AMASHINと戦慄

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DIYサウンド

2020年09月06日 | ♪音楽総合♪
フィオナ・アップルが新作を出してくれた!

前作『The Idler Wheel』から約8年ぶりである。
まぁ前作が7年越しで、前々作も確か7年越しと、フィオナは2000年以降気が向かないとなかなか音楽活動をしない気分屋な人ってのは、この長いサイクルを通してなんとなく分かってるし、インタビューでも「いつでもミュージシャン廃業しますよ」ってな感じなので、もうアルバム作ってくれただけでラッキーという感覚になってる。


この8年間は、たまに海外でのライブ映像が回ってきたりする以外は、ドラッグでパクられたニュースとか、17歳の時に作ったファーストシングル曲「Criminal」の全収益金をなんかの基金に寄付するなど、相変わらず自由奔放でひきこもりな日々を送っていた様子。
そういえば、ボブ・ディランの新作にも参加してるとかいないとか。

自宅で愛犬と戯れるフィオナ。暇なのか、こういうプライベートな映像は割とアップしてくれる。



新作は、すでに4月くらいからストリーミング配信されていたが、さすがはフィオナ、洋楽が廃れた日本ではCharaが大絶賛していたくらいだけど、海外メディアでの評判がかなり凄いことになってた。

まず、辛口で有名らしい米音楽メディアPitchforkにて10年ぶりの10点満点を叩き出したんだとか。
まぁよう知らんけど、各国音楽メディアも本作を高評価しているらしく、フィオナが作るもんやからまぁそれぐらい普通やろと。
あとデイヴ・グロールが「コロナ禍を救ってくれた作品」などと評していたとか。

音源聴く前に入ってきた情報としては、「なんやねん!このジャケットは?」っていうくらいホラー感漲る安っぽいジャケット(フィオナの自作?)。
この貞子アングルなんやねん!
あと、本作では亡くなった愛犬の骨を楽器として使用しているとか、まるで原理主義ブラックメタルバンドさながらのレコーディング手法といい、アルバムへの期待と同時に、フィオナの益々の精神面における不安定さへの憂慮が尽きなかった。


CD盤には愛犬の写真。前飼ってた愛犬が死んだ時はツアーをキャンセルするほどの愛犬家。



今回は、フィオナ初のセルフプロデュース作で、レコーディングも自宅に機材を持ち込んで録ったとか。
ほぼ1テイク録りで、とにかく思いつくまま自分でドラム叩いたり、家の家具を叩いたりと、もうやりたい放題のレコーディング方法だったとか。
このやり方は、このコロナ禍時代ならではのレコーディング方法とも言えるが、豪邸一軒を貸し切ってそこに機材を持ち込んで音録りをしたレッチリの『BLOOD SUGAR SEX MAGIC』のレコーディング風景(『Funky Monks』参照)を彷彿とさせる発想の広がりの可能性をも感じさせる。

音源を聴いてみて、奇をてらったとか、実験的な何かを意図したというのではなく、衝動に突き動かされて本能の赴くままに作り上げてしまったという感じ。
よって、今までも割と即興性のあるシンガーであったフィオナだが、今回はそういう部分がより一層際立った、この沈黙の8年間の鬱憤が一気に大爆発した、今までで一番感情剥き出しの作品に仕上がったかと。
つかこのレコーディング模様の映像あったらいいのにな。


まずM1「I Want You To Love Me」。これはイントロからフィオナのしなやかなピアノ伴奏の、孤独感に満ちたディープな歌唱の、従来のフィオナらしい楽曲で安心して聴いてられるなぁと思いきや、終盤で突如ピアノが乱れ出し、「ど、どうしたんや!?」って言うくらいフィオナがトチ狂った奇声を発し出すのだ。
いきなりのこの壊れっぷりには少々戸惑いを覚えた。

で、M2「Shameika」では軽快なピアノ伴奏の、本作中最もキャッチ―な楽曲ではあるけれど、割と強引で乱暴な歌い方で、歌の無いところではずっとなにか病的な唸り声をあげていてなかなかクレイジーだ。

M3のタイトル曲「Fetch The Bolt Cutters」では、自宅録音ならではの生々しさが伝わってくる、フィオナの生活空間が垣間見られるような、言うなればフロイドの「アランのサイケデリック・ブレックファスト」を彷彿とさせる雰囲気の曲。中盤からフィオナの愛犬がずっと奥の方で吠えてて(これは偶然らしく、そのままこの音源を採用したのだとか)おもしろい。

まぁ全編に渡って驚異的なのは、フィオナの徹底したビートに対する拘りと、これだけ奔放なリズム主体の作品にして、フィオナの音楽的教養の高さを感じずにはおれない多重録音による芸術的ともいえるコーラスの絡み技の妙である。
アフリカ音楽のような原始的なビートが凄まじいM5『Relay』や、不穏な打楽器音とタンゴ風なステップ音で始まる、本作での個人的ハイライトとも言うべきフィオナのこれまでで一番感情剥き出しのドス声の利いた鬼気迫るM7「Newspaper」。この曲でもコーラスが実に効果的に機能している。
この曲、ライブになったらどうなるんやろう・・・軽く殺傷事件起こるんやないか?




あと、呆けたように歌うブルース調のM8「Ladies」は、映画『ナチュラル・ボーン・キラーズ』でのジュリエット・ルイスのラリった演技を彷彿とさせるし、Portishead風の不穏な質感が秀逸なM9「Heavy Balloon」、そして、本作中最も変化自在な展開のアカペラナンバーM11『For Her』では、中盤で突如ゴスペル調になったりと、フィオナの頭の中はほんとどうなっているのかと。
でもこれがちゃんと音楽として成立してるんだよなー、ほんとこの人天才としか言いようがない。


先月ジョン・ボーナムが表紙のロキノンを思わず購入してしまったのだが(この雑誌ボンゾ好っきゃなー)、それは本誌にフィオナ・アップルのインタビュー記事が掲載されていたからにほかならない。



本来ならフィオナを表紙にするのが筋だと思うが、これが洋楽雑誌が売れない、いまやオッサン向け雑誌と化した日本の現状である。
まぁフィオナの新作は、ドラム&リズムを焦点に当てた今回のロキノンのテーマに適っているともいえるが、従来の日本のロキノン読者層からも進化しすぎたフィオナは見放された感あるし、本作が日本で売れるかは前作同様大いに疑わしい。

そうなってくると、またフィオナの来日が難しくなってくる。
(まぁ私も前作、前々作と、日本盤買ってないけど)

でもこんなライブ感のある生々しいアルバム聴いてたら、ほんま観たくてしょーがなくなってくるんだよ!

だから、コロナ禍が収まった暁には、みんなでフィオナを呼ぼう!日本へ!



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