★八月の六日間
著者:北村薫
出版社: KADOKAWA/角川書店
本屋でたまたま眼に止めた本。
以前、新聞書評欄で好評だったのを思い出した。
ページをめくると、
かって若いころ登ったコースの地図が載っている。
おつ、これは!
自分の思い出をたどりつつ読んでみよう。
神々しい山のことが書いてあるかと思ったが
こそばゆいくらいのファンタジーな山の小説だった。
ちょっと危なっかしい山の小説だった。
作者の北村さんは、
実際に山に上った体験を書いているわけではない。
というか、
まったく上らずに、山のことを描いている。
作者の取材力は凄い。
読みながら自分も山の気分を味わった。
いろいろ小ネタを散りばめて飽きさせず、
ラストまで気持よく読ませてもらった。
《あずさ2号》問題のウンチクは面白かった。
男は別れた女に思いを残したりする。
だが女は、思い出を美化などしない
それはそれとして取っておこうーなんて考えないらしい。
しかし、この本の主人公は、その思い出に囚われ、
忘れるために仕事をし、
時間をリセットするために、
一人山に上る。
読みながら、
自分の登った山の道や、眺めた山の姿を思い出した。
蝶、常念、燕コースがなかなかの臨場感溢れる文章。
山へ行きたいなぁ。