前回に続いて食べ物の話。
というか、食べ物に絡む人間の心理の話。
ある鰻屋には、鰻重の「上」と「並」がある。
お客さんは大半が「並」を注文する。
でも店側としては、なんとか「上」を売りたい。
そこである事をしたら、その後は「上」のほうが売れるようになった。
店は一体何をしたのでしょう?
という問題があった。
値段、量、器など「上」も「並」も一切変えていません。
大々的に広告を打った、というわけでもありません。
なぜでしょう?
答えは、「特上」を設けた。
人間、三段階に分かれたものを選ぶ時、
たいがいは真ん中を選ぶそうだ。
鰻は元来値段の張るものだし、
特上ではちょっと・・、でも並だと味が落ちるかな、
という心理から「上」を選ぶようだ。
これは、いろんな商売に通用するかもしれない。
もう30年前くらいだろうか、
TVで『料理の鉄人』という番組があった。
この中の、フレンチの鉄人・坂井宏行氏が、
ある大学の学園祭でクレープの露店を出すという企画があった。
鉄人の作るクレープ。もちろん多くの学生が列を成した。
メニューは3種類で、たしか¥1000・¥1500・¥2500の3つだと思った。
どれが一番人気だったか・・という以前に
当然ながらすべて完売した。
私はそれを見て、
「自分だったら一番安い¥1000のにする。
鉄人が作ったものを、安い額で食べられるならラッキー」と言った。
しかし妻は違った。
「一番安いのにしてそれが美味しかったら、
¥2500のはどんなに美味しいだろうと考えて後悔する。
なので私は最初から一番高いものにする。」
では先述の鰻屋に行ったらどうか。
持ち金があると仮定して考えたら、
私は、せっかくだから特上。
妻は、いつでもどこでも食べられる鰻なら並。
と、逆になると思う。
ネームバリュー、限定品、
元が高いもの、安いもの、
日常で食べられるか、それともめったに食べられないか、
それによって、選択は変わってくるようだ。
¥2500のクレープはどんな味だったのだろう?