横道世之介
2017-09-01 | 本
突然の時かけだった。
★横道世之介 (文春文庫)
著者:吉田修一
出版社: 文藝春秋
《世之介》という名前、井原西鶴の《好色一代男》にも登場。
著者の吉田さん、
ただ単にウケ狙いで、
主人公の名前に《横道世之介》とつけたわけでもないでしょう。
確信犯的な意味付けが絶対何処かにあるはずだと想いながら読み続ける。
この《世之介》、
誠にいい男、スキだらけの好人物、
ふらふらしながらも何かを一つずつ拾い上げながら《小さな物語》を作り上げる、
懐かしいほどに好人物。
偶然の人との出会いそのものが青春。
九州から東京へ、
18歳の大学生の初々しい青春生活が語られ、
なるほどなるほどと自分の思い出と重なりつつ読み進む。
このままダラダラ進行か?と飽きた頃、
突然、時代が現代にワープ。
《えっ? これは時かけ物語?》
お話は突然に、《ある種の個別な物語性》を持ち始める。
そこらへんが、作者吉田さんの技。
ラストの結末は無理やりねじ込んだ感を持ったが、
《人にはそれぞれに人生がある》
とある種の達観した気持ちにもなる。
途中、さりげなくだが、
気に入った文章があったのでここに記録する。
作者吉田さんがヒロイン与謝野翔子に言わせる言葉。
大切に育てるということは「大切なもの」を与えてやるのではなく、「大切なもの」を失った時にどうやってそれを乗り越えるか、その強さを教えてやることなのではないかと思う。