エリクソンの小部屋

エリクソンの著作の私訳を載せたいと思います。また、心理学やカウンセリングをベースに、社会や世相なども話題にします。

なぜ、大人はウソをつくのか?

2015-02-28 07:33:50 | エリクソンの発達臨床心理

 

 「なぜ大人は嘘をつくのか?」。これは、映画「ソロモンの偽証」広告のキャッチコピーです。その映画評論をしようとしているのではありません。新聞一面広告で、例によって、高橋源一郎さんが、先の問いかけに対して、「心を偽って生きている大人ほど 物事を曖昧に穏便に済ませる」と答えていることに注目したからなんですね。

 ですから、映画「ソロモンの偽証」の話ではありません。

 「心を偽る」とはどういうことでしょうか?

「心」は「本当の自分」「最深欲求」と言い換えてもいいのじゃないのか、と私は考えます。自分の内側へのベクトルですね。外側へのベクトルが強いと、この内側へのベクトルが非常に弱くなりますもんね。

 日本人は、おしなべて横並び。同調圧力が強い中で、その場その場の「地頭」に同調しながら生きるのが「標準形」ですから、大体、外向きのベクトルがとっても高い。そうすると、その外向きのベクトルに従って、同調することが「何らかのウソ」になる場合が非常に多くなるわけですね。私はこの生き方に対して、「否定的」です。

 ところが、むしろこれを是として、こういう生き方をすることこそが「大人」とする考え方もあるくらいですね。私は、そういう人は、「大人の顔をした子ども」、あるいは≪知的なケダモノ≫と呼んでいます。そういう人たちは、「自我の力」が非常に脆いので、「他を考えたり」、「他と異なる生き方を選択できない」が故に、体制や時代に流されがちです。歴史的に見ると、こういう人たちが、ナチスや日本軍のようなケダモノを生み出す「無思考」(仕事だからと、ルーティーンを何の疑問もなくやっちゃう)と「『普通に見える』悪」(モンスターが人類史上類まれな悪をするのではなく、ごくごく普通の人、平凡な人こそが、人類史上まれに見る悪をしでかす)になるのですね。

 じゃぁ、どうすりゃいいのかな?

 それは上記の広告の写真をよくご覧になってほしいんですね。高橋源一郎さんが着ているパーカーに小さくプリントされてる文字。Think other. 「人のことを考えよ」と読めますね。ここにヒントがあります。

 私は次のように考えます。

 この生き方に「さよなら」を言いたい人は、隣をよくよく見ることを通して、自分をよくよく見ることですね。それが、神谷美恵子さんが言う「観照 テオリアθεωρια の目」に通じます。そして、この「テオリア θεωρια」は、「テオロー θεωρω」から派生し、そのテオロー θεωρω」の意味は「よく見る」、「気付く」、「識別する」という意味だからですね。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 耳を澄ませば・・・。 | トップ | 誰にも頼らないやり方で自分... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