今晩から、ハートネットTVで、「虐待 心の傷と闘う」の3回シリーズが始まりました。今日の夜が第2回目があります。来週、再放送も予定されているようです。さっき1回目を見ましたけれども、愛着障害の人(テレビでインタヴュウに応えている人は二十歳前後と思われます)が、どんな気持ちで暮らしているのかが痛いほどに感じました。それについて記したいのも山々なんですが、今日は別のことを記すことにしました。
それは「正しさの基準」です。
一昨日の「視点・論点」に、「マンションデータ偽装 再発を防ぐには」と題して、「欠陥住宅被害全国連絡協議会幹事」の河合敏男弁護士が、非常に大事な話をしてくれました。河合隼雄先生の息子ではありません(そちらは、河合俊雄・京都大学未来研究センター教授です)。
河合敏男弁護士によれば、マンションの杭が地盤に届かなかったのに、届いているようなウソとゴマカシ(施工不良)をして、マンションの基礎工事に手抜きをした旭化成建材の問題は、別の会社でも起こり得る(起っている)ことだといいます。「やっぱりね」と思います。その背景について、詳しく教えてくれています。
杭の施工不良の隠ぺいが、どこにでもある、とする理由とは、一体なんでしょうか?
1)まず杭。横浜の件のマンション。杭は、工場でつくる安価な「既成杭」を使ってた。「既成杭」は、安いけれども、現場で、杭の長さが足りないと分かっても、つぎ足すことができません。新たに、もう少し長い杭を再発注し、その間、数週間くらい工事をお休みしなくてはなりません。マンションは、引っ越しシーズンの2月・3月に、買い主に物件を引き渡すのに、間に合わせなくてはなりません。数週間も工事をストップさせるゆとりが、そもそもありません。ですから、寸足らずの杭でも、「しょうがねーな」「どこでもやってんだから」「どうせバレナイだろう」「まあいっかっ」てなわけで。そのまま打っちゃう。
2)じゃぁ、杭は、「既成杭」しかないのか?横浜あたりは、支持層になる地盤の起伏が大きいらしい。それは、その筋の人達にとっては、既成事実だったらしい。ですから、横浜あたりでは、長さがはじめから決まっている「既成杭」は使わず、現場で長さが調節できる、「交換杭」や「場所打ち杭」を用いるのが原則らしい。「交換杭」は現場で継ぎ足しが出来るそうです。「場所打ち杭」は、鉄筋とコンクリートを使って、現場で作る杭のことだそうです。河合敏男弁護士によれば、この横浜のマンションの構造設計をした人も、「交換杭」か「場所打ち杭」を用いるべきである、と考えたはずだと言います。
じゃぁ、何故、「既成杭」を使ったんでしょう?
それは、「既成杭」は安いから。でもそれだけじゃないらしい。「既成杭」の営業やマンションの販売会社との繋がりから、構造設計者の意向を無視して、年間契約して、非常に安価に手に入る「既成杭」を使うことや、施工業者がはじめから決まってる場合が少なからずあるからだと言います。
4)それから、マンション建設の階層構造。マンション建設の発注者は、マンション販売大手で、一部上場企業、ブランドもキラリと光る「三井不動産レジデンシャル」です。元請けが、「三井住友建設」で、杭工事の一次下請けが「日立ハイテクノロジー」で、二次下請けが、ここだけが悪いようにニュースで言われる、でも、本当はここだけが悪い訳じゃなさそうな「旭化成建材」、しかし、実際に施工したのは、また別の小さな会社です。この階層で、力関係が対等ならよかったですが、実際は、販売会社の、ブランドもピカリと光る「三井不動産レジデンシャル」が圧倒的に強い、と言われているようです。施工業者では、「元請け、下請け、孫請け…と下になればなるほど弱くなっていきます」と河合敏男弁護士は言います。販売会社の指示に対して、誰も「NO」と言えないと、河合敏男弁護士は続けます。
5)さらには、「不健全な工事費の決め方」。普通の建物の場合は、設計図面に見合った見積もりを出して、見積もりの金額にあわせて、工事の代金とするそうです。でも、「マンション建設の場合は、全く逆だ」と、河合敏男弁護士は言います。まず最初に、マンションの販売価格を、相場に合わせて決めてから、販売会社が利益を抜き取った金額で、発注するという訳です。工事に見合った工事代金よりもはるかに安い工事費しか、出ない、ということもありそうですね。「はじめから予算不足の工事もあり得る」と河合敏男弁護士は指摘します。元請け会社では、「これでは儲からない」と始めから自分達では施行せず、10~15%の中間マージンを抜いて、さらに安い工事費で、下請けに出す、丸投げする。さらに、下請けが、中間マージン10~15パーセントを抜いた安い工事費で、孫請けに丸投げする…。こうして、末端の施工業者は、儲かるか分からないような仕事でも、引き受けざるを得ない現実があるようです。すると、価格が高い「交換杭」や「場所打ち杭」が必要になった場合でも、その費用は自腹を切るしかないし、工事が遅れれば、三井不動産レジデンシャルには怒られる…。、「しょうがねーな」「どこでもやってんだから」「どうせバレナイだろう」「まあいっかっ」てなわけで。そのまま打っちゃう。ある意味、この現場の業者は可哀想。赤字でも、工事を受け入れざるを得ないのですから。
という背景があると、河合敏男弁護士は教えて下さいました。
でも、何故なんでしょうか?
それは、販売会社や元受会社の意向に「NO」とは言いづらい空気の中で、敢えて「本物」「本当のこと」を目指すよりも、「まあまあ」と空気に馴染むように、手早く、従順に、施工を進めたほうが良い、という判断が、どこの現場でもあるからでしょう。「本物」「本当のこと」よりも、「銭 ゼニ 優先」「空気優先」というわけですね。
構造の欠陥は、建てた後では、専門家でもなかなか見抜けないと言います。ですから、建ててる最中にチェックできる体制が、必要不可欠です。紙の上だけでスルーしている現在の「建築確認」制度は、この必要不可欠な手続きを省力化、割愛してんですね。始からさぼってる。一部上場企業が儲かって、自分らに献金してもらって、選挙に勝てればいいからです。つまり、初めから、住むという生存権、人らしい暮らしをする上で正しいことを、アベ・詐欺師ちゃんと悪魔の仲間たちは、無視してんですね。
建設途中で、現場で正しい工事をしているのか、してない場合は工事の中止を命令できる権限のある工事管理者を、市町村か都道府県が持つような制度が、いまこそ必要です。実は、これは、日弁連がかねてから主張していることです。
それから、やっぱり、「ほんもの」でないことには、「NO」と、損は覚悟で言える、パレーシアな態度が、今ほど必要な時代もない、といえますね。
今の時代、証明可能であることよりも、パレーシアな態度こそが、「正しいこと」の基準です。
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