夜がひしめき犯罪が近づいている。
こういう晩は、体が熱く火照って眠れそうもない。
先月の話になるが、最近馴染みになった西天満の乱歩バー(少なくとも私にとってはそうだ)に寄った時、マスターから来週店の6周年イベントをやるので是非と招待された。
通常営業ではあるが、いつもとは違ったテイストでおもてなしをするのでということだったが、まるで想像がつかなかった。
言われたのは、三輪明宏主演の映画『黒蜥蜴』をコンセプトに盛り上がるというので、この作品はDVD化はされていないがYOU TUBEにあがっているので是非観といてくれとのことだった。
https://www.youtube.com/watch?v=pyJgu3ClTYw
映画のチラシはうちにあった。乱歩企画で再上映されたときのやつだ。
『黒蜥蜴』
1968年作。三輪明宏がまだ丸山明宏と名乗っていた頃の作品で、監督は深作欣二。
三島由紀夫が友情出演しているが、彼はこの原作を戯曲化した張本人。
もちろん江戸川乱歩の『黒蜥蜴』を映画化したもので、私も浪人か大学生かの若い頃に全集で読んでいるハズだが細かい内容は忘れてしまっていた。
女賊“黒蜥蜴”と探偵明智小五郎の愛憎もつれる二大ナルシスト対決といったところで、今回のイベントを機に読み返そうと思ってさわりだけ読んでみたが、今となってはちょっとバカバカしくてしんどい内容だ。
ただ、映画は今回初めて鑑賞してみて、やはり三島氏の戯曲のエッセンスがフンダンに盛り込まれており、この演出がかったセリフ回しのナルシスト感が舞台劇を見てるようで(てゆーか、もともと舞台化してたものを後で映画化したみたいね)、『ピストルオペラ』同様なかなかクセになってくる。
三輪明宏のセリフ回しも、ニューハーフならではの彼女独特のナルシス美学を伴って、とてつもない世界観を表現している。
この作品は今でも舞台劇として、色んな劇団や女優さんが題材に取り上げて演じていて、やっぱそっち方面でなにか特別な魅力があるんでしょうな。
マスターお気に入りの一本であり、彼曰く、数ある乱歩映画の中でもかなり原作に忠実であるとこのこと。
この犯罪的で怪しげな周年祭には、今回たまたま大阪で別用で会っていたサムソンも同行した。
ちなみに彼は最近夢野久作の『ドグラ・マグラ』は読破したらしいが意外にも乱歩ヴァージン。
比較的健全な精神の持ち主なのでほんまに連れてってええんやろかと。
店の階段を上がっていくと、赤い壁には三島由紀夫、三輪明宏のピンナップ写真に紛れて、マスターが黒蜥蜴に扮している写真も貼り付けられていた。
やっぱこの人はナルだと思う。
こういう夜はいつもと違うようだ。
ドアを開けると普段より客が多く、店内はなんか猥雑なピンク色の照明に染まっていた。
男装をしたボーイッシュな女助手がひとり。マスター曰く私の“奴隷”(三日間限定)とのこと。
BGMは三輪明宏のベストヒット集。
秘密クラブさながらで、やはり変な気分になってくる。
いつもは12時過ぎてから店に寄っているので、他の常連客は皆目知らなかったが、カウンターは女性客多めで占められていてワイワイガヤガヤ盛り上がっていた。
黒いドレスの女装したマスターが女言葉で我々を迎えてくれた(この人一応新婚です)。
「あら、あましんさんのお連れ?そちらの方、こんな夜はお嫌い?」
乱歩作品を全く読んだことがなく、ましてや『黒蜥蜴』を見てないツレはどう反応していいかわからず若干困惑してる様子だった。
私も普段とは違う、黒蜥蜴に完全に成りきっているマスターにちょいひきぎみだった。
そしてその演出はなんだかオカマバーにいるような感覚に近く、あまり心地のいいものとは言えなかった。
それとも、美しいものを見ても素直に酔えない私の持って生まれた批評家ぶった感覚がそうさせるのであろうか?
