人事パーソン要チェック! 新刊ホンネ書評 - [55] 『新版 グロービスMBAリーダーシップ』(ジンジュール) - goo ニュース
2014年9月25日(木)15:45
(グロービス経営大学院 ダイヤモンド社 2014年4月)
2006年刊行の『MBAリーダーシップ』の8年ぶりの改訂新版です。前半約160ページの第 部「理論編」と、後半約80ページの第 部「実践編」から成りますが、各節のテーマごとに冒頭にケーススタディが配されていて、それを受けて理論や実践についての解説がなされるというスタイルを取っているため、テキストでありながら"読み物"のようにも読めます。
第 部「理論編」では、第1章を「リーダーシップ理論の変遷」として、特性理論から始め、行動理論、条件的合理論、交換・交流理論を紹介し、さらに変革のリーダーシップ、サーバント・リーダーシップ、オーセンティック・リーダーシップについて解説しています。
続く第2章は、「リーダーシップと関連する組織行動」として、リーダーの持つパワーの源泉が人間の心理に与える影響、良きフォロワーとして振る舞うこととリーダーの要件との関係、ネットワークの構築力とリーダーシップ発揮との関係、非常時のリーダーシップの要件といったことを解説しています。第3章の「リーダーシップの開発」では、リーダーシップ開発を組織的な取り組みとして体系化する方法や、今後のリーダーシップ開発の方向性について論じています。
第 部「実践編」では、「理論編」で学んだ考え方をいかに行動に落とし込んで実践するかを、第4章「リーダーシップを磨く」と第5章「リーダーシップを破棄する」に分けて示していますが、各テーマの冒頭のケースが経営大学院での双方向の授業内容を再現したものとなっており、この部分は、企業内インストラクターがリーダーシップ研修を企画する際の参考になるかもしれません。
企業内インストラクターとしての役割を担うか否かに関わらず、人事パーソンにリーダーシップ理論の基礎知識は必要であると考えます。そのために巷に溢れるリーダーシップに関する書籍を手当たり次第に読むというのも非効率であるし、といって、正解を一つの理論フレームに求めすぎるのも、個別の状況への応用が効きにくいという難点があるように思われます。
したがって、こうしたテキスト的な書籍によってリーダーシップ理論の体系を把握した上で、自らが関心を持った理論については、その提唱者が直接書いた書物に読み進み、そのエッセンスを深耕していくのが最も効率的であるように思います。また、リーダーシップ理論は、理論をそのまま現実に適用するのではなく、エッセンスを応用の足掛かりとするというスタンスになるのではないかと考えます。こうしたテキスト的な書籍を、実際に社内研修等に応用できるか、応用した場合はどのような使い方になるのか――などイメージしながら読むことは、そうした思考訓練を兼ねることにもなるかと思います。
本書がこの種のテキストとして最良であるとは言い切れないでしょうし、本書一冊でこと足りるということもないでしょう。リーダーシップ理論(第1章)と組織行動論(第2章)で合わせて120ページというのは、コンパクトではありますが、やや"浅い"と言えなくもありません。ただし、そうした初期段階で読むべき何冊かのテキストのうちの一冊としては、比較的オーソドックスではないかと思います。
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※本記事は人事専門資料誌「労政時報」の購読会員サイト『WEB労政時報』で2014年6月にご紹介したものです。
【本欄 執筆者紹介】和田泰明 わだ やすあき
和田人事企画事務所 人事・賃金コンサルタント、社会保険労務士
1981年 中堅広告代理店に入社(早稲田大学第一文学部卒)
1987年 同社人事部へ配転
1995年 同社人事部長
1999年 社会保険労務士試験合格、2000年 行政書士試験合格
2001年 広告代理店を退職、同社顧問(独立人事コンサルタントに)
2002年 日本マンパワー認定人事コンサルタント
2003年 社会保険労務士開業登録(13030300号)「和田人事企画事務所」
2004年 NPO生涯教育認定キャリア・コンサルタント
2006年 特定社会保険労務士試験(紛争解決手続代理業務試験)合格
1994-1995年 日経連職務分析センター(現日本経団連人事賃金センター)「年俸制研究部会」委員
2006年- 中央職業能力開発協会「ビジネス・キャリア検定試験問題[人事・人材開発部門]」策定委員
2009年 早稲田大学オープン教育センター「企業法務概論」ゲストスピーカー