予約したフルトヴェングラー・ザ・レガシーが待ち遠しい。慢性肺炎で入院している母に頼まれて、フランツ・リスト名曲集、スクリャービンのピアノ作品集、ヨハン・シュトラウス・コンサート、ラヴェル管弦楽集、グリーグ抒情小品集、計三二三〇円を中古で買う。
母は「死因を辿る、大作曲家たちの精神病理のカルテ」で読んだ作曲家たちの曲が入院中のつれづれにどうしても聞きたくなって、フランツ・リストのピアノ曲を買ってきて、スクリャービンも聞きたい、ヨハン・シュトラウスのワルツも良いわね、ラヴェルのボレロも要るわと私に注文するのである。
私は仕方がないのでバスで病院から町まで行き、買い物メモを見ながらリクエストを買い揃えて病院に戻ったのである。
フランツ・リスト名曲集はサイモン・バルト演奏、スクリャービンはエッカルトシュテイン演奏、ヨハン・シュトラウスはボスコフスキー指揮ウィーンフィル、ラヴェル管弦楽集はアンセルメの二枚組、グリーグはアルテ・ノヴァの廉価盤である。母に差し入れしたら歓声を挙げて、これでよく眠れると言っていた。
その母もようやく退院し、父の見舞いに足繁く通っている。
春は新生活が始まる憂鬱な季節だが、アラウのピアノ曲や、予約したフルトヴェングラー・ザ・レガシー、ジンマンのマーラー交響曲全集を聞いて、この日々を乗り越えたい。昨日久しぶりにペーター・マーク指揮のベートーヴェンを聞いたが光があって良かった。
ハイティンクのLSOとのベートーヴェン交響曲全集も、デッドな音響の会場での収録だが、ティンパニーの強打、軽快なテンポで元気なハイティンク節を堪能できる。
ハイティンク盤は音はいいのだが、変則的な曲の組み合わせ、妙な趣味の人体写真のジャケットなど奇をてらった面も見られる。
今日はサヴァリッシュ指揮のメンデルスゾーン交響曲全集を聞いた。特に影のある「スコットランド」が心に染みた。他には「宗教改革」や「イタリア」もいい。
薄暗い闇の中から桜咲く川辺の道へこの曲で出る