エリクソンの小部屋

エリクソンの著作の私訳を載せたいと思います。また、心理学やカウンセリングをベースに、社会や世相なども話題にします。

発達トラウマ障害の子どもたち

2014-10-24 06:03:38 | エリクソンの発達臨床心理

 

 

 発達トラウマ障害の子どもたち。このブログでも何回かご紹介しています。先日初めての小学校に伺いまして、発達トラウマ障害の子どものことを、壊れたテープのように、また繰り返してきました。そうすると、教員の皆さんが眼の前にしている子どもたちの状態が、一貫した視点で理解することに、相当程度お役に立っていることが、手に取るように分かります。なんせ、教員の皆さんの眼の色が、私の眼の前で変わるのが、ハッキリわかるからです。その眼が、本当のことに触れた時にだけ湧き出て着る、マジな感じになるんですね。

 発達トラウマ障害の子どもたちは、赤ちゃんの頃にできるはずの、お母さんとの愛着ができないままに、ほったらかされている子どもです。エリクソンのライフサイクルで言えば、根源的信頼感を貰うことができないで、根源的不信に傾いたままで、ほったらかしにされている子どものことです。臨床では、「愛着=根源的信頼感豊か」、「発達トラウマ障害の子どもたち =根源的不信が深い」、と考えていいんですね。また、愛着障害の子どもは、お母さんとの一対一の、温もりのあるやり取りの経験がない、乏しいので、どなたとも一対一のやり取りのある関係ができません。一対一のやり取りのある関係ができなければ、日本の学校でやっている、ほぼすべてのことは、全くできない。

 日本の学校でやっていることの、ほぼすべては、子ども、教員、〇〇の三項関係で成り立っていますでしょ。〇〇にはいるものは、国語や体育などの授業、校則などのルール、時間割や年間予定などの見通し、振り返り学習や作文など過去の思いでを文字や絵にする学習など。発達トラウマ障害の子どもたちは、その、どの一つもできないんですね。でも「やっているように見える」。それは、大人が見ている時には、できる場合がある、と言う程度のもので、大人が見てなければ、授業も、ルールを守ることも、時間割などの見通しをもって時を過ごすことも、振り返り学習をすることも、できない。話がここまで来ると、事態の深刻さと、子どもたちのいろんな行動が一つにまとまる感じとに、初めて気づかれる教員が実に多い。ここでその教員の眼の色が分かることを感じることが、非常に多いんです。「やっているように見える」のは、そのフリをしているだけ。すなわち、演じているわけですね。

 それじゃぁ、発達トラウマ障害の子どもたちのケアをどうするのか? それは「«約束≫に基づいた遊び」が原則ですね。愛着や根源的信頼感が身に付くときのことを考えれば、分かります。赤ちゃんが泣いたり笑ったりすると、そのお母さんが、おっぱいをあげたり、オシメを替えたり、あやしたり、抱っこしたりしますでしょ。それは、赤ちゃんのニーズに、お母さんが応えて献身するパターンですね。別にお母さんは赤ちゃんと、契約書を正副持っているわけでも、口約束さえしている訳じゃぁ、ない。でもね、この献身をお母さんがするときには、「もっとも誠実な約束」に、「お母さんが忠実に従っている」かのような献身が必要でしょ。そのような献身があって初めて、赤ちゃんは、愛着=根源的信頼感を豊かにすることができるんですね。

 ですから、発達トラウマ障害の子どもたちのケアには、お母さんが赤ちゃんにするような献身と、その前提となる≪約束≫が必ず必要になるんですね。 「≪約束≫に基づいた遊び」を3ケ月毎日するのもその一つになりますね。同じ時間に遅れずに、「≪約束≫に基づいた遊び」を3ケ月毎日するためには、お母さんに、教員に、それだけ「本気」が必要です。でも、学校では、それだけだと、学校の時間の50%を占める授業での関わりがノータッチになっちゃう。そこで、できれば、すべての授業で、少なくとも午前と午後の授業で1回ずつ、一番発達トラウマ障害の深い子どもを選んで、「今日は、◎◎ちゃんにここらへんで当てるから、答えてね」と、確実に答えを言える場面の見通しをハッキリ示して、それをその◎◎ちゃんと教員の≪約束≫にするんです。教員がこれをするためには、相当な覚悟と「本気」が必要でしょ。

 発達トラウマ障害の子どもたちは、そのような「≪約束≫に基づいた遊び」や「≪約束≫を組み込んだ授業」を繰り返ししてもらうことで、≪見通し(イメージ)―話し言葉―出来事≫を繰り返し一致させてもらう訳ですね。この≪見通し(イメージ)―話し言葉―出来事≫とお母さんや教員の「本気」が非常に大事で、その繰り返しの一致とその「本気」のにおかげで、子どもは愛着=根源的信頼感をある程度回復させることができるんですね。

 これを3ケ月続ければ、発達トラウマ障害の子どもたちでも、改善しないケースはいままでひとつもありません。劇的に変化するケース~緩慢に変化するケースまで様々ですが、少なくとも必ず愛着=根源的信頼感が、豊かになる方向に発達することができます。

 

 皆さんも、ぜひ3ケ月、お試しくださいね。

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