「最大の邪魔者はアリ自身です。翅アリが降り立った地面が、もし他種のたとえば日本在来のアリの「領土」だったら、たちまち地主の働きアリに見つかって殺されてしまいます。実際、このシナリオがヒアリにおいてもあてはまることがフロリダで行われた最近の野外研究で明らかになりました(文献16)。地元在住のさまざまなアリたちの存在はヒアリの防御壁になりますが、殺虫剤や耕耘機であらかじめ在住アリを除去しておくと、ヒアリの新女王による新巣定着率が格段に上がったのです。」と、
文献 16. Tschinkel, W.R. & King, J.R. (2017) Ant community and habitat limit colony establishment by the fire ant, Solenopsis invicta. Functional Ecology 31: 955–964.
の報告を根拠としている。
ただし、「翅アリが降り立った地面が、もし他種のたとえば日本在来のアリの「領土」だったら、たちまち地主の働きアリに見つかって殺されてしまいます。」は推論した主張であって、だれも日本では、ヒアリの羽蟻が、地主の働き蟻に見つかって殺されたことを見た人はいないと思う。
また、フロリダでの野外研究が日本で適用されるとするのは、場所と種類についての 外挿的推論である。
フロリダと日本では、蟻の種類(と各種類の個体数密度)が異なる。
また、ヒアリの羽蟻が数多くなれば、在来の蟻を含めて捕食者たちから免れる受精した女王蟻も出てくるだろう。
ただし、在来蟻がだれほど頼りになるかは不明だが、辻和希氏名の言うように、ヒアリが侵入していない地域の在来蟻を駆除することは、不要でしかない。
ヒアリの駆除のための誘引罠 bait trap の使用に際しては、在来蟻を駆除しないように設置場所に注意することが肝要である。
クマムシ博士のむしブロ
クマムシ博士が綴るドライな日記
2017-07-04
『ヒアリの生物学』でヒアリの生態を知る
http://horikawad.hatenadiary.com/entry/2017/07/04/190022
によれば、『ヒアリの生物学』に、
「ヒアリは将来日本を侵略するだろうか?答えは「イエス」である。問題は、いつ、どこに侵入するかということだ。」
という文があるそうだ。
また、
「南米に存在していたような天敵がアメリカにいないことも、ヒアリが新天地で繁栄した大きな理由のようだ。
アメリカでは1950年代から1980年代にかけて、総額1億7千万ドルもの巨額の費用をかけて殺蟻剤を散布するなど対策を講じたが、ヒアリを撲滅することはできなかった。この間、有機塩素系農薬の散布による他生物への悪影響も顕在化し、レイチェル・カーソンによる『沈黙の春』に代表される環境保護運動の盛り上がりもおきた。そして残念ながら、人間や生態系に影響のない殺蟻剤の開発もうまくいかなかった。
結局、アメリカでは原産地よりもはるかに高密度のヒアリが生息することとなり、アメリカから他国への侵入と定着を許すまでになってしまった。アメリカ以外にも中国や台湾など、日本はヒアリ保有国と活発に貿易をしており、ヒアリが知らずに輸入されるリスクに常にさらされている。」
http://horikawad.hatenadiary.com/entry/2017/07/04/190022
とある。すると、フロリダでの在来蟻がヒアリの侵入防止に役立つとしても、アメリカ合州国の他の地域では役立たなかったということになるのではないか。
「横浜港でヒアリ500匹超=繁殖の可能性大―環境省
7/14(金) 21:02配信 時事通信
環境省は14日、強い毒を持つ特定外来生物の「ヒアリ」が横浜港の本牧ふ頭(横浜市)で初めて確認されたと発表した。
コンテナヤードのアスファルトの割れ目で働きアリ500匹以上を確認。幼虫やさなぎも計200匹以上いて、地中で繁殖していた可能性が高い。
同省によると、確認されたのは繁殖能力のないメスの働きアリ500匹以上とオス5~10匹、幼虫とさなぎがそれぞれ100匹以上。国土交通省や専門家などと進めていた主要7港の確認調査の結果、縦20センチ横40センチ、深さ10センチの地面の割れ目から同日見つかった」
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170714-00000164-jij-pol
貿易が盛んになったことによる、災害である。
グローバリズムとか新自由主義は、このような災害を推進または拡大させただろう。
侵入場所付近の綿密な調査と即刻の退治をするほかない。
早期発見と早期駆除。
「ヒアリを定着させないためには、早期の発見と防除が鍵となる。」
http://horikawad.hatenadiary.com/entry/2017/07/04/190022
-------
「村上〔貴弘〕先生のアリ研究記(2)- 小さな侵入者”ヒアリ”を退治せよ!」によれば、
テキサス、フロリダ、アルゼンチンで刺されたよりも、台湾でヒアリに刺された場合のほうが、身体反応は激しく、
「軽いアナフィラキシーショックが出て、眩暈、動悸、手の震え、瞳孔収縮」を経験されたとのこと。
(もっとも、台湾で刺される前の他所で刺されたことの履歴効果的身体反応か、あるいは台湾のヒアリは毒性が強くなっていったヒアリ(また、多くの型の毒が含まれるようにもなった)なのか、あるいは両方か、とも考えられる。)
-------
文献:
村上貴弘 2016年7月11日. 村上〔貴弘〕先生のアリ研究記(2)- 小さな侵入者”ヒアリ”を退治せよ!
