現世考: 山でも,学校でも,学習しない教員たち宇宙に対するお礼 今朝は、マハトマ・まど・みちおさんの言葉から(『どんな小さなものでも みつめていると 宇宙につながっている』より)。 ......
私事にわたることで恐縮ですが,4月の後半,部屋の片づけをして,ずいぶんスッキリした感じになっています。ふと,昔の学会の文書を読んでいましたから,2004年の学会の論文集が出てきました。それは,2004年9月3日(金)から5日(日)にかけて,埼玉県越谷市の文教大学であった,人間性心理学会の論文集です。この時の講演会の講師は,大江健三郎さんでした。演題は 「「言葉の力」はどのように成り立つのか?」でした。
その時の私のメモも出てきました。この時の大江健三郎さんの講演の講演集があるか,昔,学会に問い合わせたことがありましたが,調べてもらったところ,「残念ですが,ありません」ということでしたから,このメモが出てきたときに,「しめた!」と嬉しかったんです。
権力者でもない人の,ふつうの言葉の中に,どのように「言葉の力」を見出すか? それが,大江健三郎さんが掲げた問いです。
この講演は,ほぼ,エリック・エリクソンの話でした。心理学会だったからだろうと思います。そして,初めからHabit,習慣の話でした。大江健三郎さんは,エリクソンの『ヤングマン・ルター』と『ガンジーの真理』を読んで,「50歳まで生きていける」と思ったそうです。息子さんの光さんのことで,心底苦しんでいた時期だったんでしょう。
Habit,習慣は,必ず,繰り返すものでしょ。小説家の大江健三郎さんは,繰り返し書く,すなわち,書き直すことを大切にするのだということです。書き直すこと,英語では,elaborate が大事で,そのことで言葉を正確に定義するとともに,構造化するんだそうです。その正確に定義した言葉によって,確信したことを構造的に文章にすることが,言葉の力になる,というのが大江健三郎さんの主張です。その際に,言葉を分節化したうえで,結びなおすことが,明確な発言となり,言葉の意味を伝えることになる,ということです。構造化,構造的,という言葉は難しいですが,それは,目的,究極的な目的を明確にする,あるいは,文章を究極的な目的を明示するものにする,ということだと,私は考えます。
エリクソンの文章を繰り返し読み直していると,同じことが繰り返し出てきます。エリクソン自身も,書き直すことで,自分の考えを深めると同時に,その意味を明確にしたんだと思います。そう考えると,最後の著作,『ヴァイタル・インヴォルヴメント・イン・オールド・エージ』に,凝縮した表現があることに,思い至りますね。
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