瀬戸内少年野球団(IN THE MOOD) クリスタルキング
監督 篠田正浩
脚本 田村孟
原作 阿久悠
企画 海老名俊則 黒井和男
製作 原正人
プロデューサー 飯泉征吉 山下健一郎
撮影 宮川一夫
美術 西岡善信
音楽 池辺晋一郎
録音 西崎英雄
照明 佐野武治
編集 山地早智子
助監督 永井正夫
スチール 遠藤正
《キャスト》
夏目雅子 中井駒子
渡辺謙 中井鉄夫(中井家の次男で駒子が後添えに勧められている相手)
郷ひろみ 中井正夫(新婚早々戦死したと思われていた駒子の夫 傷痍軍人)
岩下志麻 穴吹トメ(床屋“猫屋”をバーに改装する女将 戦争未亡人)
島田紳助 正木二郎(“バラケツ”の兄)
辰巳努 吉沢孝行(ダン吉)
山内圭哉 足柄竜太(淡路島江坂町国民学校初等科・級長 江坂タイガースのメンバー)
大森嘉之 正木三郎(バラケツ)
佐倉しおり 波多野武女(転校生で江坂タイガースに入る少女。波多野提督の娘)
大滝秀治 足柄忠勇(竜太の祖父で巡査)
加藤治子 足柄はる(竜太の祖母)
ちあきなおみ 美代(バー“猫屋”の女給で最後は鉄夫と島を去る)
内藤武敏 中井銀蔵
浜村純 (老船大工)
沢竜二 池田新太郎
伊丹十三 波多野提督
不破万作 (青年団長)
清水のぼる スポーツ振興係
堀真一 ボーイ
河原崎次郎 中井宗次
谷川みゆき 節子(バー“猫屋”の女給)
上月左知子 中井豊乃
桑山正一 校長(江坂町国民学校の校長)
宿利千春 正木葉子(“バラケツ”の姉)
ビル・ジェンセン アンダーソン中尉
ハワード・モヘッド GI
津村隆 通訳
服部昭博 中井照夫(デブ国)
山崎修 新田仁(ニンジン)
森宗勝 折原金介(ボラ)
丸谷剛士 神田春雄(ガンチャ)
戸田都康 高瀬守(アノネ)
三上博史 波多野啓介(武女の兄)
有安多佳子 チトセ(戦争未亡人)
小野朝美 とも子(戦争未亡人)
何度観てもすばらしい映画である。
キャストをすべてここに書いたことには、わたくしなりの理由があります。
この映画はすべての登場人物が主人公だからです。
そして戦争によって運命を狂わされた人々(大人も子供も。)の物語です。
昭和20年9月の淡路島。江坂町国民学校の初等科5年男子だけの学校が男女共学になった。
そのころ、波多野提督とその娘波多野武女が島にやってきた。
戦後教育が必ず通貨儀礼としてあったのは、教科書の不適切な部分の塗りつぶしだった。
これによって、少年少女たちの、今までの夢も希望も砕かれた。
担任の中井駒子は、少年に野球をやらせることで新しい生き方を求めようとした。
そこに唯一女の子の波多野武女が参加。チームのなかで一番背が高い。
しかし彼女の父親「波多野提督」は軍法会議の末に、アメリカで絞首刑となる。
この重い事実を受け止める思春期前期の少女の痛みと苦しみと恐怖ははかりしれない。
そして女性たちのたくましい、そして哀しい生き方。
傷痍軍人の中井正夫が立ち直り、島の未来を冷静に考える。
漁業ばかりに頼れば、魚はいなくなる。そのためには島の農業も必要となる。
その指導とともに、野球の指導もする。
船大工はバットを作り、足柄竜太の祖母はボールやグローブを布で手作り。
そして少年たちは「働く」ことを覚え、そのわずかな賃金で野球道具を充実させる。
その熱意が村人を動かし、ユニホーム、ボール、バットなどなど野球に必要なものがだんだん揃ってくる。
米兵も島の人々も、敵でありながら同じ人間だと思うには、波多野武女には辛いことだった。
そして瀬戸内少年野球団は米兵チームとの試合に臨む。それが米兵の島からの撤退であった。
戦争がいかに愚かなものか?それでも人々は立ちあがる。しかし戦争の傷跡は消えない。