ただ「ちゃんと“エジプトの星”もあるのよ」って、宝石のレプリカを取り出したときは吹き出してしまった。
まぁ今朝鑑賞したばかりやったからな。
BOX席をあてがわれ、相席になった向かいに座っていたカップルの女性にも「あら、あなた弾みのいい均整のとれた美しい体をしているわね。あとで私のお人形にしたいくらい」とカラんでいた。
この演出がここにいるどれだけの人に伝わっているのかは甚だ疑問だった。
相席の私より10ほど若そうな男性の客も聞くと乱歩作品は読んだことがないらしい。
でもそれをやりきっちゃうマスターの心臓の強さに感心してしまった。
まぁこの人根っからのエンターテイナーでこういうのがやりたくて仕方がないのだろう。
指紋よりも確かなもの。このやさしい二の腕の黒蜥蜴(どう見てもオッサンの腕だが)。
この6周年記念の特製黒蜥蜴タトゥーシールは来客者全員に配布された。
私はと言えば・・・
このイベントでなら相応しいだろうと、人間椅子のこの“屋根裏部屋の散歩者”ツアーTを初に着れたことを嬉しく思っていた。
ただ、今回私はひとつ大きな失敗をやらかしてしまった。
最初大阪でサムソンとあった時は実は人間椅子のTシャツを着てはおらず(あんなTシャツで大阪の繁華街ウロウロできまっかいな)、電気グルーヴのカジュアルなデザインのTシャツを着ていたのだ。
で、バーの周年祭に行く寸前にどこかの便所で椅子Tに着替えるつもりが、予定外にもサムソンが店に行くといったので来る途中いろいろ話し込んでて着替えることをすっかり忘れてしまっていたのだ。
店に入ってBOX席に座ったとたんそのことに気が付き、今ならまだ間に合うとすぐに立ち上がってトイレに駆け込み椅子Tに着替えた次第である。
で、戻って再びBOX席に腰を下ろすと、向かいに座っていた男性客が「あれ?さっき電気グルーヴのTシャツ着てませんでした?」と不思議そうに話しかけてきたではないか!
この妖しい薄暗い照明の中、あんな一瞬の間に私の着ていたTシャツを記憶にとどめているとは!!この男、タダものではないな!!
ひょっとして、明智!?
バツの悪いままお茶を濁してよくよく話していたら、実はその男性、かなりの電グル好きだというのがわかった。
だからすぐにTシャツの電グルのロゴが目に入り「うわ、電グル好きの客が来た!」って気づいたのだ。
まぁその後、彼とは電グル話で大いに盛り上がり結果オーライ?
ちなみにこちらは燻製にされた三島由紀夫らしい。
マスターの家にあったGI人形の軍服をひっぺがしてお手製のフンドシを巻いたとか。
ほんとうに細かいところまで演出が凝っている。
0時を過ぎて、サムソンも帰宅し客もだいぶひいてカウンター席に移ってからはぼっちな状態になりがちだったが、隣にいた女性客と筋少や空手バカボンの濃い話ができたのはまぁよかった。
まさか「バカボンと戦慄-Staress&バカボンBlack-」の歌を知ってる人に出会うとは思わなんだ。
とまぁトータル的にはナゴム系列趣味の話で盛り上がったナゴやかな?夜となった。
私としてはオシャレな店を見つけたという感じだったが、やはりちょっと風変わりで一種異様な感覚の持ち主の人間が引き寄せられる店なのかしら?
マジックハンドを手に黒蜥蜴クライマックスのキメのポーズをとり悦に浸るマスター。
やっぱナルだこの人。
決して気持ちのいいものではなかったが、いやいや、なかなかこのバーの店名に相応しい妖艶で犯罪的な周年祭であった。
もっと早く映画『黒蜥蜴』を鑑賞して精観しておれば、三島由紀夫をイメージした裸人形を見て、「おや、不思議不思議!この人形にはウブ毛が生えている!」みたいな気の利いたツッコミをかますこともできたろうにと今更ながら悔んでいる。
さて、来年はどんな犯罪的な周年祭が待ちうけているのか?
