土佐レッドアイ

アカメ釣りのパイオニアクラブ

イノシシつかまえた

2010-05-18 07:32:00 | 狩猟とナイフ
 2010年5月10日、害獣駆除で仕掛けてあったワナにイノシシがかかりました。


 竹林(ハチク)の中でワナにかかったイノシシ

 イノシシが食べたハチクのタケノコの残骸

 イノシシが捕れた所は孟宗竹とハチクとマダケが混在している場所で、現在は孟宗竹と出始めたハチクのタケノコを食害しています。

 今回獲ったイノシシは68キロの♂でした。仕留めるまでは♀とばかり思っていました。キバがそれ程大きくなかったのです。年齢は推定3歳、解体処理すると頭部は身体の大きさからみてかなり小さく、満年齢は2歳なのかもしれません。

 たいへん太った、コンディションの良いイノシシで、骨抜きの時に出た肉の切り落としを早速フライパンで焼いて塩こしょうで試食してみました。

 うまい!「これがたまるか」という味です。ジューシーで柔らかい上に噛みごたえもほどよくあります。

 ワナにかかったイノシシは、竹林の急斜面(80°ほど)で右前足をワイヤーで括られ、ぶら下がったような状態になっていました。その状況をみて「これは下から近づいて、後ろ足を掴まえてひっくり返し、心臓を突いて仕留めるしかない」と判断しました。

 どうやってトドメを刺すかというのは、食肉として利用するためにたいへん重要な作業となります。おいしい肉として処理するためには最初の血抜きが肝心です。昨年、受講した「シカ肉セミナー」でもどうやって血抜きを上手に行なうかが話題になりました。

 このセミナーでの講座に高知県食肉センターで屠畜から枝肉までの作業の見学がありました。「確実に安全、安心で美味しい肉を提供するか」という課題に日々取り組まれている専門家たちの現場での仕事ぶりを、獣医さんのご案内で見せていただきました。プロの仕事というのはすごいものでした。感動しました。

 やはり、血抜きをいかに巧くやるかというのが肝心だそうです。教えていただいたことは、「もっともよく血抜きができる方法は生きているうちに頸動脈を切る」ということでした。

 ただ、私がやっているワナ猟では安全が第一となります。私は単独で猟をしているのでナイフ1本で仕留めなければなりません。失敗すれば大怪我をするか、悪くすると命を落とすかもしれないという危ない相手です。イノシシはワイヤーで足を括られて暴れ回っているので、先ず固定しなければなりません。ブログでこれまで書いてきたように、鼻を括って2点固定するのが良いように思います。

 さて、うまく固定できました。それから頸動脈を切ることになりますが。

 私はこれまで心臓を突いて仕留めてきました。このやり方でもかなり放血はできました。映画等でよくあるように血が噴水のように飛び出ることもありますし、それほど流れ出ない時でも胸腔内は血糊で満杯ということになっています。しかし、これは満点のやり方ではないそうです。心臓はポンプですので失血死するまでポンプは動かしておくのが一番よいのだそうです。

 そこで、頸動脈を切ることにしました。しかし、馴れていないというのは残念なことで、うまくいきません。頸動脈がどこにあるか、どう切れば良いか。イノシシ・シカは内臓や大きな血管などはそれほど大きくヒトとちがってはいません。特にイノシシは内臓の大きさや配置は驚くほどヒトと似ているそうです。手術室でしばらく働いていたカミさんが言います。
 私はシカとイノシシを各2頭づつ、頸動脈を切って仕留めてみましたがうまくいきませんでした。失血死するより先にどうも窒息死するようなのです。頸動脈は気管や食道にそって頭部に向かいます。そこでドラマなのでよくある?ように横に切っていたのです。この方法では心臓を突くよりも放血できていないようでした。

 そこで再度食肉センターの獣医さんの講演を聞く機会があったとき質問しました。すると、もう一度見学にくるように勧めて下さいました。ブタの放血を間近で見たらよくわかるということでした。

「百聞は一見に如かず」。

 見学にお邪魔した日は、豚を10数頭処理する日でした。その全ての処理を間近で説明を受けながら見せていただきました。やはり職人技というのは素晴らしいものでした。私は顎の下を横に切っていたのですが、全く違っていました。やり方はナイフを横ではなく縦に、食道にそって上から心臓に向かっていれて心臓のすぐ上の大きな動脈を切断していました。

 今回、心臓を突いて仕留めたその訳ですが、急斜面で足場がとても悪かったことです。2点固定をしても動き回りますので足場が悪いとうまく行きません。やはり、自身の安全が第一です。

