映画を観た。
★グラン・トリノ
Gran Torino
監督:クリント・イーストウッド
クリント・イーストウッド、ビー・ヴァン、アーニー・ハー、クリストファー・カーリー、他
2008/アメリカ
「老いの軽やかさ」だろうか、
自分の過去と希望をさらりと描く老人の気まぐれのような作品に仕上がっている。
これはたまらない。
意味深なテーマ性はあるが、そこに深入りする事なく、イーストウッドは自らの人生訓ともいうべき「正義」を主人公ウォルトに語らせ、「善良なるアメリカ人」を描く。が、彼の描きだす人物たちは、多民族国家のアメリカでもマイノリティに属する人たちである。彼のラスト作品にふさわしい世界観だ。
友人の散髪屋さんが、イタリア人であるというのも、何かの思い入れか?そして何より、フォードのヴィンテージカー「グラン・トリノ」がイタリー語であるというのも何か意味がありそうで、ついつい、いろいろ勘ぐってしまいたくなる。
勘ぐりついでに、車が面白い。ゴロツキが乗り回す車がホンダ。何かと折り合わない息子はトヨタの販売員。みんなが狙っているのは、今や役には立たないが、「美しくも誇り高いフォード」。
猫族とイヌの対比も面白い。
教会の描き方も興味深い。いろいろ悪態をつきながらも、ラストは自ら「懺悔」におもむき、言い訳を語る。そして、ゴロツキとの戦いは、武器をもたない平和主義者。最期はイエスのように十字架となり、夢と希望を若者に託す。
まぁ、それほど「美しく気まぐれ」的に創られた作品であるということ。しかし、見事に美しい。会話のあちこち細かに挿入される、かなりブラックなユーモアが、作品のアクセントになっているから憎い。
スタッフ・ロールでワンコーラスだけイーストウッドの渋い歌声が流れる。ここで感極まる。しばらく席を立ちたくなかった。