関東周辺の温泉入湯レポや御朱印情報をご紹介しています。対象エリアは、関東、甲信越、東海、南東北。
関東温泉紀行 / 関東御朱印紀行
〔 温泉地巡り 〕 赤城温泉
<プロフィール>
赤城の南面を流れ下る神沢川沿いに湧く湯宿4軒のこぢんまりとした温泉地。
赤城南麓には、赤城温泉郷(赤城、滝沢、忠治、一説に梨木)と総称される小規模な温泉地が点在していて、赤城温泉はそのなかで唯一の貴重な高温泉です。
「御宿 総本家」、「赤城温泉ホテル」、「花の宿 湯之沢館」、「新嶋館」(日帰り可か不明)の4軒の宿がある中規模温泉地ながら、なぜかとても地味なイメージがあります。
【写真 上(左)】 赤城鍋割山
【写真 下(右)】 赤城不動滝
前橋から近いわりには山ぶかい感じがあって、神沢川の渓流をとりまく各宿の佇まいもしっとりと落ちついています。なお、神沢川は一気に赤城山に突き上げる名にし負う急流で、源流部は”ガラン”といわれる険しい岩稜地帯です。
新緑の春や紅葉の秋もいいですが、ここの真骨頂は冬ではないでしょうか。(ただし、旅館によってはぬる湯浴槽となるので、持続戦覚悟ですが・・・)
上越国境の山なみの最南端にある赤城山あたりは冬場は気候の分かれ目。山づたいに流れてきた厚い雪雲も、このあたりまでくるとちぎれ雲となってどんどん消えていきます。抜けるような青空からはらはらと雪が舞い落ちてくる”風花”は、このあたりの名物です。
北側を急峻な山肌で囲まれたここは風陰に当たるらしく、上空はゴーゴーと北風吹きすさぶ音がするのに、わりに平穏で不思議に感じたことが何度かあります。
赤城温泉が属していた旧宮城村は、平成16年12月5日に前橋市に編入。
赤城南麓まで市域を広げた大前橋市は、さっそくこのエリアの観光地(通称”あかぎ・風ライン”)の積極的PRをはじめているので、このあたりも様変わりをみせてくるかもしれません。
赤城南麓の温泉は近年過渡期にあり、広大なキジ牧場をもつ梨木温泉は高級旅館に変貌し(現在日帰り不可)、赤城高原温泉や滝沢温泉はバージョンアップを遂げています。
赤城温泉も温泉地ごとお色直しして、”山あいの癒しのにごり湯”的なプロデュースをすればブレークする可能性を秘めていると思います。
お湯といいロケといい、個人的には関東近県で5指に入るほどの気に入りのお湯なので、適度に栄えていってほしいと思います。(流行っても日帰りやめないでね・・・(笑))
【写真 上(左)】 瀧澤不動尊
【写真 下(右)】 忠治の岩窟の案内板
<歴史>
開湯伝承は諸説あり、「あかぎ・風ライン」の紹介HPには「崇神天皇の第1皇子である豊城入彦命が発見したと言われる歴史の古い温泉」、(社)群馬県温泉協会のHPには「温泉の守護仏・薬師尊石像は応仁元年(1467)の作であり、元禄二年(1689)前橋藩主・酒井雅楽頭が『諸人人助けのため』として湯小屋を作らせた。」とあります。
さらに手元の古いガイド本には「奈良時代の書物に『赤城山に霊泉あり、傷ついた動物たちがここに集う』」とあり、新田義貞入湯のいわれもあるようなので、相当に古い歴史をもっているようです。
各旅館のHPをみると、「総本家」は元禄二年(1689)創業(「当家は1689年に時の前橋藩主、酒井候が領内総見地の折に金剛寺に本陣(当時の名主が当家の先祖)を構え・・・云々」)、赤城温泉ホテルでは、「元禄十三年(1700)、『あづまや』として創業」とあり、前橋市(宮城村合併後)の観光パンフには「開湯は元禄二年(1689)」とあるので、温泉地として本格的な装いを見せたのは元禄年間からと思われます。
リューマチや神経痛に特効があるとされ、その後も”上州の薬湯”といわれて近在の湯治客を集めていたようです。
「赤城温泉ホテル」館内に掲示されていた明治20年刊「上野國赤城山湯之澤温泉之全図」には、5軒の宿(東屋、新東屋、元嶋屋、新嶋屋、解読不明1軒)が記載されています。
比較的新しい「湯之沢館」でも明治13年創業(当時の屋号は「新東屋」)とのことですから、さりげに老舗旅館のメッカといえそうです。
【写真 上(左)】 「御宿 総本家」
【写真 下(右)】 「御宿 総本家」の露天
【写真 上(左)】 「赤城温泉ホテル」
【写真 下(右)】 「赤城温泉ホテル」の内湯湯口
【写真 上(左)】 「花の宿 湯之沢館」
【写真 下(右)】 「花の宿 湯之沢館」の浴場
<温泉>
takayamaさんの「群馬の温泉ページ」に掲載されている県薬務課作成の温泉統計(平成11年度温泉利用状況)によると、赤城温泉で自噴源泉2(内 利用源泉2)となっています。
各宿の温泉分析書で確認できた範囲では「島の湯」と「新島の湯」があるので、この2本が該当でしょう。なお、県資料には「深度は281m(宮城村赤城温泉)」との記載があります。
「総本家」や「湯之沢館」あたりは源泉か排湯かはわかりませんが、道ばたに温泉が流されていて、まわりの岩が茶色に染まっています。
【写真 上(左)】 「御宿 総本家」のよこの排湯?
【写真 下(右)】 「御宿 総本家」の露天の析出
各宿の使用源泉は掲示分析書からすると、総本家(島の湯/新島の湯)、赤城温泉ホテル(新島の湯)、湯之沢館(島の湯?)と思われます。
2本の源泉の総湧出量は約300L/min、これに対してさほど規模の大きくない旅館4軒ですから、源泉規模にみあった開発がされている優良温泉地ではないかと。実際、ほとんどの宿が源泉かけ流し浴槽をもっています。
新島の湯源泉は、Ca・Mg・Na-炭酸水素塩泉(重炭酸土類泉)、島の湯源泉は芒硝重曹泉とありますが、分析データからするとNa-炭酸水素塩温泉(重曹泉)。Ca^2+を比較的多く含んでいるので重炭酸土類泉的なお湯のイメージがあります。(分析データはレポ参照)
赤茶色のお湯のイメージは伊香保に似ていますが、成分が濃いためか浴感によりインパクトがあります。石灰華の析出をともなうお湯は、緑褐色のにごり湯で、土類と金気と炭酸のまじる複雑な味臭を楽しめます。
しっかりとした濃度感のあるお湯には、キシキシ感とからだの芯まで染みてくるような奥ぶかい浴感があり、浴後はほどよい湯疲れ感とともに肌がすべすべに。
”上州の薬湯”の名に恥じない、すばらしいお湯だと思います。
〔 2006年1月15日レポ〕
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