 食肉センターでは電流を使って動きを止めてから放血処理をしています。動き回るとうまくいかないので、山でどうやるかが課題です。獣医さんの提案は「鉄棒のような硬い重いもので、側頭部を強打して気絶させてから処理できれば最も良いのではないか」ということでした。しかし、重い鉄棒を担いで山を歩くというのは現実的ではありません。近くでワナ猟をしている人たちは獲物は殴り殺すという方法で仕留めているといいます。石器時代以前のやり方のような気もしますが。どうやら現場で丸太ん棒を切り出してそれを使っているようなのです。

 こんど、樫の生木で木刀をつくってそれで気絶させるという方法を試してみようと思っています。

 みなさんはどんな方法で処理しているのでしょう?是非、教えて下さい。

 イノシシについたダニ






 ダニはタカサゴキララマダニが多いようです

 このイノシシについているダニの量はこれで普通です。もっともっと多い個体や少ないものもありました。タカサゴキララマダニというのはかなり大型です。そして凶暴?というかどん欲な食欲をみせます。



 猟師の宿命としてダニに喰いつかれることは仕方がないことと諦めています。獣道を辿ると、道中のシダなどには各種のダニたちが期待に胸を膨らませながら?獲物である私が鼻歌を歌いながら通りかかるのを待ち構えています。産まれたての小さなダニから直径7ミリ(空腹時で)もあろうかというようなでかいのまでが。



 いまでは、数十メートルこうした危険地帯を歩くと、必ずズボンの裾から股下まで彼らが取り付いていないかを確認するようになってしまいました。それがまたよくくっついてぞろりぞろりと上がってきているのです。タカサゴキララマダニですが、でかいのになるとジーパンのような厚手のズボンの上からでも見境なしに喰いつくのです。それがまことに上手な麻酔をしながら喰いつくのですから気づかないでいると悲惨なことになります。まったく痛みを感じません。しかし、麻酔薬の在庫量にも限界があるようです。動き回るものですから、ズボンの上から喰いついては離れ、喰いついては離れを繰り返しているうちにふとちくりと痛みを感じるようになります。

 
 
  ズボンの上から喰いつかれた私の左膝 水泡になっている場所が最初に喰いついた所で、歩いている間に離れたり喰いついたりを最低9回繰り返して、麻酔が切れ気づきました。こうなると1ヶ月以上カユミに苦しみます。

 じろりと睨みつけられてもタカサゴキララマダニは「知らん顔」をしながら、麻酔薬が切れているとも知らず食欲旺盛です。

 つまみ上げられたタカサゴキララマダニの運命は。

 先ず、足を引きちぎられます。それから頭をむしり取られます。たまにはナタなどで半分に切断されたりするのです。何という無惨な運命であることか。嗚呼!

 2010年5月14日現在、私の身体には『ふぐり2箇所』を含め9箇所のダニの食い跡があります。

  今回初めて皮剥ぎ処理をしてみました


 これまでにも紹介してきましたが、イノシシの毛の処理法については大きく分けて、熱湯を使って毛抜きをする、ガスバーナーなどで焼き取る、毛剃りをする、皮を剥ぐという方法があります。皮を剥ぐという処理法以外は皮も食べるということを前提としています。日本各地それぞれ違いがあるようで土佐では皮を食べるのが主流です。ですので、毛剃りと熱湯を使っての毛抜きという手法が多用されています。バーナーで焼き取るというのはそれほど普及していません。

 
 処理前:熱湯をつかっての毛抜きです。私は給湯器で約70°の湯を使っています。

 
 毛抜き処理後

 
 毛剃り処理中

 
 毛剃り処理後
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 毛抜きと毛剃りでは体色がずいぶん違います。これは熱湯で毛抜きをすると、毛とともに表皮が剥がれるためです。

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 皮付きの肉を食べるためには、皮も柔らかく調理できないと食べることができません。ですので主に煮炊きするという料理向きです。イノシシ肉と皮は味付け前に煮込めばドンドン柔らかくなって行きます。大きくて、年齢を重ねたイノシシ肉は総じて硬いものですが、味は深みのある濃い旨味があり美味しいものです。加熱してすぐに食べる焼き肉やすき焼き等には向きませんが鍋料理や煮込みに向いています。煮込んで柔らかくなった皮は、こりこりぷりぷりしてコラーゲンたっぷしという食感でこたえられません。
 若くて太ったイノシシ肉はとても柔らかくジューシーで、どんな料理にも使えますが、皮はやはり時間をかけて煮込まないと食べることができません。焼き肉やすき焼きにするとそれこそ絶品なのですが、皮が硬くて残ってしまい食味の妨げになってしまいます。
 
 今回の獲物は若くて太ったよいお肉の持ち主でしたので、焼き肉、すき焼き用として使ってみようと、はじめて皮剥ぎ処理に挑戦することにしたのです。

 イノシシつかまえた-2へつづく