今から楽しみである。
今日の1曲:『黒蜥蜴の唄』/ 三輪明宏
こういう晩は、体が熱く火照って眠れそうもない。
先月の話になるが、最近馴染みになった西天満の乱歩バー(少なくとも私にとってはそうだ)に寄った時、マスターから来週店の6周年イベントをやるので是非と招待された。
通常営業ではあるが、いつもとは違ったテイストでおもてなしをするのでということだったが、まるで想像がつかなかった。
言われたのは、三輪明宏主演の映画『黒蜥蜴』をコンセプトに盛り上がるというので、この作品はDVD化はされていないがYOU TUBEにあがっているので是非観といてくれとのことだった。
https://www.youtube.com/watch?v=pyJgu3ClTYw
映画のチラシはうちにあった。乱歩企画で再上映されたときのやつだ。
『黒蜥蜴』
1968年作。三輪明宏がまだ丸山明宏と名乗っていた頃の作品で、監督は深作欣二。
三島由紀夫が友情出演しているが、彼はこの原作を戯曲化した張本人。
もちろん江戸川乱歩の『黒蜥蜴』を映画化したもので、私も浪人か大学生かの若い頃に全集で読んでいるハズだが細かい内容は忘れてしまっていた。
女賊“黒蜥蜴”と探偵明智小五郎の愛憎もつれる二大ナルシスト対決といったところで、今回のイベントを機に読み返そうと思ってさわりだけ読んでみたが、今となってはちょっとバカバカしくてしんどい内容だ。
ただ、映画は今回初めて鑑賞してみて、やはり三島氏の戯曲のエッセンスがフンダンに盛り込まれており、この演出がかったセリフ回しのナルシスト感が舞台劇を見てるようで(てゆーか、もともと舞台化してたものを後で映画化したみたいね)、『ピストルオペラ』同様なかなかクセになってくる。
三輪明宏のセリフ回しも、ニューハーフならではの彼女独特のナルシス美学を伴って、とてつもない世界観を表現している。
この作品は今でも舞台劇として、色んな劇団や女優さんが題材に取り上げて演じていて、やっぱそっち方面でなにか特別な魅力があるんでしょうな。
マスターお気に入りの一本であり、彼曰く、数ある乱歩映画の中でもかなり原作に忠実であるとこのこと。
この犯罪的で怪しげな周年祭には、今回たまたま大阪で別用で会っていたサムソンも同行した。
ちなみに彼は最近夢野久作の『ドグラ・マグラ』は読破したらしいが意外にも乱歩ヴァージン。
比較的健全な精神の持ち主なのでほんまに連れてってええんやろかと。
店の階段を上がっていくと、赤い壁には三島由紀夫、三輪明宏のピンナップ写真に紛れて、マスターが黒蜥蜴に扮している写真も貼り付けられていた。
やっぱこの人はナルだと思う。
こういう夜はいつもと違うようだ。
ドアを開けると普段より客が多く、店内はなんか猥雑なピンク色の照明に染まっていた。
男装をしたボーイッシュな女助手がひとり。マスター曰く私の“奴隷”(三日間限定)とのこと。
BGMは三輪明宏のベストヒット集。
秘密クラブさながらで、やはり変な気分になってくる。
いつもは12時過ぎてから店に寄っているので、他の常連客は皆目知らなかったが、カウンターは女性客多めで占められていてワイワイガヤガヤ盛り上がっていた。
黒いドレスの女装したマスターが女言葉で我々を迎えてくれた(この人一応新婚です)。
「あら、あましんさんのお連れ?そちらの方、こんな夜はお嫌い?」
乱歩作品を全く読んだことがなく、ましてや『黒蜥蜴』を見てないツレはどう反応していいかわからず若干困惑してる様子だった。
私も普段とは違う、黒蜥蜴に完全に成りきっているマスターにちょいひきぎみだった。
そしてその演出はなんだかオカマバーにいるような感覚に近く、あまり心地のいいものとは言えなかった。
それとも、美しいものを見ても素直に酔えない私の持って生まれた批評家ぶった感覚がそうさせるのであろうか?
