ふくろう日記・別室

日々の備忘録です。

草間彌生・永遠の永遠の永遠

2012-04-22 00:44:15 | Art
草間彌生・永遠の永遠の永遠


4月20日午後、埼玉県立近代美術館にて。



大欅のある庭園を歩いてゆくと、美術館の入口から普段とは違う様相を呈していました。前に見えるのは小さな麦畑。



美術館内部の通路にも、撮影許可されているオブジェがありました。



今回は、絵画以外のものは撮影許可(ノーフラッシュ)が出ていました。新調したばかりのマイカメラのお初のお仕事でした。



この作品の展示のために、展示室全体が塗り替えられていました。前代未聞。

当然オブジェだけではありません。草間彌生特有の絵画がほとんどですが、色彩の鮮やかさに圧倒されます。
壁紙にしたいような絵画もありましたが、一日その前で過ごしたら疲れるかもしれないという強烈さ。
まさに狂気と美術との境目はないようです。美しいと思うけど疲れる。

  
《自分の死のあとも宇宙は何ごともなく進んでいる・2011年》                  《果てしない人間の一生・2010年》

瀬戸内海の小豆島と直島の旅をなつかしく思い出しました。
海辺の野外展示、草間彌生の「巨大な水玉模様のかぼちゃ」に、美術館で再会したような気分です。

ヴィヨンの妻・桜桃とタンポポ

2012-04-09 23:55:56 | Movie
Villon's Wife clip 1


監督:根岸吉太郎
製作:亀山千広、山田美千代、田島一昌、杉田成道
プロデューサー:前田久閑、木幡久美、菊地美世志
エグゼクティブプロデューサー:石原隆、直井里美、酒井彰
アソシエイトプロデューサー:稲葉直人
ライン・プロデューサー:宮崎慎也
原作:太宰治
脚本:田中陽造

《キャスト》
松たか子:佐知
浅野忠信:大谷穣治
室井滋:巳代
伊武雅刀:吉蔵
広末涼子:秋子(大谷の愛人)
妻夫木聡:岡田
堤真一:辻


なんともはや、絶望的な映画物語である。
しかし、観ながらずっと、亡くなったある詩人を思い出していた。
憎めない人だったなぁ。

清水さんへ 「春がくると」

2012-04-08 13:11:54 | Poem




   かたむきかけた冬陽の庭にたたずむと
   かぼそい母のからだは透きとおるようだ
   
   母の足元から影が長くのびてきて
   わたしの足元に届いている
   あなたの寂しさも 見果てぬ夢も
   影をのばしてきた

   母は事もなげに日常を歩くわたしを
   いつも遠い目をして追っている
   あなたとわたしの距離は
   もうそれほど遠くはないけれど
   今のあなたには
   わたしがささやかな希望のかたち

   わたしは寡黙に働く
   ことばにしてしまうと
   霧散してしまいそうなものを
   奥歯でくいとめるために……
   はかりようもない寂しさ

   春がくると
   母の記憶は花のようにこぼれはじめた
   虚空をまさぐる母の寂しい枝々は
   ついにわたしの日々を繁らせて……
   わたしの磨いたガラス窓は
   母の磨いたガラス窓
   わたしの貼りかえた障子は
   母の貼りかえたそれに
   「ほら お部屋が明るくなったでしょう」

   崩壊しようとする母は
   そのようにしてみずからを救済したのだ

   ふたたび 母の春


 *     *      *


昨年5月30日詩人清水昶さんがご逝去。そして2012年、桜の開花の季節に清水ご兄弟のお母上がご逝去。
お父上の死から、弟の昶さんの死、母上の死……列車の連結のように大切な方々をなくされた兄上の清水哲男さんの哀しみはいかばかりか?
言葉もない。ただここに思い出した我が母について書いた過去の拙詩を差し出すのみ。
哲男さま。お疲れでしょう。ご自愛くださいませ。

もう一編の詩を思い出しました。「伝言・加藤温子さん」

『戦火の馬』

2012-04-06 20:40:59 | Movie
『戦火の馬』予告編


「戦火の馬・オフィシャルサイト」

製作年:2011年
製作国:アメリカ
配給:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン

監督&製作:スティーヴン・スピルバーグ
原作:マイケル・モーパーゴ
脚本:リー・ホール / リチャード・カーティス
撮影:ヤヌス・カミンスキー
音楽:ジョン・ウィリアムズ


《キャスト》
アルバート:ジェレミー・アーヴァイン
ジョーイ:愛馬の名前

映画の作り方、音楽ともに非常に感動的であった。そしてなによりも美しい馬だ。
しかし、こうした過酷な戦争を背景にしてしか、
この映画が出来ないものであることは悲しいことだった。

第一次世界大戦の戦場の悲惨さ、イギリス農村の貧しくも美しい農村風景。
この対比も哀しい。(後ほど、追記するかもしれません。)


 《追記》

戦場で共に傷ついて、アルバートと愛馬のジョーイが野戦病院にて再会するシーンのなかで、
語られたナレーションは、「旧約聖書・第23編・ダビテの歌」であったと教えていただきました。
どうもありがとうございました。


1 主はわたしの牧者であって、
  わたしには乏しいことがない。
2 主はわたしを緑の牧場に伏させ、
  いこいのみぎわに伴われる。
3 主はわたしの魂をいきかえらせ、
  み名のためにわたしを正しい道に導かれる。
4 たといわたしは死の陰の谷を歩むとも、
  わざわいを恐れません。
  あなたがわたしと共におられるからです。
  あなたのむちと、あなたのつえはわたしを慰めます。
5 あなたはわたしの敵の前で、わたしの前に宴を設け、
  わたしのこうべに油をそそがれる。
  わたしの杯はあふれます。
6 わたしの生きているかぎりは
  必ず恵みといつくしみとが伴うでしょう。
  わたしはとこしえに主の宮に住むでしょう。


その時、アルバートは眼に怪我を負っていて、両眼に包帯を巻いていました。
そこへ連れてこられた、愛馬のジョーイは足に深い傷を負っていて、安楽死の診断を下されるかもしれませんでした。
眼の見えない少年は愛馬の鳴き声を聴きわけ、馬を呼ぶ時のアルバートの口笛をジョーイは覚えていたのでした。
少年と愛馬との感動的な出会いによって、獣医は足の怪我を直すことを約束しました。
少年の眼も治り、終戦とともにアルバートとジョーイは共に故郷に帰りました。