小さな駅に電車が停まった
ドアーがきしみながら開くと
大きな蜂が車内に飛び込んだ
電車は時刻通りに走り出し
車内の人々は
前へ後へと波立った
すると、
頑丈そうなスポーツシューズを履いた若者が
窓ガラスにとまっている蜂を蹴って
(スゴイ!強くて柔軟な足!)
座席に落ちた蜂をつまみあげ
(アブナイヨ)
床に落とすと さらに踏みつけた
蜂は動かなくなって
車内は静かになった
しばらくすると
ほっそりとした若者が現れて
死んだ蜂は紙にくるまれて
彼に委ねられ
次の駅で下車した
かつての少年たちが
大人になって
また出会ったような
一駅区間の物語
二人の若者は眼を合わせることもなくて
まだ咲いていた
秋薔薇を観た帰りに……。
「カニエナハ」さんという詩人を知ったのは、読売新聞の「詩を遊ぶ」という詩集評に
私の詩集「冬の夕焼け」を取り上げて下さった時です。ごめんなさい。
これからゆっくりとじっくりと拝読させていただきます。
まずは、第21回中原中也賞を受賞された、この詩集から。