ただ「ちゃんと“エジプトの星”もあるのよ」って、宝石のレプリカを取り出したときは吹き出してしまった。
まぁ今朝鑑賞したばかりやったからな。
BOX席をあてがわれ、相席になった向かいに座っていたカップルの女性にも「あら、あなた弾みのいい均整のとれた美しい体をしているわね。あとで私のお人形にしたいくらい」とカラんでいた。
この演出がここにいるどれだけの人に伝わっているのかは甚だ疑問だった。
相席の私より10ほど若そうな男性の客も聞くと乱歩作品は読んだことがないらしい。
でもそれをやりきっちゃうマスターの心臓の強さに感心してしまった。
まぁこの人根っからのエンターテイナーでこういうのがやりたくて仕方がないのだろう。
指紋よりも確かなもの。このやさしい二の腕の黒蜥蜴(どう見てもオッサンの腕だが)。
この6周年記念の特製黒蜥蜴タトゥーシールは来客者全員に配布された。
私はと言えば・・・
このイベントでなら相応しいだろうと、人間椅子のこの“屋根裏部屋の散歩者”ツアーTを初に着れたことを嬉しく思っていた。
ただ、今回私はひとつ大きな失敗をやらかしてしまった。
最初大阪でサムソンとあった時は実は人間椅子のTシャツを着てはおらず(あんなTシャツで大阪の繁華街ウロウロできまっかいな)、電気グルーヴのカジュアルなデザインのTシャツを着ていたのだ。
で、バーの周年祭に行く寸前にどこかの便所で椅子Tに着替えるつもりが、予定外にもサムソンが店に行くといったので来る途中いろいろ話し込んでて着替えることをすっかり忘れてしまっていたのだ。
店に入ってBOX席に座ったとたんそのことに気が付き、今ならまだ間に合うとすぐに立ち上がってトイレに駆け込み椅子Tに着替えた次第である。
で、戻って再びBOX席に腰を下ろすと、向かいに座っていた男性客が「あれ?さっき電気グルーヴのTシャツ着てませんでした?」と不思議そうに話しかけてきたではないか!
この妖しい薄暗い照明の中、あんな一瞬の間に私の着ていたTシャツを記憶にとどめているとは!!この男、タダものではないな!!
ひょっとして、明智!?
バツの悪いままお茶を濁してよくよく話していたら、実はその男性、かなりの電グル好きだというのがわかった。
だからすぐにTシャツの電グルのロゴが目に入り「うわ、電グル好きの客が来た!」って気づいたのだ。
まぁその後、彼とは電グル話で大いに盛り上がり結果オーライ?
ちなみにこちらは燻製にされた三島由紀夫らしい。
マスターの家にあったGI人形の軍服をひっぺがしてお手製のフンドシを巻いたとか。
ほんとうに細かいところまで演出が凝っている。
0時を過ぎて、サムソンも帰宅し客もだいぶひいてカウンター席に移ってからはぼっちな状態になりがちだったが、隣にいた女性客と筋少や空手バカボンの濃い話ができたのはまぁよかった。
まさか「バカボンと戦慄-Staress&バカボンBlack-」の歌を知ってる人に出会うとは思わなんだ。
とまぁトータル的にはナゴム系列趣味の話で盛り上がったナゴやかな?夜となった。
私としてはオシャレな店を見つけたという感じだったが、やはりちょっと風変わりで一種異様な感覚の持ち主の人間が引き寄せられる店なのかしら?
マジックハンドを手に黒蜥蜴クライマックスのキメのポーズをとり悦に浸るマスター。
やっぱナルだこの人。
決して気持ちのいいものではなかったが、いやいや、なかなかこのバーの店名に相応しい妖艶で犯罪的な周年祭であった。
もっと早く映画『黒蜥蜴』を鑑賞して精観しておれば、三島由紀夫をイメージした裸人形を見て、「おや、不思議不思議!この人形にはウブ毛が生えている!」みたいな気の利いたツッコミをかますこともできたろうにと今更ながら悔んでいる。
さて、来年はどんな犯罪的な周年祭が待ちうけているのか?
今から楽しみである。
今日の1曲:『黒蜥蜴の唄』/ 三輪明宏
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