エリクソンの小部屋

エリクソンの著作の私訳を載せたいと思います。また、心理学やカウンセリングをベースに、社会や世相なども話題にします。

#ソロモンの仮説 #エンドロフィン #恐怖と嫌悪が喜びに捻じ曲がる

2018-11-09 05:39:38 | ヴァン・デ・コーク教授の「トラウマからの
 
#母子は心身一体 #心理的課題も移る
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 ヴァン・デ・コーク教授の  The body keeps the score : brain, mind, body in the healing of trauma 『大切にされなかったら、意識できなくても、身体はその傷を覚えてますよ : 脳と心と身体がトラウマを治療する時どうなるか?』
 第2章。「心と身体を理解する,革命」,p.32,最後の第5パラグラフから。その前もご一緒に。

 

トラウマ依存 :喜びの痛みと痛みの喜び

 

 私の同僚のマーク・グリーンバーグと私が捉えたのは,私どもがベトナム帰還兵のセラピーグルーブを運営していた時のことですが,恐怖と悲しみを体験していながら,元気が戻ってきたのは,ヘリコプター事故や戦死した仲間たちの話をするようになった時だ,ということでした。(前のニューヨーク・タイムスの担当記者,クリス・ヘッジは,たくさんの残酷な戦いを表紙にしてきましたが,彼の本の題名が,『戦争こそ私どもに生きる意味を与える無二の力だ』でした。)トラウマを負わされた人々は,ほとんどの人間を跳ね返すような様々な体験を求めているように見えます。しかも,患者さんの多くがこぼすのは,なんとなく空しく,なんとなく退屈だというのは,無理強いされても怒らずにいたり,かなり危険な活動に関わっている時のことでした。

 私の患者のジュリアは,銃を突きつけられて暴力的にホテルの部屋でレイプされたのが,16の時でした。そのすぐあと,ジュリアは,売春を斡旋する暴力的な男とかかわるようになり,売春をするようになりました。その男はいつもジュリアを殴りつけました。ジュリアは繰り返し売春の廉で刑務所に行きましたが,ジュリアはいつもそのポン引きのもとに舞い戻ってしまいました。結局,祖父母が介入して,ジュリアのリハビリの費用も支払いました。ジュリアは,入院治療をうまく終えて,受付として働くようになり,地方大学で履修生にもなりました。社会学の授業で,売春婦たちが自由になる可能性について学期末レポートを書きました。それは,たくさんの有名な売春婦たちの回想録をジュリアは読んでいたんです。ジュリアは別の履修は次第に落としてきました。クラスの友達との短い関係も,あっという間に,辛いものになりました。その男友達は,ジュリアがメソメソ泣くのに辟易して,ジュリアは,彼のボクサーシューズで蹴られて追っ払われました。ジュリアは地下鉄で1人の依存症患者と出会って,その男もジュリアを殴り,付け回すようになりました。ジュリアがとうとう治療に戻ったのは,また,激しく殴られるようになった時でした。

 フロイトは,このようにトラウマが繰り返し起こることのために,1つの言葉を使いました。それは「強迫的な繰り返し」です。フロイトとフロイト派の人々は,トラウマを繰り返すのは,痛みのある状況を無意識にコントロールしようとする試みであり,その試みによって,つらい過去は克服し,解決に導くものだ,と信じていました。この理論には証拠は一つもありませんでした。実際には,トラウマを繰り返すことは,痛みと自己嫌悪が増すばかりです。現実には,セラピーの中でトラウマを繰り返すことさえ,トラウマに心奪われ,トラウマが固定化させることになります。

 マーク・グリーンバーグと私は,人を引き付けるものについて,もっと学ぶことにしました。人を引き付けるものとは,私どもが動機を得て,生き生きと生きている感じももたらしてくれるものです。一般には,人を引き付けるものによって,私どもは,気分がよくなります。それじゃぁ,なぜ,危険な状況,痛みに満ちた状況に心惹かれる人が多いんでしょうか? 私どもが最後にたどり着いた1つの研究は,恐怖や痛みの元になる活動は,しまいには,スリルを感じる経験になりうる,と説明する研究でした。1970年代に,ペンシルベニア大のリチャード・ソロモンがハッキリと示したことは,身体は,あらゆる刺激に適応する,ということでした。脱法ドラックの中毒になりやすいのは,脱法ドラックによって,人は気分が良くなるからですが,サウナ浴,マラソン,パラシュート降下,みたいないろんな活動が,最初は不快で,オッカナイことであっても,結局は愉しみになるものです。徐々に馴染むことが示していることは,新たな化学的なバランスが身体の中でできると,たとえば,マラソンを走ると,身体を限界まで追い込んでも,幸せで,陽気で楽しい気分になれるようになります。

 この点で,薬物依存になるみたいに,最初は不快でオッカナイ活動を望むようになり,それが得られないと,しり込みするようになります。長期的に見ますと,活動そのものよりも,尻込みする痛みに,心奪われてしまいやすいものです。この理論の助けで,自分をぶったり,タバコの火を押し付けたりする人を雇い,自分を傷つける人にしか魅力を感じない人がいるわけが分かりました。恐怖と嫌悪は,ねじ曲がった道で,喜びに変わりうるものなんです。

 ソロモンの仮説は,エンドロフィン,という,脳がストレスに反応して放出するモルヒネみたいな化学物質が,この矛盾する依存症の中で役割を果たしている,ということでした。私がソロモンの理論を思い出したのは,いつも図書館で読書をする習慣のおかげで,『人の中の痛み 戦いの中で傷つけられること』という題名の本に出合いました。その本は1949年に出版された本です。イタリア戦線で傷つけられた兵士の75%は,モルヒネがいらなかった,と気付いて,外科医のヘンリー・ケー・ビーチャーは「強い感情は痛みを防ぐ」と推測しました。



 発達トラウマ障害は,いつも強い感情にさらされて,報酬と感じることも,ゆがめられています

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