https://academist-cf.com/journal/?p=1175[受信:2017年7月15日。]
『ヒアリの生物学』でヒアリの生態を知る
http://horikawad.hatenadiary.com/entry/2017/07/04/190022[受信:2017年7月15日。]
国際社会性昆虫学会日本地区会(JIUSSI)のホームページ
ヒアリに関するFAQ〔辻和希氏執筆〕
https://sites.google.com/site/iussijapan/fireant
学問修行2017年7月15日:ヒアリの日本への侵入問題2
ヒアリの見分け方や対策については、
国際社会性昆虫学会日本地区会(JIUSSI)のホームページ
ヒアリに関するFAQ
https://sites.google.com/site/iussijapan/fireant
に、ていねいな解説がある。根拠も示していて正しい主張だと思う。
この「ヒアリに関するFAQ」は、辻和希氏によるもので、きちんと書かれている。
とりわけ、駆除作戦については、
9 ヒアリの本当の危険性:危険性はセアカゴケグモとは桁違い
10 現時点ではアリ駆除は逆効果
11 国土交通省と環境省のベイト剤投与法への懸念
の三つで記されている。
要約すれば、
(a) 侵入初期である今は、徹底的な駆逐と防除が必要である。(水際で退治する)
(b) ヒアリの羽蟻は、在来の蟻によって殺されるので、コンテナ置き場などの外でのアリの除去は逆効果である。
ヒアリの侵入経路は、
(1)入国したヒアリが巣ごと引っ越しをして定着する。
(2))どこらからか飛来しヒアリの羽蟻が新たに巣を作る。
(c) ベイト剤を置く範囲には注意が必要である。
(b) については、「最大の邪魔者はアリ自身です。翅アリが降り立った地面が、もし他種のたとえば日本在来のアリの「領土」だったら、たちまち地主の働きアリに見つかって殺されてしまいます。実際、このシナリオがヒアリにおいてもあてはまることがフロリダで行われた最近の野外研究で明らかになりました(文献16)。地元在住のさまざまなアリたちの存在はヒアリの防御壁になりますが、殺虫剤や耕耘機であらかじめ在住アリを除去しておくと、ヒアリの新女王による新巣定着率が格段に上がったのです。」と、
文献 16. Tschinkel, W.R. & King, J.R. (2017) Ant community and habitat limit colony establishment by the fire ant, Solenopsis invicta. Functional Ecology 31: 955–964.
