サイコセラピーをしていると、実に不思議な体験をすることが本当に多いんですね。
先日も、学会の読み上げ原稿を作るためにユングC. G. jungの著作集の第9巻第1部を読んでいましたら、この間、高校生がコラージュで語っていたことと、全く同じ話をしているんですね。高校生の話は、プライヴァシーの問題がありますから、デフォルメして記すことにします。
この高校生は、家族間関係が極めて深刻です。病態も非常に重度です。具体的には記せません。でも、このケースは例外ではありません。小学校低学年の時くらいに、キチンとセラピーをしていれば、ここまで重度にならなかったのに、というケースが、高校生くらいになると、溢れているんです。発達トラウマ障害(DTD)=愛着障害の子どもが、セラピーもせず、学校でも、見当違いの虐待を受けて、症状が重度化している訳です。率直に言って、どこの高校で自殺や反社会的行動が起きても不思議ではない、と言える状況が、悲しいかな、今のニッポンの偽らざる現実なのです。
それで、この高校生のコラージュ。コラージュのストーリーとして、この高校生は次のように語ります。
「私が船に乗っています。その船は海に沈んでいきます。するとそこに、以前の明るい私がいます。その時、その明るい場所で、私は1輪の花を眺めています。その1輪の花を、私は誰かに上げたい」。
これと同じ話が、ユングの文献に出てくるのです。ユングが「心の旅」について語っている、昨日引用した文獻と同じです(The Collected Works of C. G. Jung, vol9-1)。
「私どもは、水の旅に出て、下に向かった旅をしなくちゃならないことは、確実なことです。私どもが宝物、あの父からの貴重な遺産を拾い上げたいと思えばね。グノーシスの魂の讃歌には、その息子は両親から、王様の王冠から零れ落ちた真珠を探すために、送り出されます。その真珠は、深い井戸の底にあり、龍に守られているんですね…その息子は、水の旅に出て、その井戸の暗い深みに突き進みます。その息子は、井戸の底で、その真珠を見つけ出し、最後にその真珠を、最高の神様に捧げます」。
この高校生がユングの著作を読んでいる訳がありません。グノーシスの「魂の讃歌」を知っているはずがありません。しかし、この高校生は、自分の心の旅がどうなるのか、を、ひどい家族関係と、重度の心の病気の中にありながら、すでに知っているんです。本当の自分に出会い、素晴らしい生き方ができるようになるのは、確実です。
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