事例その1。
「女性は皆そうだと思います」
何が問題か。
(1)「女性は皆そう」というフレーズを見ただけでPTSDを起こして倒れる人間が日本だけでも何人もいるという現実について知らないとしかおもえない社会的無知。「皆そう」とはいったいどういう意味か。
(2)「女性は皆そうだ」という断定なら「個人的思い込み」として改善の余地を残しはするものの、「女性は皆そうだと思います」という表記には常に「だと思いませんか、だよね?」という煽動効果がつきまとって離れない。全体主義へ点火し全体主義を率先支援する、ひとひねり加えた、ただならぬ手法として歴史的に用いられてきた決して無罪とは言いがたい典型的問題表現のひとつ。
(3)一方で「個人的印象に過ぎませんよね」として侮蔑的身振りで論理的整合性を無視しつつ却下するたいへん失礼な場合がある。もう一方「反論の余地のない偏見を含む個人的印象」としてたびたび弾劾されてきた歴史がある。この二点だけを取り上げてみてもすでに二重の意味で罪深い「言いっぱなし」の単なる「言ったもの勝ち、やったもの勝ちの強姦主義的」暴力を肯定する態度。
二〇〇〇年代に入り主にネットを介して急増した典型例であり少なくとも言語表現に携わる人々がこの間の言葉遣いの歴史的変遷について何一つ知らないとは決して言えない事例である。