AMASHINと戦慄

~STARLESS & AMASHIN BLOG~
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二十一世紀の人間椅子(18禁)

2020年09月18日 | 二酸化マンガ
先週ツイッターで“人間椅子”というキーワードがトレンド入りしており、まぁ私のように「え?バンドの!?」って、早合点した方がけっこういたかと思われます。
「そんなわけないやろ!」と思われるかも知れませんが、今や人間椅子は昔では考えられないくらいの売れっ子バンドになっていますので、2013年オズフェストの歴史的快挙以来、そういうことが起こっても全然不思議じゃなくなってるんです。

だって、ヤングギターの表紙も飾ってんですよ!!



でもフタを開けてみると、どうやら江戸川乱歩の短編『人間椅子』をドラマ化したのがNHK総合で深夜に放映されたらしく、それが話題に昇っていたというのが真相でした。
しかも主演が満島ひかりさん。
こんな大女優さんを使って、あんな変態エロ話をドラマ化し放映するなんて、NHKもなかなか攻めてはるなぁ~と。




『人間椅子』とは、奥様の腰かけている椅子の中に潜り込み、その不可思議な感触を密かに味わいたいという妄想が生み出した江戸川乱歩の初期の傑作小説で、ウブだった高校生の頃これを読んだ時は、そのネチッこい文章、エロス、犯罪感、サスペンス性、そして最後のユニークすぎるオチに幻惑されまくって気が変になったのを覚えております。


日本のハードロックバンド、人間椅子もこの江戸川乱歩の小説名からきてるのは言わずもがな。



で、先日、私はついに禁断のあのブツを入手してしまった!

トップ写真のコッテコテのエログロいカヴァーの書物は、以前にも紹介したカルト作家大越孝太郎氏のマンガ『猟奇刑事マルサイ』という作品である。
この作品、実は歴とした成人向けの18禁エロマンガに属するもので、2002年から2004年にかけて『ニャン2倶楽部』というかなりマニア向けのエロ雑誌にて連載されていたものである。

それにしても、まさかこの歳になってエロマンガを購入するとは思わなかった。
いや、買うとしてもまず嫌悪感しか湧いてこないこんなグロいカヴァーのものを好きこのんで選んだりはしない。
「なんだよ?どーせまたクトゥルー神話関連のものだろ?」
まぁ十分にありえるが、その類のエロマンガは全然珍しくなくけっこう出回っているが、はっきりいってそっち方面のクトゥルーには興味がない。


本書は、拉致、監禁、SM、ラブドール、カニバリズム・・・・と、ちょっと私のようなウブな感覚ではついていけないような、数々の変態的倒錯者の話が網羅されていて、その大越氏のサディスティックなエログロ全開の残虐描写にはいささかの躊躇いや容赦がない。
まぁはっきりいってエロマンガとして読むには、全くといって欲情をそそられるものではない。
それでも私が購入に踏み切ったのは、本書に江戸川乱歩の『人間椅子』をモチーフにした物語、『人間按摩椅子』が収録されていたからに他ならない。




原作『人間椅子』は、飽くまであるもの書きの妄想にとどまった話(ていうかドッキリ?)であるが、この『人間按摩椅子』は、それを実行に移してしまう男の話なのである。




平成の世の話なので、按摩椅子(電動マッサージチェア)がすでに普及してる時代の話ということで、その変態行為を実践する男が按摩椅子製造者という設定。




それにしても、よく出来た話である。
乱歩の時代だと、電動マッサージチェアはまだ普及してないから、中に入ってる人間は気取られないように微妙に体を動かすことしか出来なかったが(言うなれば、乱歩の妄想した人間椅子は、マッサージチェアの先駆けともいえる)、人間按摩椅子ならば、椅子の中で堂々と激しく触手を蠢かすことが出来るのである。
ああ、なんという変態!!


ところで、もうお気づきの方もいらっしゃると思われるが、この椅子職人の男、誰かに似てやしないだろうか?
黒縁メガネにこの髭面、寝転んでる男の傍らには人間椅子の12th『瘋痴狂』のCDが転がっている。




そう、人間椅子のギタリスト和嶋慎治氏その人である。
(今から15年くらい若いときのね)
一応名前は“和絞”としてあるが、これはもう明白であるかと。

てか作業着の胸んとこからこれ見よがしに「人」のロゴが見えてるやおまへんか!



いや、もうこれ、完全にワジーですよね。



それにしても、大越氏のこの所業は大胆不敵としかいいようがない。
乱歩の名著『人間椅子』をさらに発展させ、その物語の主人公にその人間椅子をバンド名にしているバンドのギタリストである和嶋慎治氏本人を据え、彼自身を人間椅子にしちまうという・・・
言うなれば、これは全人間椅子ファンの長年の夢を、このエロマンガの世界で叶えてくれたといっても過言ではない。


ただ、和嶋氏本人はこれを読んでどう思っただろうか?
さすがに怒ったのではないか?
だって自分がエロマンガの主人公にされて、好き勝手に描かれてんですよ!
しかもマニア向けのエロ雑誌に掲載されて・・・
これは大越氏、名誉棄損で訴えられても仕方がないかと・・・・


で、裏帯を見ると、和嶋慎治氏によるコメントが寄せられていた。
公認だったのね。



本作の中では割とソフトリーな「人間按摩椅子」も含め、各々の物語も構成がしっかりしていて、ほんとうにエグくて残虐描写もドギツいんだけど、とにかく大越氏の描く物語は読み進まずにはおれない惹きつけるなにかを持っている。
苦手苦手とは言っていても、どこか残酷で非道なモノに魅かれてる自分がいたりする。


和嶋氏のコメントの言葉が脳裏をよぎる。


「あなたは人として立派に倒錯しています」



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