の報告を根拠としている。
ただし、「翅アリが降り立った地面が、もし他種のたとえば日本在来のアリの「領土」だったら、たちまち地主の働きアリに見つかって殺されてしまいます。」は推論した主張であって、だれも日本では、ヒアリの羽蟻が、地主の働き蟻に見つかって殺されたことを見た人はいないと思う。
また、フロリダでの野外研究が日本で適用されるとするのは、場所と種類についての 外挿的推論である。
フロリダと日本では、蟻の種類(と各種類の個体数密度)が異なる。
また、ヒアリの羽蟻が数多くなれば、在来の蟻を含めて捕食者たちから免れる受精した女王蟻も出てくるだろう。
ただし、在来蟻がだれほど頼りになるかは不明だが、辻和希氏名の言うように、ヒアリが侵入していない地域の在来蟻を駆除することは、不要でしかない。
ヒアリの駆除のための誘引罠 bait trap の使用に際しては、在来蟻を駆除しないように設置場所に注意することが肝要である。
クマムシ博士のむしブロ
クマムシ博士が綴るドライな日記
2017-07-04
『ヒアリの生物学』でヒアリの生態を知る
http://horikawad.hatenadiary.com/entry/2017/07/04/190022
によれば、『ヒアリの生物学』に、
「ヒアリは将来日本を侵略するだろうか?答えは「イエス」である。問題は、いつ、どこに侵入するかということだ。」
という文があるそうだ。
また、
「南米に存在していたような天敵がアメリカにいないことも、ヒアリが新天地で繁栄した大きな理由のようだ。
アメリカでは1950年代から1980年代にかけて、総額1億7千万ドルもの巨額の費用をかけて殺蟻剤を散布するなど対策を講じたが、ヒアリを撲滅することはできなかった。この間、有機塩素系農薬の散布による他生物への悪影響も顕在化し、レイチェル・カーソンによる『沈黙の春』に代表される環境保護運動の盛り上がりもおきた。そして残念ながら、人間や生態系に影響のない殺蟻剤の開発もうまくいかなかった。
結局、アメリカでは原産地よりもはるかに高密度のヒアリが生息することとなり、アメリカから他国への侵入と定着を許すまでになってしまった。アメリカ以外にも中国や台湾など、日本はヒアリ保有国と活発に貿易をしており、ヒアリが知らずに輸入されるリスクに常にさらされている。」
http://horikawad.hatenadiary.com/entry/2017/07/04/190022
とある。すると、フロリダでの在来蟻がヒアリの侵入防止に役立つとしても、アメリカ合州国の他の地域では役立たなかったということになるのではないか。
「横浜港でヒアリ500匹超=繁殖の可能性大―環境省
7/14(金) 21:02配信 時事通信
環境省は14日、強い毒を持つ特定外来生物の「ヒアリ」が横浜港の本牧ふ頭(横浜市)で初めて確認されたと発表した。
コンテナヤードのアスファルトの割れ目で働きアリ500匹以上を確認。幼虫やさなぎも計200匹以上いて、地中で繁殖していた可能性が高い。
同省によると、確認されたのは繁殖能力のないメスの働きアリ500匹以上とオス5~10匹、幼虫とさなぎがそれぞれ100匹以上。国土交通省や専門家などと進めていた主要7港の確認調査の結果、縦20センチ横40センチ、深さ10センチの地面の割れ目から同日見つかった」
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170714-00000164-jij-pol
貿易が盛んになったことによる、災害である。
グローバリズムとか新自由主義は、このような災害を推進または拡大させただろう。
侵入場所付近の綿密な調査と即刻の退治をするほかない。
早期発見と早期駆除。
「ヒアリを定着させないためには、早期の発見と防除が鍵となる。」
http://horikawad.hatenadiary.com/entry/2017/07/04/190022
-------
「村上〔貴弘〕先生のアリ研究記(2)- 小さな侵入者”ヒアリ”を退治せよ!」によれば、
テキサス、フロリダ、アルゼンチンで刺されたよりも、台湾でヒアリに刺された場合のほうが、身体反応は激しく、
「軽いアナフィラキシーショックが出て、眩暈、動悸、手の震え、瞳孔収縮」を経験されたとのこと。
(もっとも、台湾で刺される前の他所で刺されたことの履歴効果的身体反応か、あるいは台湾のヒアリは毒性が強くなっていったヒアリ(また、多くの型の毒が含まれるようにもなった)なのか、あるいは両方か、とも考えられる。)
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文献:
村上貴弘 2016年7月11日. 村上〔貴弘〕先生のアリ研究記(2)- 小さな侵入者”ヒアリ”を退治せよ!
https://academist-cf.com/journal/?p=1175[受信:2017年7月15日。]
『ヒアリの生物学』でヒアリの生態を知る
http://horikawad.hatenadiary.com/entry/2017/07/04/190022[受信:2017年7月15日。]
国際社会性昆虫学会日本地区会(JIUSSI)のホームページ
ヒアリに関するFAQ〔辻和希氏執筆〕
https://sites.google.com/site/iussijapan/fireant