シャープ & ふらっと

半音上がって半音下がる。 それが楽しい、美しい。
思ったこと、感じたことはナチュラルに。  writer カノン

Tちゃんのサンタ

2007-12-22 15:41:20 | 人とのつながり
Merry Christmas Ⅲ

この話は、最も新しい、
去年と、今年のクリスマスの話になる。


昨年、一人の女性と知り合った。
病気がちの主婦さんだが、
娘さんのために、身体を張ってパートに出ている。

家庭の状況が思わしくなく、
彼女は、娘さんのために働き、
娘さんを守っていくことで必死。

しかし、真面目でしっかりした彼女には、
私も励まされ、また癒されてきた。
真の友達と呼べる人でもある。


娘さんの名は、Tちゃん。 小学4年生。
とても明るい、ハキハキした子だ。
私は、一度も会ったことがないのだが、
よく電話口で、元気な声が聞こえてくる。

一度、電話に出た時、
『こんにちはー!』と、大きな声で挨拶をしてきた。
彼女とともに、
この娘さんも、私にとっては元気の素である。


昨年のクリスマス。

彼女は、『Tには今年、何もプレゼントできない』
と、寂しそうに言った。
彼女の、去年の家計は苦しかったのだ。

しかし私は、小学生の子供には、
せめて、クリスマスを楽しんでほしいと思った。
プレゼントという、物だけが全てではないけれど、
イヴの夜、夢は見させてあげたいと思ったのである。

私は、
Tちゃんが好きな、キティちゃんのぬいぐるみと、
綺麗なチョコレートを買い、
クリスマスの前日、彼女に渡した。

彼女は、とてもクールな性格だ。
変に有難がることなく、
変に遠慮することなく、
『ありがとうございます』と言って、静かに受け取った。


彼女は、イヴの夜Tちゃんに、
『靴下ぶら下げときなさい』と言った。
Tちゃんは喜んで、枕元に下げた。

深夜、彼女は私があげたぬいぐるみとチョコを、
そっと靴下の中に入れた。

翌朝彼女は、
Tちゃんの、「わぁーっ」という歓声で目が覚めた。
そして、
「お母さん、サンタが来たよ」と嬉しそうに伝えたという。
彼女は、『良かったね』と答えた。

いや、それしか答えられなかった。


夜、メールが届いた。

『昨日はありがとうございました。
 Tは、朝からキティちゃんを離しません。
 私もチョコレート、一緒に戴きました。
 Tの前で、泣きながら食べました・・』

私は、メールを読んで、
(私のした事は、正しかったのかな・・)と思った。
同情したつもりではなかったが、
出しゃばったかな・・という思いを持った。

しかし、メールの最後にあった。
『カノンさん・・本当にありがとう。
 来年は私、頑張ります。
 Tのために、来年はいいサンタになります・・』


そして今年。
彼女は、毎日のようにパートに出て働き、
Tちゃんのために、とにかく頑張った。

家計が苦しいのは、変わらない。
しかし彼女には、去年なかった明るい表情があった。
そして、先日言った。

『今年のクリスマスは、何か買ってあげます。
 去年の、Tの嬉しそうな顔が忘れられなくて・・』


今年のTちゃんのサンタクロースは、
Tちゃんの一番近くにいる人である。
24日の夜、
今年は彼女も、去年と同じ言葉を、
まったく違った思いで言うだろう。

『靴下ぶら下げときなさい』と・・。