何を見ても何かを思い出す

He who laughs last laughs best

幸せの条件 お天道様

2015-11-25 14:07:18 | 自然
23日には、新米のおにぎりと、庭から摘みたての春菊でつくった胡麻和えと、ボジョレーヌーヴォーで収穫に感謝しようと思っていたが、春菊は胡麻和えにできるほど成長していなかったし、ボジョレーヌーヴォーという気分でもなかったので、収穫祭とはならなかった。が、今年は数は少ないが立派な柚子ができたので、自家製柚子味噌でふろふき大根を食べるのを楽しみにしている。(参照、「感謝の乾杯と祈りの献杯」

「あさが来た」は視聴率もうなぎ上りでビックリポンな快進撃だが、それは「泳ぎ続けるもんだけが、時代の波に乗れる」の言葉通りに活躍する主人公・あさの魅力だけでなく、お家が没落しても卑屈になることなく誇りと品位を保っている姉・はつの存在も大きいのだと思う。
江戸時代にはお大名に借り倒され、御一新以降は新政府の横暴な要求に屈し、遂には、はつが嫁いだ大阪一とも云われた両替屋(山王寺屋)は倒産してしまう。夜逃げした先の農家の納屋と畠を間借りして飢えをしのいでいるうちに、はつの夫・惣兵衛は、農業を生業にしたいと考えるようになる。
はつの夫・惣兵衛は、家付き娘で威張り腐っていた母の説得を試みるが・・・・・。
『毎日お天道様や雨風と戦わなあかん。
 せやけどな、(農家ならば)もう世の移り変わりに振り回されることもあらへんのや。
 皆で地に足つけて、もういっぺん働こう』

一口に農家といえども、戦後の農地改革で田畑を失った地主は世の移り変わりの荒波をまともにかぶったわけであるし、減反政策が本物の農業従事者を減反してしまったという面があるし、これからTPPの影響が日本の農業にどのように影響を与えることになるかも、分からない。
が、「次のブームは農業ガールだ」というので最近読んだ「幸せの条件」(誉田哲也)で書かれていた自給自足と世の移り変わりについては考えさせられる。

主人公・梢恵は東京の片山製作所で伝票係をするOLだが、ある日社長の鶴の一声で長野(穂高村)に出張を命じられる。
「社運をかけて製作したバイオエタノール精製装置のための安い米を作付けしてくれる農家の契約がとれるまで、会社には戻って来るな」という社長命令を受けた梢恵は、バイオエタノールの知識が皆無のまま、穂高村に飛び込み、そこで農業法人「あぐもぐ」の人達と出会い、生き方そのものが変わるという物語。
本の帯には「人生も、自給自足」とある。

『百姓ってのは、食うための米を作るもんだ。燃やすためにコメを作る百姓なんざ、百姓じゃねえ』
訪ねる農家から悉く断られるなか、穂高村で出会った農業法人「あぐもぐ」の生活に触れ、更には『最悪、自分達の食べるものさえ収穫できてれば、生きていけるから』という言葉を聞いた梢恵は、自給自足の生活の強みを知り、そこからエネルギーの自給自足という発想を得るのだ。
『そう、ここが、農民の強さなのだろう。
 都会暮らしの月給生活では、お金がなくなったらゴミを漁るか、飢え死にするほかない。
 でも、ここでは食べ物を直接生産できる。売ってもいいけど、自分達で食べてもいい。
 むろん不作の年もあるだろうが、まったく何も採れず、何も口にすることができないという、
 極端な事態にまではまず至らないに違いない』

梢恵が感じた自給自足の生活が、惣兵衛の云う「世の移り変わりに振り回されない、地に足をつけて働く」ということなのだと思う。

だが、全く世の移り変わりに振り回されない(職業)農業というのは、かなり難しい。
家族皆が飢え死にしないで生きていくという最低ラインなら守れるだろうが、それでは日本の農政は成り立たない。

農業を生業とするためには、エネルギーが必要で、エネルギーを消費するということは、世の移り変わりに振り回されるということだからだ。

ガソリン値下げ隊とかいうものが結成されるほど燃料費高騰が世界的な問題となっていた頃、バイオエタノールも盛んに話題となっていたが、あれは一体どうなってしまったのか。一頃よりガソリン価格が下落したのは確かだが、農家が利益を上げるのに十分な価格か? あるいは、燃料が入手できない事態が生じたときに農業はどうなるのか、これは考えておかねばならない問題であり、農業という分野では、エネルギーの自給自足という観点からバイオエタノールを諦めてはならないと思いながら本書を読んでいた。

農業法人「あぐもぐ」の社長・茂樹は「燃料も自給自足」という梢恵の発想に理解を示す。
『現代の農業はガソリンがなきゃ成り立たない。~略~
 中東から油を持ってこないことには、俺達は田んぼを耕すことも、その田んぼに苗を植えるころもできない。
 むろん手作業で昔ながらのやり方というのもなくはないが、そうなったら収量は何分の一にも落ち込む
 だろう・・・・・そういう危機感ってのは、俺も常々持ってはいる。
 自分で使うガソリンくらい、自分で作れたらいいと考えていた』

バイオエタノールとは、農作物とかから抽出したアルコールを蒸留して作る無水エタノールのことだが、何事も採算が合うかが先ず問題となる。
『バイオエタノールを作るってことは、最終的にはガソリンと値段で戦うってことだ。
 そこから考えたら、自ずと原材料費をどれくらいに抑えなきゃならないか、分かるだろう』

ガソリン価格と競うならば、バイオエタノール用のコメはキロ当たり20円でないと燃料としての採算はあわない。が、食用米の卸値はキロ200円、農協に卸すのではなく直売するなら300円以上にもなり、無農薬なら400円でも売れる、煎餅などの加工用でさえキロ50円。この状況で、キロ当たり20円で卸していては農家は潰れる。

本書では、非協力的だった地元農家の一部が情にほだされたり、東日本大震災の原発事故を受け自然エネルギーへの理解が深まったため、問題山積ながらもバイオエタノールによる農業機器の稼働にまで辿り着けるが、実際にはなかなか難しそうだ。

本書のキーワード自給自足について、もう少し考えたい、それは又つづく


さてさて我が家のワンコ
無事に誕生日を迎え、17歳となった。
生後一か月のまだ耳が垂れている状態で初めて出会い、生後二か月目から我が家の家族となり、すぐさま家長となったワンコ。
この17年間、どれほどの愛と憩を与え続けてくれたかを思えば、今の介護など物の数には入らないが、鳴き声に哀切の響きがあるので辛くなる。獣医師によると、少し痛そうな哀しそうなこの鳴き声こそが、幼児帰りの証拠とも云える鳴き方だそうだが、分かっていても堪らない。
ほんの一週間前までは、夜鳴きは改善されたかに思えたが、パワーアップして復活。寝ずの番をする者だけでなく、家じゅうの者を起こしてしまう鳴き声だが、階段状に進むのも痴呆の特徴だそうだ。
今日のように雨がしとしと降る温度の低い日は、持病の神経痛まで復活しやすい。

植物を育てるためには勿論お天道様を仰がねばならないが、ワンコの健康を維持するためにも毎日お天道様のご機嫌を伺い、お日様が燦々と降り注いでくれることを祈っている。

お天道様 我ワンコのためにも照っておくれ。