ふくろう日記・別室

日々の備忘録です。

当麻寺  (死者の書  折口信夫)

2014-10-26 00:06:57 | Stroll

した した した。。。

こう こう こう。。。

はた はた ゆら ゆら はたた。。。

この物語は音楽のようだ。。。


この「死者の書」の物語の舞台は奈良時代の平城京。
最も新しい文化であった仏教を軸にして、語り部による当麻寺を麓に抱いた二上山の伝説、
その時代の富と権力の争い、疫病など・・・さまざまな要素が盛り込まれた物語である。

大津皇子(天武天皇の皇子)は「磐余の池」にて非業の死を迫られたこと、
その処刑の直前に、
皇子に一目逢おうと駆けつけた「耳面刀自(みみものとじ)=藤原鎌足の女。不比等の妹。大友皇子の妃」の美しさのために、
死者となってからも皇子の魂は鎮まることがなく、五十年後に彷徨い出ることになる。
その魂に呼ばれたのが、「藤原南家郎女(ふじわらなんけいらつめ)=藤原武智麻呂(むちまろ・不比等の子)の子の豊成の娘」であった。
この物語の主軸は、清らかな生者の郎女による、死者大津皇子の「魂鎮め」であるだろう。
そして民俗学者・歌人・詩人である折口信夫のあらゆる美的要素が凝縮された「書」であることも見逃すことはできない。


ひさかたの 天二上(あめふたかみ)
二上の陽面(かげもと)に、
生ひをゝり 繁(し)み咲く
馬酔木の にほへる子を
我(あ)が 捉(と)り兼ねて
馬酔木の あしずりしつゝ
吾(あ)はもよ偲ぶ。 藤原処女


以上、簡単なメモを記しておきます。
この書物に出会ってから、一度行きたいと思っていた、奈良の「当麻寺」に行ってきました。
このお寺に居た時間が、今回の旅行の4日間のなかで、最も雨の激しい時間でした。

二上山は、現在では「にじょうざん」と呼ばれています。


 当麻寺 仁王門


 後に見えるのが二上山






秋の風景

2014-10-12 21:53:21 | Stroll

 ホトトギス


 サンシュユの実(多分…)


 ピラカンサ


 ススキ


 ススキ


 ハスの実


 枯れハス


 フジバカマの白 枝の色が銅色


 フジバカマ


ホウキグサ


 アメジスト・セージ


 パンパグラス

秋を演出する植物たち。

第七回日本一行詩大賞授与式

2014-10-02 20:21:15 | Haiku



九月二九日、午後六時より開催されました「第七回日本一行詩大賞授与式」に参加させていただきました。

主催 日本一行詩協会
後援 読売新聞社 角川春樹事務所
場所 アルカディア市ヶ谷


第七回一行詩大賞特別賞 清水昶氏 句集「俳句航海日誌」
第七回一行詩大賞特別賞 西川徹郎氏 句集「幻想詩篇 天使の悪夢九千句」
第七回一行詩大賞 小島ゆかり氏 歌集「純白光 短歌日記2012」

受賞者は以上の通りです。
昶さんの受賞とご挨拶は、井川博年さんがなさいました。


角川春樹氏のご挨拶のなかでは……


 死ねば死にきり水際に又春立ちぬ


この句に衝撃を受けたとおっしゃっていました。


選者の福島泰樹氏のご挨拶では……

清水昶さんの詩人としての驚きと感動を語って下さいました。
それは詩集「少年・1969年刊」です。


少年   清水昶

いのちを吸う泥田の深みから腰をあげ
鬚にまつわる陽射しをぬぐい
影の顔でふりむいた若い父
風土病から手をのばしまだ青いトマトを食べながら
声をたてずに笑っていた若い母
そのころからわたしは
パンがはげしい痛みでこねられていることを知り
あざ笑う麦のうねり疲労が密集するやせた土地
おびえきった鶏が不安の砂をはねながら
火のように呼ぶ太陽に殺(そ)りあがる一日の目覚めに
憎しみを持つ少年になった
たぶんわたしは暗さに慣れた
太陽を射(う)てまぶしい対話を潰せ
しずまりかえった夜こそがわたしの裸身の王国であり
梟のようにしんと両眼を明けるわたしの
その奢る視界であえいでいる母
残酷な痛みのなかで美しい母ににた
神に従く少女を愛し
因習しみつく床に膝を折る少女の
闇夜をひらく眼の一点に
迷い星の輝きを見た
どこへ行こうとしていたわけではない
なにを信じていたわけでもない
ひややかな口づけは花やいだ世界を封じ
たゆたう血潮を閉じこめるひとつの夜に
息をひそめて忍んでいくとき
初潮のように朝が来る!
生活の鬚を剃り落とすたしかな朝
きれいなタオルを持った少年は
わたしの背後にひっそりとたち
決っしてふりむくこともなく老いるわたしを
いつまでも
待ちつづける



ぎりぎりまで詩を書き、追いつめ、さらに言葉の領土を「俳句」にまで広げた
天国の詩人&俳人清水昶さん、おめでとうございました。