涙だだけかな

　女の武器は涙と言われてきた。それだけだろうか。半ば閉じた口から軽やかに漏れるどこか籠もった笑い声や微かな微笑みも女の武器らしい。
　武器というのは適切ではないかもしれない。言葉以上に思いを伝える手段としておこう。
　どうして急にこんなことを書くかといえば、おばさんの患者さんの中に時々「ほほほ」と笑われる方がいるからだ。どういうわけか比較的容姿に恵まれ、ちゃんとお化粧をされた方がほとんどなのだが。うすうす気付いてはいたが、今頃になってそれが必ずしも賛意や同意を意味していないことがわかった。町医者ともあろうものが、今更のことを言っているかな。まあ正直、未だに人類の半分については理解しかねるところも多いのだ。
　微かな微笑み、こちらの方には最近ついぞお目に掛からない。