クナッパーツブッシュのブルックナー選集を入手した。
ミュージック&アーツ社6枚組。交響曲3番、4番、5番、7番、8番、9番。
録音は1940年代、1950年代で音質は貧弱。
いっそ売ってしまおうかとも考えた。
だが演奏は、これが底抜けいいのである。
2011年のリマスタリングで雑音はほとんどない。
弦楽器はすすり泣き、管楽器は咆哮し、何とも捨てがたい。
ブルックナーと言えば私はギュンター・ヴァント派である。
ギュンター・ヴァントはDVDやCDで堪能してきた。
クナッパーツブッシュのブルックナーと言えばスタジオ盤の八番しか知らなかった。
だがライヴ録音は貧しい音響の向こうから
ブルックナーを聞いた時のあの感じ、
深淵をのぞいてしまったような、
巨大なものに触れたような畏怖のような感覚が
確かに伝わってくるのである。
クナッパーツブッシュと言えば絶滅した恐竜のような
大見えを切った大時代的な演奏と言われている。
ライヴ盤は演奏もときどきヨレてしまい、
よろしくない音が聞こえてきたりするのだが、
クナッパーツブッシュのブルックナーの轟音が辺りに響き渡る。
これは凄い。
やはり売らないで繰り返しブルックナー降臨体験に浸りたい。
八番が一枚に収まっているのも魅力的。この八番が素晴らしい。
氷河期の眠りを終えた恐竜の背筋も凍る咆哮の冴え