AMASHINと戦慄

~STARLESS & AMASHIN BLOG~
日々ブログレッシヴに生きる

快傑蜃氣樓

2020年05月06日 | 二酸化マンガ
昨年、魅惑の稀覯本『薔薇と拳銃』を奇跡的に入手してからというもの・・・・

無謀にも、谷弘兒先生の作品を探し求めて止まない日々を送り続けている。
初期作品は陰溝蠅兒名義で執筆なさってたというし、”兒”という字の変換の仕方もわからない・・・
いつもコピペだ。

嗚呼・・・

谷弘兒作品蒐集は、ヘタしたら私の生涯のライフワークになるやもしれない。

とにかく不出世のマイナー作家ゆえに、単行本化されてるものも少なく、もちろんほとんどが絶版で、全然出回っていないというのが現状。
まぁ青林堂から再編刊行された『薔薇と拳銃』の単行本は、まんだらけとかで探したら割と手に入りやすいかと。


今回ご紹介する谷弘兒連続活劇漫画3部作の一つ、『快傑蜃氣樓(ミラージュ)』などは、意外とAmazonや楽天で普通に購入できたりします。



本編である『快傑蜃氣樓』は、雑誌ガロに1980年9月~11月にかけて掲載された作品で、2002年に青林工藝舎から再編刊行されている。
まぁ今回も谷先生、もうどうしようもなくやりたい放題の、ひっちゃかめっちゃかな冒険活劇を無邪気に描いておられます。
ほんと、しょーがねぇな~って感じ。

『薔薇と拳銃』に比べて、エロ・グロは今回いたって控えめ。
いわゆる怪傑ゾロみたいな覆面を被った正体不明のヒーローが、悪の組織に敢然と立ち向かうお話なんですが。
いうなれば、『新青年』に載ってる昭和初期の少年探偵団的なノリといいましょうか。


舞台はやはり、横浜・港町13番地無国籍横丁。
頽廃的な者どもが集うパブ『蝙蝠亭』から物語が始まる。




パブ『蝙蝠亭』のカウンターには、やはり私立探偵ハニー・サテンが座っている。
今回も『薔薇と拳銃』の時と同じような役割(つまり大して役に立たない)。




そしてハニーがピンチの時に、必ず颯爽と現れる我らがミラージュ!
その実態とは!?

まぁ思うにハニーのストーカーというのが一番正しいかと。




それにしても、このミラージュ・・・・
キザったくヒーローぶることには全くブレない男なんだが、立ち振る舞いとは裏腹に、全編通してビックリするくらい事件を解決しないという。
谷先生は、おそらくこれ、読者を笑わそうと思って描いているとしか思えんのですよ。
特に終盤には、もうふざけてるとしか思えないB~C級SF映画ばりのドンデン返しの結末(オチ)が用意されている。

劇中いちいち挿入される怪傑ミラージュのテーマ(笑)。



で、結局谷先生は、これが一番描きたいんですよね。
そう、エロとグロが交差する阿鼻叫喚の図。


この暗黒の帝王ドクトル・アレキサンダー・サミノルフのこの恍惚の叫びこそが谷先生の声なんですね。

そして、この蛸のような触手を備えた怪獣X。
こいつは、外宇宙より隕石に乗って地球に飛来したバケモノという設定。
言わずもがな、H.P.ラヴクラフトの『宇宙からの色』、あるいは『狂気の山脈にて』をモデルにしたSFホラー映画『遊星からの物体X』を元ネタにしているのは、明白ですわな。


まぁでも、この作品をクトゥルー漫画と分類するのはいささか抵抗を禁じえない。
これといったクトゥルー用語も出てこないし、あまりにもおざなりな結末を含め、この稚拙すぎるストーリー展開には宇宙的な何かを感じ取ることはできなかった。
それに、蛸の触手が出たからといってなんでもかんでもクトゥルーものにするという安易な慣習には、もういい加減飽き飽きしている。

でも安心して下さい。
これから紹介しようと思っている同時収録のアーティスティックな短編に、なんぼでもクトゥルー神話要素が出てきますから・・・・

それは次回のお楽しみということで。


怪傑ミラージュのテーマ 最終笑。



ちなみに本書ラストに収録されている2001年作の短編作に、再び私立探偵ハニー・サテンが登場するのであるが、約20年も経っているからか、とても同一人物とは思えないキャラ設定で、まぁたいして私立探偵らしいことしてないところは一緒。




【おまけ】

当時桜井文庫から出版された初版の『怪傑蜃気楼』はなんと文庫本で(トップ写真)、同時収録されてる『女戦士セアラ』には、マンガ化された谷弘兒先生の自画像も描かれててとてもレア。
内容は、田中圭一のマンガを遥かに凌駕する変態・破廉恥ファンタジー。
ただ、画が最高にポップでかわいい。

BIG BROTHER & THE HOLDING COMPANYの『CHEAP THRILL』のジャケ画を彷彿とさせるアメコミ感が素晴らしい。永久保存モノ。


てゆーか、当時この作品を連載してた出版社てほんまあったんかいな・・・

正気の沙汰やないでしかし。

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